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日本であまり知られていない行動面接(Behavioral Interview)とは何か?

日本語のインターネットの世界では、シリコンバレーに拠点を置く企業や、日本に拠点を置く外資系ソフトウェア企業の面接対策として、コーディング面接に関する議論がたくさんなされています。しかし、技術面接だけで不採用を決めているのかというとそんなことはなく、多くの企業はそこからさらに踏み込んで候補者を絞り込んでいます。では、そもそも、なぜ技術的な部分以外のことを見る必要があるのでしょうか。また、その具体的な絞り込み方法とは一体どんなものなのでしょうか。

なぜ技術的以外の要素が重要なのか

そもそもなぜ技術的以外の要素を考慮する必要があるのでしょうか。簡単に言ってしまえば、組織に不協和音をもたらすような人材を採用しないようにするためです。日本で働いている方はもしかしたら、職場で怒鳴る人、同僚に対して偏見を持った目で見る人、尊敬のない発言をする人がいるかと思います。私自身はこういう経験はありませんが、アメリカでも大手金融機関だとそういったことがあるそうです。このような行為は国境関係無く、組織を歪ませ、本来可能なはずの仕事を不必要に難しくしてしまいます。もしあなたが過去にこういった事に及んでいると、それは行動面接によって簡単に明らかにされ、組織における文化的フィットや人柄を重視している会社ではまず採用を見送られるでしょう。従って、「技術面接を通過したから後はもう消化試合だ!」と考えることは大きな間違いです。そして、採用側は、候補者が仕事をする上で適切な振る舞いをすることができるか、ということを限られた時間の中で判断しなければなりません。

行動面接とは

多くのテック企業では、そのための手法として行動面接(Behavioral Interview)という手法が広く使われています。これは簡単に言えば、過去に実際に起こった事象を質問し、その時候補者がどのように行動したかを質問する方法です。定義を説明されてもあまりピンとこないかもしれませんが、具体的な質問例を見ると分かりやすいかもしれません。普通の面接でよくある質問(Situational Interview, 状況設定面接)の例を上げると、

  1. 仕事で失敗をしてしまったらどうしますか?

  2. 同僚と意見が対立した時はどうしますか?

  3. 時間内に仕事を終わらせられなかった時はどうしますか?

というように、仮の状況を設定した上で「あなたはどうですか?」という質問を受けることなります。一方、行動面接では、

  1. あなたが過去にしてしまった仕事の失敗の中で印象的なものはありますか?その時あなたはどういう行動を取りましたか?

  2. チームや会社の方針について、同僚と意見が対立したことはありますか?その時、あなたはどう行動しましたか?

  3. 予定していた時間内に仕事を終わらせられなかったことはありますか?終わらせられなかった仕事をどうしましたか?

のように、過去に実際にあった事柄について質問していきます。

形式としてはたったそれだけなのですが、これだけでそんなに大きく変わるものでしょうか。それがめちゃくちゃ変わります。まず、嘘が全くできなくなります。仮の状況設定をして質問をしたとしても、結局のところ回答者がどのように行動するかは分からないですし、そもそも体験すらしたことが無く、答えようのない質問になっている可能性もあります。しかし、過去に自身が実際に体験したことについて問われれば、回答者は事実に基づいた回答をするか、黙秘するかを迫られることになります。過去にまずい対応をしてしまったことを認識していた場合、回答に詰まることになってしまい、その時点で黄色信号となります。そして、嘘をつくようなことがあれば、その後のリファレンスチェックでそれが本当だったのかが調べられることになります。当然ですが、嘘が発覚したらまず採用はありません。

リファレンスチェックをどのくらい重要視しているかは会社によって大きく異なります。嘘をついても形式的な確認しかしない会社ではパスできてしまう可能性もあります。私が過去に働いていた Artsy では、リファレンスチェックは他の面接と同様に、非常に重要視されていました。Artsy では、リファレンスチェックの結果だけで落とすこともたくさんありました。

行動面接では、面接官が複数人になることも

行動面接の質問例

これまでに私が質問を受けたり、逆に質問をしたことのある質問をまとめます。質問には直接仕事に関わるような質問もあれば、全く関係ない質問もあります。候補者を和ませるために最初は仕事と関係ない質問から入る会社もありますが、それは会社によってそれぞれだと思います。

  1. 今の会社にどういう経緯で入社しましたか?(応募している会社ではない点に注意)

  2. 今あなたが関わっているプロジェクトについて、話せる範囲でお話し下さい。

  3. そのプロジェクトにおける、技術的なチャレンジはありますか?あなたはそれに対してどのように取り組んできましたか?話せる範囲でお話し下さい。

  4. 技術的なチャレンジをしていく中で、具体的にどうやって仕事を進めていきましたか?

  5. そのプロジェクトでは、開発チーム以外の人とどうやって仕事を進めていますか?

  6. そのプロジェクトでは、どのようにプロダクト管理やプロジェクト管理がされていますか?あなたはこれらの管理にどのように関わっていますか?

  7. そのプロジェクトでは、最近どのようなビジネスゴールを達成しましたか?あるいは未達となってしまいましたか?振り返って考えてみて、その要因はなんでしたか?

  8. そのプロジェクトにおける、技術的以外のチャレンジはありますか?あなたはそれに対してどのように取り組んできましたか?話せる範囲でお話し下さい。

  9. (コロナ禍以降頻出)過去にリモートで働いていたことはありますか?ある場合、リモートで効率的に働くために何を意識していましたか?

  10. (コロナ禍以降頻出)リモートで、かつ非同期コミュニケーションを前提とした環境で働いたことはありますか?ある場合、その状況で効率的に働くために何を意識していましたか?

  11. あなたのキャリアにおいて、今のマネージャーとどのようなゴール設定をしていますか?ゴール達成のためにどのようなことに取り組んできましたか?

  12. あなたが過去にしてしまった失敗の中で印象的なものはありますか?その時、失敗をカバーするためにどうしましたか?

  13. チームや会社の方針について、同僚と意見が対立したことはありますか?その時、あなたはどう行動しましたか?

  14. 予定していた時間内に仕事を終わらせられなかったことはありますか?その仕事をその後どうしましたか?

  15. (候補者が移民の場合)アメリカにはどのような理由で移住してきましたか?

  16. (候補者が移民の場合)異なる環境にどうやって馴染んでいきましたか?

補足ですが、移民に対する質問はパーソナルな質問になりすぎてしまう可能性もあるため、質問する側も候補者の性格や面接の流れを汲み取りながら慎重に質問していました。そのため、他の質問と比較して頻度は低いでしょう。

行動面接の対策方法

面接直前にできる有効な対策はありません。もちろん、普段から同僚と良好な関係を築いていた人にとっては、上記の質問に対する回答を英語で準備することで、一応の準備は可能です。しかし、それはあくまで普段から模範的な振る舞いをしていたという前提の上で成り立つものです。つまり、行動面接の本質は、普段から尊敬される振る舞いをしているかどうか、それを面接時に伝えられるどうか、なのです。従って、これまで適当に振る舞っていた人がいきなりいい人のフリをして行動面接を突破することなどできません。

上記の質問例を考えてみて、「自分はあまり良い回答ができていない」と感じるならば、まずは普段の行動から直してみてはどうでしょうか。


より良い仕事に就きより高い収入を手にするには、いつ何時も面接を突破しなければ始まりません。面接には技術面接だけではなく、それ以外の要素がたくさんあります。この Note では、

  1. 投資家のようにスタートアップを目利きし、

  2. 日本にいながらリモートで仕事を得て外貨を稼ぎ、

  3. 日本人にもっと儲けてもらう

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