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記事一覧
小選歌集・職業詠「砂入りくる」
一本と数える方も呼ばれる方もたった唯一のひとであり
誰彼が交わっていた神秘すら請求される証明をする
犯罪の抑止をうたわれぼくたちは未然の罪を昼食とした
膨大な数字であった性欲は可視化できない世界の話
裸になれますかと笑っていうのは間違いだろうかヒヤシンス
バニラバニラバニラ!抱きしめた時のあなたの匂い「グリンス」を知る
本籍を此処にもってきて
小選歌集「やさしく起こす」
水のみを求めし肉の奥に在る愛だけが骨 よく曲がってる
この世の角部屋に住まいて海は魚眼の青と信じ続ける
生活の窓辺で星を洗う手に特別なことは何も起こらず
不可もなく部屋にからだはひとつきり秋雨は夜に彷徨いて降る
アルバムにタイトルがないわたしには名前があって夜明けが来ます
台風一過ふるえてるただひとをひとたらしめているかげぼうし
まっすぐ見てください大切なことだけが
小選歌集「ただならぬ夜」
福祉的失恋をした夕暮れの蛍光灯はいつもうるさい
テトリスが形をそろえ消えていく愛しているのでいつかそうなる
ひとりでにカーソルだけが震えてる遠くで山田が呼ばれてる
「ほんとうに人間ですか」Googleが問うそういえばわからなくなる
可愛いを「愛しげ」というふるさとに暴力ごとき雷が鳴る
義務として想い出があり空っぽのiPhone5しんと冷え
小選歌集「真夜中はスーパーマーケット」
のぞみ十五号車よりいつか必ず滅亡す世界は晴れて
新世界をのぼりゆき見下ろせる小さなものほど大切になる
これからは燃えないものです子供らは希望の朝から選り分ける
トランスがジェニックされた動物がみる夢みたい俺のかたちは
今きみを傷付けている獣なり嘘の一つもつきたくはない
衛星を星と見紛う会いたかったと言いたいままの人がいて
水のみを求めし肉の奥に在る愛だけが骨 よく曲がつてる
君はまだ
小選歌集「世界は眠る」
そのむかしむかしあるところでこの星を終わりにしますさりげなく
自閉症の子の描いた絵をいつまで抱えるような海
からだ丸めて乞う愛が‘の’のゆるやかなカーブをすべりおちてく
青春に被爆している僕たちは「永遠」の名の飾りになった
あなたを見ているわたしを見ているあなたを見ている星が鳴いてた
かみさまはいるおれたちのだいすきなどうぶつのはなしをしてくれる
裸眼でも見えるあなたの確かさが私の肉を
小選歌集「空港の朝」
十年で二度しか会わぬ友人の安否を知れる空港の朝
コンビニで購入せし本にアメリカンドッグの写真挟まる
亡くなりし会うことのない人々の名前が座る喫茶ガボール
漏刻よ月に刺されてそれからか暗き森を飼っているのは
人々を愛せなかった罰として氷を落とせ冬のカルピス
原発の文字が傾く新聞に包まれていたキャベツよ夏よ
ガスストーブの薄い火そのままにわたしはわたしの中にて眠る
今日の日に今日が終