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【解説】緊迫の中東情勢。動くイラン、反発する欧米。日本の中東外交は中和剤になるか?


イランとは?

イランは我が国にとって無視できない存在である一方、
外交には礼節を持って接するべき国です。

イスラエルの戦時内閣は、イランに対する次の一手について、おなじみの言い方で説明した。「我々が選ぶ時期に、我々が選ぶ方法」で反応するというものだった。

イスラム組織ハマスによる昨年10月7日のイスラエル奇襲を受けて、組閣された戦時内閣に参加した野党代表のベニー・ガンツ氏は、イスラエルに協力する西側諸国とイスラエルがいかに一致団結してまとまっているかを強調した。

「イスラエル対イランとはすなわち、世界対イランだ。それが今の結果だ。この戦略的成果を我々はてこにして、イスラエルの安全保障のために活用しなくてはならない」

出典:BBC 2024/4/15 イスラエルとイラン、全面戦争をアメリカや西側は防げるのか=BBC国際編集長

もちろんG7との関係もあり、
イランの行為は全てを容認はできないのですが、
しかし日本が推進する中東外交において、
イランを理解することは不可欠でしょう。

【イランの基本情報】
人口:8,920万人(2023年、世界人口白書2023)
面積:1,648,195平方キロメートル
首都:テヘラン
政治指導者
【最高指導者】
セイエド・アリー・ハメネイ師(1989年6月)
【大統領】
セイエド・エブラヒーム・ライシ
【外務大臣】
ホセイン・アミール・アブドラヒアン

人口8900万円であり、天然ガスなどの資源が豊富であるイランは
多くのポテンシャルを秘めている一方で、政治的には反米路線は
現時点で変わりません。

イラン最高指導者とは?

さて私たちに馴染みのない最高指導者とはなんでしょうか?

Wikipediaによると以下の権限があります。

  • 監督者評議会のイスラーム法学者6名の選出権。

  • 最高司法権長の任命権。

  • 国軍の最高司令官としての権限。

  • 革命防衛隊の最高司令官としての権限。

  • 大統領の解任権

  • 国営テレビ・ラジオ局総裁の任免権。

  • イスラム革命防衛隊総司令官の任免権。

  • 宣戦布告の権限。

いわゆるトップの人事と軍のトップを握るのが
ハメネイ師なのです。

安倍晋三首相によるイラン訪問の最大の見せ場は、同国最高指導者、アリ・ハメネイ師(80)との会談にあった。高位イスラム法学者による統治体制をとるイランにあって、ハメネイ師は国政のあらゆる重大問題で最終決定権を持つからだ。

 会談の焦点が、対イラン制裁圧力を強めるトランプ米政権との対話の可能性を探り、中東域内で高まる緊張の緩和につなげることにあったのは、言うまでもない。その点で、ハメネイ師の発言は、かなり興味深いものだった。

出典:2019/6/22 産経新聞 ハメネイ師、安倍首相への「伝言なき」メッセージ

しかしイランの最高指導者との接触は各国にとっては
表舞台に立たないことから困難であり、
外相や大統領との接点でしかできないのです。

そうなると、本当に外交安保上、関係を詰めていく国々との交渉は
まさしく困難といえます。

中国でも首相より習近平主席との会談の方が
意思決定の権限の量が全然違うことから、
習近平主席との接触が外交上求められます

このように権限を持つ要人との接触は
中東外交では欠かせない存在なのです。

核保有と中露外交

イランにとって自国の防衛であり、
G7にとっては難色が示されるのは
間違いなく核ミサイルです。

[ドバイ 18日 ロイター] - イラン革命防衛隊の核安全保障担当幹部は18日、イスラエルの脅威を受け、核を巡る原則を見直す可能性があると述べた。タスニム通信が伝えた。
これまでイランが平和目的と説明してきた核プログラムの行方が懸念される。
イスラエルは、13日のイランによるミサイルと無人機の攻撃に報復する構えを見せている。

出典 ロイター 2024/4/19 イラン司令官、核の原則見直し示唆 イスラエル反撃を警戒

近年、イランはトランプ政権からバイデン政権に移り、
反米路線を強めています。

特にイスラエル・ガザ地区の問題にて、
背後にあると言われるイランの存在は欠かせないでしょう。

さらにイスラエルがイランの大使館を攻撃したことを受け、
イラン側はイスラエルに報復を開始します。

さらにイスラエル側が今度は報復するなど、
中東は刻一刻と悪化しています。

[ワシントン 18日 ロイター] - 米国は18日、イランによるイスラエルへの攻撃を受け、イランの無人機製造を対象とする新たな制裁を発表した。バイデン米大統領は主要7カ国(G7)首脳が協力してイランに対する経済的圧力を強めることにコミットしていると述べた。

バイデン氏は声明で「今回の制裁はイランの精鋭部隊『イスラム革命防衛隊(IRGC)』や国防省、イラン政府のミサイル・無人機プログラムに関係する指導者や団体を対象にしている」と指摘。「われわれの同盟国およびパートナーは、イランの不安定化を招く軍事プログラムを制限する追加の制裁措置をすでに発動したか、発動する予定だ」とした。

出典:ロイター 2024/4/19 米、新たな対イラン制裁発表 イスラエルへの攻撃受け

アメリカとイランの関係が悪化する中、
イランは中国やロシア、北朝鮮との外交を推進しています。

まず中国は昨年、イランとサウジアラビアの国交回復に尽力し、
見事に関係改善の成果を手に入れました。

【北京=共同】中国の王毅外相は15日、サウジアラビア、イランの高官との3者会談を北京で行った。中国外務省が発表した。サウジとイランの国交正常化を中国が仲介した経緯もあり、王氏は「両国の関係改善が進むことを支持する」と強調。「中東の発展を支援してきた」とも述べ、影響力をアピールした。

出典:日本経済新聞 2023/12/16 中国とサウジ・イラン会談 王氏「関係改善を支持」

これは大きな衝撃的なニュースでした。

サウジアラビアでイスラム教シーア派の指導者が処刑されたことがきっかけで、
エスカレートし、2016年に国交断絶された両国が
再び正常化したことは、衝撃的なニュースです。

しかも日本やアメリカでなく、中国が間に入ることで、
今日の中東情勢にも一定の変化があったと言えます。

その後、イラン側がイスラエルに報復するのに対し、
中国に伝えたとみられます。

【北京=田島如生】中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相は15日、イランのアブドラヒアン外相と電話で協議した。アブドラヒアン氏はイスラエルへの直接攻撃に関し「イランには自制する意志があり、情勢をこれ以上緊迫させるつもりはない」と述べた。

出典:日本経済新聞 2024/4/16 イラン外相、対イスラエル攻撃「自制の意志」 中国に

さらにロシアとの国防相会談をはじめ、
北朝鮮との外交もまた深めています。

このような状況下にあって、中東は火薬庫と言われる場所のため、
いつ爆発されるか分かりません。

しかし同時にイランを批判するG7諸国の中で、
唯一のアジアであり中東との関係が良好な岸田政権が
行うのは、制裁と同じ中和剤の役割でしょう。

軍拡を抑制するために中東情勢の学びを深め、
リテラシーを少しずつ高めるように
私たちは心がけていくべきだ。

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