受領書

同人誌を、国立国会図書館に「納本」してみた話

はじめに

 皆さん「納本」という言葉をご存じでしょうか。
 くわしくは、下に載せたアドレスを通じて読んでみてください。

 簡単にいうと「法律に則って、頒布を目的として一定の数以上作成された資料(=出版物)」を国立国会図書館に納める義務、を意味する言葉です。
 「納本」という字面から、対象は書籍だけかな、と思われがちですが、実際はCD・DVD・ブルーレイ・レコード・楽譜・地図などといった幅広い媒体が当てはまります。

 納本を行う理由は「文化的資産として広い範囲で利用されるようにこと、そして後世に長きにわたって残す」ためだと定められています。

 納本の対象となる主な出版物は、販売・流通されているものです。ざっくり定義をすると「ISBNやバーコードがついているもの」になります。

 それなら自分には関係ない、と思われる方も多いでしょう。しかし納本制度の概要によれば「日本国内で頒布を目的として発行された出版物は、原則として、すべて納本の対象」とあります。

 つまり、先に載せた「法律に則って、頒布を目的として一定の数以上作成された資料(=出版物)」の条件に当てはまれば、営利目的の有無を問わずに、納本の対象になります。

 端的にいうと、法律上では、一定部数以上刷って不特定多数に配布した同人誌も「納本」の義務があります。

必ず「納本」しなくてはならないの?

 びっくりされたでしょうか?
 「納本していないと、罰則を受けることになるの!?」と不安になる方もいるかもしれません。
 それについては、過剰に構えなくても大丈夫です。

 なぜなら、まず「納本」対象になるものには「法律に則って、頒布を目的として一定の数以上作成された資料(=出版物)」という条件があるからです。これは先に載せました。
 また条件を満たしていても、長期保存に適さない構造のものや、一般公開に支障があるものは対象外になります。
 これに当てはまる例を考えると、以下のようになるでしょうか。

・長期保存に適さない構造のもの
 コピー本
・一般公開に支障があるもの
 二次創作の本(著作権等でグレーゾーンの存在のため)
 過度な暴力・性表現がある本

 それに、法律上では義務があり罰則もありますが、条件を満たしていても納本していない人がほとんどです。また、それを怠ったから罰せられた、という話も、少なくとも私が調べた限りではありませんでした。
 もしこの制度が厳格に運用されていたならば、大きな議論や社会現象があらわれているでしょう。しかし現実はそうではありません。

 これらのことから、同人誌等、個人の趣味の範囲で作成・配布したものに関しては、無理して納本する必要はないといえます。
 逆に「自分が一生懸命作った本を、少しでも誰かに読んでもらいたい」・「図書館に自分が執筆した本を保管してもらうのが夢」という人には、出版物の条件さえ満たしていれば、面白い制度だと思います。

個人が納本をする際のポイント

 個人が納本をするにあたって出てくる疑問点は、上記のリンク先にだいたい掲載されています。
 また「納本 同人誌」といったキーワードで検索すれば、過去に同人誌を納本した人の体験談などが出てきますので、それも大いに参考になります。(私も「せっかく作った同人誌、いろいろな形で手に取ってもらいたい」と思い、色々調べた結果、こうして納本を考えるに至りました)

 しかし私の場合、これらのアクションだけで疑問が解決しなかったので、直接メールでお問い合わせをしました。
 以下にその内容を掲載します。

【メールでのお問い合わせ】
(前略)
 当館では有償・無償に関わらず広く頒布することを目的に相当部数作成された出版物を収集の対象としております。
 今回お申し出の資料がこの基準に当てはまるのであれば、納本をお受けしております。
 ご照会の件につきまして、以下のとおり、お答えいたします。
1:発行者が本人であれば、表紙などに掲載されている名前はペンネームで良いのか。
 はい。ペンネームで結構です。
 ただし、ペンネームの方が発行者様ご本人である旨を記載したメモを同封してくださるようお願いいたします。
2:納入出版物代償金を希望しない場合でも、本人が発行した本である場合は「納本」として納めるべきなのか。それとも「寄贈」になるのか。
 発行者様からご送付いただく場合は「納本」となります。
3:同じ書籍を3部以上納めても良いのか(デジタルデータ化資料用に活用するなどを想定して)
 納本義務がございますのは1部です。
 通常の図書・雑誌に該当するものであれば、1部目は東京本館、ご厚意で2部目を頂戴した時には関西館に配置させていただいております。
 2部目をお送りいただける場合にも、受入は全て東京本館にて行っておりますので、東京本館にまとめてお送りください。
 3部目以降はお送りいただく必要はございません。
4:納本しようとしている本の概要を事前に書類で送るべきか。
 事前にお知らせいただく必要はございません。
5:本文に誤字があった場合、修正ラベルで訂正しても良いのか。あるいはしない方が良いのか。
 修正ラベルで訂正していただいても結構です。
 また、ご納本後の修正は正誤表等をお送りいただければ、対応いたします。その際は、資料が特定できるようタイトルや出版者名等の記載をお願いいたします。
6:『無償でご寄贈いただいた場合には、ご要望に応じ受領書を送付いたします。』という文があったが、受領書にはどのような内容が記載されているのか。
 ご納本後の資料の扱いについて、またご納本いただいた資料のタイトルや
  冊数(3タイトル以上ある場合は他〇冊とさせていただきます)を記載した簡単な受領書です。
 なお、資料の状態や形態により長期の保存に適さないと判断される場合や、個人情報を含むなど公開に差し障りのある内容を含む場合、送付いただいた資料を当館の蔵書とできない場合もございます。
 そのため、送付いただいた資料の取り扱いにつきましては、当館に一任していただきますようお願いしております。
 当館の蔵書とできない際に資料の返却を希望される場合は、送付の際にその旨を記載したメモを同封してください。
 ご不明な点がございましたら、お問い合わせください。
 どうぞよろしくお願いいたします。

 長くなりました……。丁寧にお答えくださった担当者の方には、本当に頭が上がりません。

 これで、納本に関しての疑問点は全て解決しました。
 後は、本が傷つかないように梱包して、発送するだけです。

 意外と簡単にできますね。(メモを忘れなければ)

 という訳で、さっそく郵送で納本してみようと思います。

 後日、納本の結果を追記しますので、それも参考にしていただければ幸いです。それでは、いったんここまで。

結果

 本は無事に届いたのか、そして納本されることになったのか?
 その結果は、以下の写真をご覧ください。

画像1

 納本の結果は……、受領されました!
 受領書とはなんぞや、と思いつつ、受け取るにした結果、これが郵送されました。納本の過程や、検索できるようになるまでどれぐらい時間がかかるかが書かれていますので、はじめて納本をする方はぜひ、受領書の受け取り希望を書きましょう。
 

 今回納本した同人誌は、実は二つありました。


 ひとつ目は『SHORT SHORT SHORT vol.1』という、小説投稿サイト『エブリスタ』で、お題に沿って執筆した短編や詩を再録した本になります。
 この本は現在、BASEで作成した自分のショップ『よろず編集』でお求めができます。
 もしご興味をもたれましたら、ぜひアクセスしてご注文してください。
 vol.2、vol.3のように、続々と新しい本を発行しています。
 気に入った作品が掲載されている本がありましたら、一緒にお求めいただけたら幸いです。


 もう一つは『クロウカードをもっと楽しむ本』といい、自分のために情報を集めて作った、初めての同人誌(完全な自己満足だったのでイベント配布はしてません。ネットで試しに配布を試みたことがありましたが、結果は散々たるものでした)になります。noteに過去、記事を載せたことがあったので、ご覧になった方は、あの本ね、と思い出すかもしれません。
 せっかく納本するなら、この本も、と思い立ち、この度一緒に郵送しました。

 オンラインで蔵書検索できるようになるまで、約1か月かかるとのことなので、待ち遠しいです。
 追記:無事にオンラインで蔵書検索ができるようになりました。

終わりに

 「有名になって、没後も形になって残される作品をつくる」「図書館に自分の本が保管されるのが夢」という方は、少なからずいるのではないでしょうか。しかし、何かの拍子で評価されて、出版されて、綺麗に保管される、というのはなかなか難しいものです。
 でも、納本制度をうまく活用すれば、夢で終わってしまうかもしれない自分の願いをかなえることができると思います。この記事を読んだ人の中に、私も試しにやってみよう、と思い立った方がいらしたら、光栄です。


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