見出し画像

大傑作「パチンコ」

ミン・ジン・リー・さん作「パチンコ」を読了。1910年、韓国併合後の韓国影島。主人公スンジャが日本へ渡り、やがて舞台は大阪へ移ります。スンジャを中心に4世代に続く韓国人たちの大河ドラマで、物語も去ることながら、在日韓国人の方々のルーツ、日本で起こっている差別や問題丸ごとわかる大傑作でした。

著者のミン・ジン・リーさんは幼少の頃に韓国からアメリカへ渡ったそうで、過去に4年日本に住んでいたことがあります。韓国のルーツがありながら、在日韓国人のことを大学生の時まで知らなかったそうで、日本に滞在していた教会の牧師さんの話を大学生の時に聞いて、初めてそのことを知ったそうです。それからリサーチを重ねて構想30年かかって生まれたのが、大傑作パチンコでした。

したがって登場人物に降りかかる問題も実際在日の方々が経験済み、または今も直面していることが書かれています。スンジャ、夫、義理兄夫婦が経験する凄まじい貧困、言語の問題、日本での差別や不公平な労働条件、スンジャの息子や孫が体験するいじめ、国籍やアイデンティティーの問題など胸が痛むことばかり。

しかしこの登場人物たちは、乗り越えていきます。ひたむきさ、真面目さ、賢さを持って、様々な理不尽なことを許し乗り越えていきます。それぞれの物語が一つずつ素晴らしく、涙なしでは読めませんでした。

歴史的な事柄も非常にわかり易し

1910年に韓国併合してからは多くの韓国人が日本へやってきました。この時多くは今の韓国出身者だったそうです。しかし、1950年から1953年まで続いた朝鮮戦争の後、韓国は北朝鮮と大韓民国へ分かれます。北朝鮮は労働力を欲し、共産主義のもと差別や貧困のない国地上の楽園と謳い、在日韓国人の帰国事業を斡旋し、日本も協力。しかしこれは大嘘なのは周知の事実。「パチンコ」の登場人物たちも色々な別れをここで経験します。

多くの在日韓国人の方は、その後韓国の地を踏むことな人もいて、2世3世となると、日本で生まれ育っていて韓国に行ったことすらない人も多い。また数年に一度は指紋を取ったり、日本に生まれながら韓国籍。どこへ行ってもよそ者という感覚。これも上手にミンさんは書いているんですよね。

また、韓国の方がパチンコビジネスに関わることになる描写もお見事。

物語自体が本当にパワフルで強烈。登場人物全員が経験する苦しみ、理不尽なことを思いやり、強さでどんどん克服する過程が素晴らしかった。許す大事さも教えられて気がします。

日本人はもちろん、韓国にルーツがある人は絶対読んでほしい1冊です。

図書館へ返す瞬間!名残惜しい!


この記事が参加している募集

読書感想文

みなさまからのサポートは、スロベニアや周辺諸国の取材費用に当てさせていただきます。