見出し画像

誰かの思いをしたためて。読書記録 椿ノ恋文

読書記録 椿ノ恋文

小川糸さん著



先日、ふと立ち寄った本屋さんで買った『椿の恋文』小川糸さんの、『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』の続編。

ページをめくるのを楽しみにしていたら、、、。

その直後、悪い流行り病に取り憑かれてしまいました。


でも、外出できないので、ゆっくり読書できました。
再読し再々読の途中です。




◎あらすじ
主人公の鳩子は、祖母から継いだツバキ文具店を鎌倉で営んでいた。

そして鳩子は10年前にミツローさんと、一人娘のQPちゃん5歳と家族になり、6年前に妊娠、出産。

年子の小梅と蓮太郎も今年は1年生になる。

そんな時に、お休みしていた代書屋を再開する手紙をお得意さま達に出すところから、物語は始まる。

◎気になった箇所
✳︎トキグスリ、時間がくすり。
 マダムカルピスのことば。
「何が起きても、まずはそれに逆らわずこの手で受け取って、そしてまたそっと水に流して。
ただただ時間がたつのを待つだけね。

夏ツバキ




◎感想
✳︎今回のテーマの一つは思春期を迎えた義理の娘、中3のQPちゃんとの関係だ。

受験生だからか、
すぐに部屋に入ってしまうし、会話は必要最低限。

鳩子は1年前まで妹たちと同じように仲良くしていたことを思い、QPちゃんとの関係性に思い悩む。

物語後半には、鳩子とQPちゃんの2人だけで日常を離れてゆっくりする時間が取れて、その中で思春期真っ只中のQPちゃんとの小さな出来事が明かされる。


思春期とは周囲の何気ない言動、特に自分についての周りから何気ない一言に、こちらが思う以上に傷ついてしまうこともあるらしい。

私も高校生の息子にかけた何気ない一言に、バタン!とドアを閉めて部屋を出ていくという、びっくりするような反応が返ってきたことが、あった。

思いがけないところで思春期の息子の感情を逆撫でしてしまったらしい。

今から思えば笑い話だけれど。


それもトキグスリが効いたのだろうか。

✳︎✳︎
もう一つのテーマは、先代と交流のあった男性との関係が明らかにされてくる。

先代も、孫がいて娘がいるのだから、恋愛経験はあったのだろうけど、詳細はわからなかった。

また、ここに来て先代の出したらしい手紙を携えてある人が訪ねてくる。

その手紙から先代が女性として人を愛し愛された日々があったことが熱く綴られていた。

次は伊豆大島へ手紙供養に行くことになる。

鳩子は先代とは思春期にケンカをして家を出てから、病気見舞いにも行かず葬式すら帰らず、葛藤のまま別れてしまっていた。

この大島での手紙供養の中で、祖母である先代の熱い思いに触れ、その生き様を思い返すことで、鳩子の中の先代との葛藤が少し変化したのではないだろうか。

妻子ある人の子を産み、育てていくのは、経済的にも精神的にも大変なことがあっただろう。

鳩子は自分も子を産み育てていく中で亡き祖母の思いに心を寄せることができるようになったのかもしれない。

そしてその祖母がいたから今の自分がある、という現実に気づいたかもしれない。

✳︎✳︎✳︎
今回は代書屋の仕事に復帰ということで、たくさんの手書きの手紙が依頼主さんのエピソードと共に本文に織り込まれている。

闘病中の母から嫁ぐ娘へ、
親友からお料理上手のお姑さんへ、
施設に入った妻から、高齢ドライバーの夫へ、など。

日常的に話題になるちょっと気になるけど、面と向かっていうには難しかなと、思ってしまいそうな気持ちを相手のことを思いやりながら、丁寧にことばを紡いで手紙にしたためる。

代書屋の真骨頂が、散りばめられたお話になっています。

そうそしてこれから、旅を楽しむには良い季節、美味しいものを探しに鎌倉へ、大島へ行ってみたくなりました。


我が家はさくらんぼの季節




◎今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?