見出し画像

サーモンがお好き?

みなさんが海外の日本食料理店で寿司や刺身を食べるとしたら、どんな魚を想像したり、期待したりしますか?

どんな魚が出てくるのか、想像もできないかな?それとも、日本とおんなじよう魚を期待するかな?

日本のニュースなどで、回転寿司で最近の一番人気の寿司のネタは、サーモンだというのを何回か読んだことがある。

でも、日本は季節によって美味しい魚も変わるし、時期によって好みも変わるのかもしれない。

ポルトガルは大西洋沿いの国だから、魚にはとても恵まれていて、種類はそれこそ年中ほぼ変わらないけど、美味しい鮮魚やシーフードがたくさんある。

だから、店でも刺身盛りは、サーモンとマグロの他には、白身が3種類ほどと、青魚を一種類入れていた。寿司盛りは、マグロの中巻きと、サーモン、マグロ、その日の白身が2種類に、鯵などの青魚が1種類。

コロナ禍でテイクアウトのみの時の写真。上が寿司盛り、左下がサーモンの漬け丼

寿司盛りはとても人気で、ランチの時間も夜も本当によくオーダーが入る。サーブする時に、必ずお客さんに、魚の種類を説明することは徹底していた。やっぱり天然を魚を仕入れることはとてもコストがかかるし、何を食べているかわかって食べて欲しかったから。

でも、結構な頻度で「サーモンだけでください」と言われることがあった。ポルトガル人は、流石海のある国の人たちで魚に慣れているというか、ある程度種類なんかも知っている人が多いから、こういった注文は大抵観光できている欧米人だった。

「え、全部サーモンで?!」て最初はびっくりしていた。だって、サーモンの巻物が一本と、サーモンの握りが5巻の盛り合わせって、なんだかちょっと胸焼けしそう。。せっかく美味しい魚が他にもあるのに、なんで?と思っていた。

それから、サーモンの漬け丼は、8年間ずっとベストセラー。漬けダレにサーモンの刺身を漬けて、丼にシャリを入れ、そこに漬かったサーモンを乗せ、アボガドとイクラ、貝割れを乗せて出す。これしか頼まない人も結構いた。

もしかして、マグロの刺身や漬け丼も、値段がサーモンと同じくらいだったら、同じくらいの人気度だったかもしれない。実際、お金持ちのお客さんで、うちに来たら、トロの刺身や寿司しか食べない人もいた。

このトロの握りは、どんなに値段が高くなっても、安定してよくオーダーが入った。

要するに、やっぱりサーモンやトロみたいに、脂が乗っている魚がみんな好きなんだなぁ。もしかして、自分の国にはあまり白身魚を食べる文化がなくて、よくわからないから食べたくないのかもしれないし、サーモンなどの脂っこい魚をメインに普段から食べているから、淡白な白身魚は味がないと思っているのかもしれない。

4、5名の観光客がグループで食事をしに来て、サーモンだけの刺身盛りと、サーモンだけの寿司盛りを作ってくれという人たちもたまにいて、作りながら、本当にもったいないなぁ、これだったらうちで食べなくてもいいんじゃないか、、?と、オレンジ色に染まったテーブルを見ながら厨房でよく話していたものだ。

だから、たまーに「白身だけで5巻盛りください」と欧米のお客さんに言われると、スタッフの間でざわついた。料理長も、他のスタッフも、そのお客さんの顔を覗きに行く。あの人は、白身の味がわかるんだ!となって、心して準備したりして。

ちなみに、その白身だけで5巻盛りを頼んだ、ドイツ語圏の男性のお客さんは、他の日本食店ではこんな白身の寿司盛りはなかなか食べられない、ととても気に入ってくれて、しょっちゅう子供を連れてきてくれる、常連さんになった。なんでもリスボンに住んでいるらしい。それくらい、珍しいのだ。確かに、私が今まで行ったこちらの寿司屋さんで、サーモンとマグロしか置いていない店は、本当にたくさんあった。

それとは反対に、たまにサーモンは絶対に食べないお客さんもいる。実は私もたまにしか食べないようにしていた。これは、ポルトガルで手に入るサーモンは、ほとんどがノルウェーの養殖のサーモンで、天然などは、冷凍でたまにパサパサなのを見かけるくらいだから。急にそういうお客さんが出てきたのは、どうやらテレビで、養殖の抗生物質を食べて育っているサーモンは、いかに健康に良くないか、というドキュメンタリー番組がやっていたかららしい。私の場合は、その番組は見ていないけど、こちらで食べる養殖のサーモンやハマチの独特な味が、どうしてもあまり好きになれないから。これは、市場や巷の食堂で安く売っている、脂が乗っている鯛やスズキも同じ味がすることに気がついた。

うちの常連さんで、サーモンを食べない主義のミゲールという、30歳くらいのポルトガル人の男性がいたのだけど、彼は店に電話をかけて予約をする際、「あ、サーモンを食べないミゲールだけど」と自己紹介してくれる(笑)。なんでかというと、ポルトガルにはミゲールという名前の人がたくさんいるから、どちらのミゲールさんか聞かないとわからないのだ。そんな彼だけど、お気に入りのボーイフレンドと初デートでうちを使う時だけは、いつも面倒臭い人と思われたくないからか、サーモン抜きにせずに、一緒に食べているところが可愛らしい。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?