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「スペインのハイウェイ」 場末感漂う国境のインター飯


たこ焼きの屋台をポルトのアジアンマーケットで出店した後、リスボンには帰らず、そのままスペインのマドリッドに車を走らせた。

ポルトガルはヨーロッパの最西端で他の国とは地続きなので、旅行もしやすいのだけど、ポルトガルを出たのはコロナが始まって以来で、3年ぶりくらい。久しぶりの旅行、嬉しい!

店をやっていた頃は、休みといえば、大体日本に帰っていたので、結局社員旅行でたまーに国境を越えてスペインにちょこっとだけ行くのがせいぜいの海外旅行だった。

それでも、お隣同士なのに、ちょっと国境を越えただけで、色々と、全然違う。言葉も標識も急に変わるし、食べ物も変わる。景色だって違うように見えてくる。

国境を越えた途端、見事に人も標識もスペイン語になったりポルトガル語になったり、何度経験しても面白いな。

ポルトガルとスペインの国境付近のインターは、独特の雰囲気があるなぁといつも感じる。他の国の国境のインターをあまり知らないから、もしかして他の国も似た感じなのかもしれない。

ポルトガルのインターは、大体どこかの大きな会社が経営していそうな、無機質なセルフサービスのカフェやレストランのようなものがとても多いけど、スペインに入った瞬間、そういうインターは消える。休憩やガソリン給油のためにどこかに入るには、大体ちょっとした脇にそれる小さな道があって、そこに入ると、ポツンと宿とレストランやカフェが一緒になっている、寂れた雰囲気の建物が現れて、その横にガソリンスタンドがあったりする。

私はその寂れた、場末感漂うスペインのインターの雰囲気が、まるで映画の1シーンにいるみたいで結構好きだ。入ると、常連客のような地元客らしい人たちがカウンターで飲んでいて、全員一斉にこちらを振り向くこともある。一応国境からそう離れていない、高速のインターだけど、すごい田舎に来てしまった感覚に陥る。どうやって注文するのかシステムもよくわからないから、とりあえずカウンターで働いているおじさんに、もうすっかり錆びついてしまった私の拙いスペイン語で「ご飯はどうやって注文したらいいのか」と聞く。カウンターに並んでいる、もうほとんど無くなっている干からびた料理を指差すだけの人もいれば、メニューを見せてくれる人もいる。

「ここに残っているものと、後はボカディージョ(フランスパンで作るスペインのサンドイッチ)だけだよ」

と言われて、少しだけ残っているショーケースの料理をいくつか注文したら、大胆に白い皿にスプーンでかき寄せて渡してくれ、子供用みたいな小さなフォークを渡された。それを自分でテーブル席に持っていって突っつく。

「これはまだいけるな。でもパンは干からびてるね」
「これはちょっとひどい味だな」

などと夫と話しながらつつく。でも、その反対に、稀に、ものすごく美味しいスペインオムレツなんかにありつける場合もある!

ちなみに、マドリッドからリスボンに戻る道中で頼んで食べた食事は、今までのインターで一番酷かったかもしれない。

しかも、すごい量を盛られてしまった。。

ポテトサラダはマヨネーズとポテトが全然混ざっていなくて、ポテトはなんだか粉っぽいし、全体に味もない。他の料理もただ缶詰をお皿に乗せただけみたいな感じで、衝撃的な味だった。

数年前はもうちょっと素敵な料理に巡り会えたのだけど、今回は運がなかったらしい。

でも、マドリッドについたら現地に住んでいる友人たちにつれて行ってもらって美味しい本場のスペイン飯が食べれるし、すぐ隣のポルトガルに帰ったら家でおにぎりなんかを作って胃を落ち着けることができるから、こういう国境飯は、それはそれで運試しみたいな感じで良いのだ。

何より、この滅多に出会わない、独特の場末観を束の間味わえることが、意外と私のちょっとした旅行の味になっているような気がする。

この牛肉と焼きピーマンのボカディージョは美味しかった。
辺りを見回すと、ほとんどの客がコーラを飲んでいるので、私たちも。
愛犬みかんも一緒に。レストランのすぐ隣には、こんな誰も歩いていない町への入口が。


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