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4月の集まり


4月は特別な月だ。なぜなら必ず懐かしい人たちと会えるからだ。

大学3年生の4月、私は当時サークルの幹事長で新歓コンパに忙しかった。毎晩遅くまで飲みながら、無意な生活を送っていた。

そんな時、突然新社会人になったばかりの先輩の訃報が入った。
少し前まで、ラウンジでおしゃべりしたり、追いコンで朝まで飲んだりしていたのに。
桜が散ったばかりの東京と、毎晩の飲み会、肌寒い夜、先輩の急な死。
サークル全体に目に見えないけれど確実にそこにある、なんなく、憂鬱で悲しく、重い空気は今でも覚えている。

改めてその先輩について思うと、実はあまりにも知らないことが多かったことに気がついた。生きていたらそんなことにすら気づかないかもしれない。そんな私が悲しんでいいんだろうか。という気持ちになった。

でも、たくさんのかわいい後輩たちが入り、春が終わって、私たちは徐々にいつも通りの生活に戻っていった。

その翌年から、先輩のお墓参りとその後の飲み会は4月の恒例行事になった。
当時先輩が好きだったマルボロメンソール、ハイネケン、プロ野球チップスをお墓に供えて、その前でみんなでワンカンする。
そしてまた改めての飲み会に向かう。

それを繰り返してもう20年以上の月日がたった。プロ野球チップスは今はもう供えていない。コロナの時はみんなで行けなかったので、夫と2人で同じようにお墓参りをした。
誰かの供えたお花があり、きっと〇〇さん来たのかな、とか話したり。

私たち夫婦はほぼ皆勤賞で、毎年来てる。
先輩の何を知っているかはわからないけれど、4月の4週目の土曜日はお墓参りなのだ。
そんな中同じように皆勤賞の女性の先輩がいる。
亡くなった先輩とは仲良しだった。
ずっと繋がってるソウルメイトみたいな関係なのかなと勝手に思っている。

今年もお墓参りだった。
お墓の前で恒例のワンカンをしている時に、その女性の先輩の肩に小さなミツバチが止まった。何もせずにじっとしてる。誰かがそっとティッシュで祓ったらお墓の前にじっと止まった。
そして静かに飛んでいった。

どこから来て、どこにいったの?

あいつじゃない?と誰かが言った。
肩にハチが止まった女性の先輩はえっ。と悲しそうにでも嬉しそうにしていた。

会いたいだろうな。たくさん話したいだろうな、2人とも。ハチでもいいから出てきてくれてありがとう。って感じだろうな。
なんとも言えない、生きてる人たちの4月なのだ。そんな懐かしい人たちと会える4月をプレゼントしてくれた先輩に感謝しなくては。

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