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【北欧図書館の仕掛け2】本当に必要な情報を確実に届ける方法

北欧諸国には難民が多数居住しているため、公共図書館では住民の民族的多様性を反映した多言語資料の収集と提供を積極的に行っている。ヴェスタブロー地区は、コペンハーゲン市の中央駅から南に広がる地区である。とりわけ多くのマイノリティ居住区が集中しているヴェスタブロー図書館(Vesterbro Bibliotek)には2000年代の終わり頃、ウルドゥ語(パキスタンの国語、インドの公用語の一つ)、トルコ語、アラビア語、ペルシャ語、ベトナム語、パンジャーブ語(パキスタンとインドで話される言語)、アルバニア語等の資料があった。

デンマーク・ヴェスタブロー図書館

クッキングブックの隣に置かれていたのは、デンマーク難民援助協議会のボランティアによる無料翻訳サービスのパンフレット。移住先に来て間もない移民・難民は現地の言葉を理解できず話せない状況に置かれている。そのため公的な手続きなどが困難をきわめることになる。そんなときのために、難民援助協議会では無料でボランティア通訳の手配をしていた。料理本の脇にそっと置かれていたのは、この無料通訳サービスを報知するためのパンフレットだった。

図書館には必ずパンフレットコーナーがあるから、そこに置いておくのが図書館の通常の方法だが、移民・難民はパンフレットコーナーに気を留める可能性はかなり低い。一方、移住者の母語資料コレクションの中に情報を組み込んでしまえば、情報が届く確率は高くなる。日常生活に欠かせない情報を確実に伝えるために司書の考えた最適解は、パンフレットを書架に潜り込ませることだった。


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