見出し画像

「アイデアの作り方」に見るアナログの効用

地元の図書館から、何カ月も前に購読申し込みをしていた本の順番が来たという連絡がありました。タイトルを見ても、どうしてそれを申し込んだのか忘れてしまっているくらい前に申し込みをしたのですが、でも何十人待ちの人気のある本であることは確か。『アイデアの作り方』by ジェームス・W・ヤング。

もとは広告代理店の人向けに書かれたアイデアの作り方の指南書らしい。

そして、日本語版発刊に寄せられた著者のコメントを見てびっくり、なんと1961年。かれこれ61年前!

私は広告には無縁ですが、アイデアの作り方というコンセプトに惹かれて、とにかく読んでみることにしました。

で、中身については、興味のある方は読んで見られたらいいと思うのですが、注目したのが、”情報の集め方”についてのお話し。

ヤング氏は、アイデアというのは、既存の情報の組み合わせであるからして、その元になる情報をいかに精度よく広く集めることが肝要だと説いています。

そして、自分の専門分野と一般教養的な情報の両方を集めなさい、と。

問題は、その集め方!です。

なにせ、日本版が61年前ということはオリジナルが書かれたのはさらに前のこと。
だから、情報集めって、新聞の切り抜きとか本の情報を指すわけ。
それを、カードに手書きで写して、項目別にタイトルを付けてファイルすることで、それが自分のアイデアの元となる情報ストックになる、と。

私も昔、新聞の切り抜きとかしていたので、懐かしい…。いや、今でもたまに、切り抜いて机の横のイントレーに投げ込んでおいたりしています。それは、仕事であれ趣味であれ後で参照したい情報もあるし、買ってみたいかもしれないと気になる商品情報もある。

カードに手書きっていうのがいかにも昔の時代の方法らしくて、今のインターネットで情報検索できる時代にはそぐわないのでは? と、この章を読み始めた時には感じました。

でも、本当にそうだろうか?

私も、今はもっぱらネット検索派です。キーワード入れて、欲しい情報が見つからないことはほとんどないのではないか? というくらいですよね? まあ、私の欲しい情報なんてだいたい世の中に一般的に既存するもの程度、ということですが。

でも、そうやって調べたものは、その時に活用したり転用したりしても、よほど心底関心があるものでないと、そのままスルーして忘れてしまう。調べたことさえも記憶に残らない…まあ、年齢的なものもあるとは思いますが。

一方で、カードに書き写すという方法はどうか? 手を使って書くと、記憶に残るのですよね? やったことがある人ならわかると思います。中学高校時代、英単語だって、そうやって一生懸命覚えたわけだし。ノートに記すのも同様で、書いたことは後になって「あ、確かノートの見開きの右上に書いた気がする…」とか、記憶に残る。

この、記憶に残ることが、アイデアの元となる情報集め、という観点からして、重要なんじゃないかと思ったわけです。

記憶に欠片でも残している情報は、その欠片からたどって、書き写したカードやメモをたどれるし、そこからさらにおおもとの情報源まで遡ることができる。

一方、ネットサーフィンで見ただけだと、記憶に残りにくい…少なくとも私の場合は、そう。

そんなことを考えると、この60年以上前に書かれた「アイデアの作り方」という本は、技術の進歩に関係ない、人間が自分の頭とハートを駆使して造り出す閃きについて、とっても大事な基本的なことを示してくれているような気がします。

だから、60年たっても、図書館の貸し出し待ち何十人の人気を誇るのかもしれません。

すでにインターネットと共に育ってきた若い世代の方達には、「手書きなんて?!」と思わると思いますが、でも、素晴らしい技術を駆使し活用する一方で、自分が持っている人間としての無限大のポンシャルを最大限に伸ばし活かすために、意外にアナログな「手書き」なんてことを、試してみるのもお勧めしたい感じです。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?