見出し画像

物を言えなかった社員の気持ち

日野自動車の、エンジンの燃焼試験などのデータ改ざん問題でも、原因のひとつに「物を言えない組織」が指摘されています。

東京新聞2022年8月3日

またか…という感じですね。

その不正は20年前から行われていたということですが、その20年の間に競合他社の同様の問題も公表されてきました。
その間、その改ざんが脈々と引き継がれてきた仕事を担当していた社員の人達はどんな気持ちがしていたのでしょう?

「自分たちのしていることも、いつばれるのか?」「そうなったら自分は責任を問われるのか?」「黙り続けていないで口を開かなければならないのではないか?」様々な思いが頭の中にも心の中にも渦巻いていたことだろうと思います。

そして、そんな思いを抱きながら仕事していたら、気持ちも重く暗くなるし、もしかしたらそれが理由で心身病んでしまった方もいらしたかもしれません。

たまたまその部署に配属されたために、不正にかかわることになってしまった、というのは不幸というよりほかありません。

そして、日野自動車に限ったことではありませんが、「上に物を言えない組織」風土がこんな問題を引き起こしたというか、問題を20年も隠し続けることになったのだとしたら、この部署に限らず、他の部門でも、同様の「上に物を言えない組織」ゆえに生じている様々な問題があるだろうな、ということは容易に想像がつきます…。

「理由はわかった、物を言えない組織だったからだ、これからはそれを改める。さあ、みんな、どんどん口を開いてくれ!」といきなりトップが言ったとしても、ムリな話しです。

自分がもしこの会社の社員で、同じような課題に直面し続けて悩んでいたとしたら、この時点でどう感じるでしょう?

「問題の根源を公にした以上、物が言えるようにしてよ…」と思うのか、「そんなことは百も承知だけれど、解決はムリだね」と端から諦めてしまうかもしれません、だって、長期間にわたってその中に居続けた当事者だったら、簡単に変えられるとは思うのは難しい…。

鎖で杭につながれて行動の自由を奪われたゾウが、長い間、鎖につながれ続けていたら、いつか鎖が解かれる、杭から逃れられると期待することも忘れて、鎖が外されていてもそれに気づかずにずっと杭の傍に居続ける…そんなたとえ話を思い出します。

それでもやっぱり、組織として前進するためには、せっかく膿が出てきたわけですし、対策が必要ですよね?もちろん、すでに取り組まれていることと思いますが。

上司や会社のトップの不正やらハラスメントに直面して苦い経験をしてきた者としては、やはりここは、今後どうしていくという対策と並行して、今、その苦い、辛い状況にいて苦しんでいる従業員の方々に対応して欲しいです。現状・実態把握という意味でも。

何が起きているのか、どんな思いをしてきたのか…、話をさせて、そしてきちんと耳を傾けて欲しい。

ただし、大事なのは、訴えた時に、身の安全が絶対的に守られること! そこの担保と、訴える先、および経営陣に対する信頼がなければ口を開くのは難しいですよね?

しかも、訴える内容の主体が上司や経営メンバーであれば、権限や決定権を握っている人たちなので、結局、口を開いても開いた本人が討ち死にしてお終い、というリスクも多大にあります。

そこのところの、安全と信頼を、どう担保するのか? というのが、肝であり、組織風土を改めようとする経営トップの本気度に掛かってくるだろう、と思います。

こういう問題を抱えて辛い思いをしている人たちは、最近、問題が露呈した大手企業に限らず五万といるはずで、そういう方達が所属する組織でも、問題を他人事と思わずに、対岸の火事が実は自社内にもくすぶっていた、突然火の手が上がった!となる前に、先手を打って、足元を見直していただけるといいなあ、と切に願います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?