たまに観る映画レビュー『PERFECT DAYS』
役所広司さん主演の話題作、観てきました!
観ながら途中で思ったこと「これは BEAUTIFUL DAYS」だなって。つまりPERFECT DAYS=BEAUTIFUL DAYS。
それが結論なのですが、それで終わっちゃしょうがないので、も少し補足してみます。
「これが映画?!」ってくらい、主人公の平山さんの日常が淡々と、ほとんど繰り返しにしか見えない日々が描かれているわけです、最初のほうは。
仕事で「ルーティン」という言葉はよく使ったり思ったりするけれど、日常がルーティンな人がいるのか? って思いました。
朝、近所のおじさんが道を掃くほうきの音で眼ざめ、丁寧に髭を剃り、普段着の上に仕事着の青いつなぎを着こみ(THE TOKYO TOILETって背中に大きくロゴが入っていて、なかなかお洒落なユニフォームではある)、仕事道具(後輩の発言から、その多くが自作であることがわかる)を積み込んだ車で出勤する。道中は70年代ミュージックのカセットテープを聴きながらハンドルを握る…などなど。
生活の中で大事にしているもの、こと、こだわりもルーティンを構成していて、いろいろある…(詳しくは映画でどうぞ)。
仕事がオフの日も然りで、決まったルーティンとルートをたどる休日が描かれています。
そして途中までは平山さんがほとんど言葉を発しないので、本当にただ淡々と彼の行動が映し出されていくのを観ているだけ。
ストーリー展開とかがないので「この先どうなっていくんだろう?」と、なんとなく不安を感じないでもない。
それで、でも思ったのが「あ、これはパーフェクトデイズというか、ビューティフルデイズだな」と。
平山さんが、日々をとっても丁寧に大事に生きているから。
トイレ掃除の仕事もすっごく丁寧だし、黙っているからって世間をシャットアウトしていたり無関心なわけでもなくて周囲に目と心を配っているし、必要な時にはその優しさを行動に移すし、自分のことも卑下しているわけでもなく、日常を静かに満喫し満足している、そんな感じ。
これは私には真似できない芸当だなあと思いました…。対極な生き方。
最初のほうでは、淡々と繰り返しの日々の中で平山さんの感情もそんなに揺らぐこともなく、平穏に安定に見えているのが、後半にそれがちょっと揺らがされるような出来事が起きてくる。
そういう、日常が乱されるようなことが起きた時にどう反応し対応するかで、その人となりがよくわかるのだけれど、なんていうのか、いい感じ(笑)。人を非難しないし責めないし、受け止める度量と優しさがある。本当にカッコイイ大人の男ってこういう人かもしれないなあ、なんて思わされてしまう。
そう、平山さんは最初から最後までよれよれの普段着(エンドロールによると、どうやら”衣装”はユニクロみたい?)と例の青い仕事着のつなぎしか身につけてないのに、外見が冴えない分だけ中身が光るっていう逆効果?!(ただし、これは誰にでもはお勧めしません(笑))。
ただし、主人公は平山さんで最初から最後まで彼の生活を描いているんだけれど、実は、どうして今の生活に至っているのか? とか、過去に何かあったらしいけれどそれは何なのか? なんてことは触れず仕舞いなので、そういう意味でミステリアスともいえるかも。表の生活はなぞっているけれど、心の中のことはぼやかされたまま、みたいな。
ま、でも、人間なんて所詮そういうものかもしれませんしね? 自分のことだって自分でよくわからない部分もあるし、身近な人だってわかっているようで、わからないし、理解されてないし…と思うのは私だけでしょうか?
とにかく、なんていうか、味わい深い映画でした。また観てもいいかなあ。
冒頭の美しいイラストは、T_GAI(戒)さんからお借りしました。映画の中に繰り返し出てくる東京スカイツリーや浅草近辺の夜景の映像とは全然違うイメージですが、ひっくり返すと、つまり言い換えると主人公の心象の中ではこんなキラキラな日々なのかもしれない、なんて思います。ありがとうございます!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?