【読書】ランニング「How to 本」の読み方

 

書店や図書館でスポーツ関連のコーナーに行くと、マラソンや長距離ランのコツやトレーニング方法などを解説するHow to本がたくさん並んでいます。選手やコーチとして名を成した人が書いたものから海外の翻訳もの、「絶対」とか「これだけ」とかタイトルの言葉づかいで目を惹こうとするもの、さらに初心者向けのフルマラソン入門書まで、盛りだくさんです。

私もこれまでに20冊か30冊か、そうした長距離ランの解説本を読んできました。外で走ることができない雨の日や電車の中でも本を読めば走り方の研究ができますし、イメージトレーニングすることもできます。それに、長距離の走り方というのは子どもの頃に誰かに教わったわけでもなく、全くの自己流で進めてきているので、さまざまな経験やノウハウを持った第一人者が語る内容には学ぶことが多いだろうと思ったのです。

でも、いろいろな本を読んでいくうちに、実際に自分の参考にできそうな本、これは読んでよかったと思える本は、意外と限られていることに気づいてきました。言っていることはわかるけどそこまでの練習量は自分には無理だというものもあれば、走り方のスタイルというのでしょうか、自分が目指したい方向とは違っていてあまり共感できなかった本もありました。また、中には単純に内容が薄っぺらく、とりあえず著者の話題性や刺激的なタイトルで購入まで持っていかせればいいやといった思惑が伝わってくるかのような残念な本もありました。

ランニングのHow to本に書かれていることの信頼性を推し量るひとつの指標は、「書かれていることに科学的な裏付けがあるかどうか」だと思います。実験やデータによる検証がしっかり行われていると、ただ「自分はこうやったらうまくいった」と書いてあるだけの場合よりも、ぐっと信用度が増します。でも一方で、そこに捉われすぎてはいけないとも感じます。私は思い切り文系な人間なので的外れなことを書いているかもしれませんが、科学的というのは、ある条件を設定した上での「その時点で最良と思われていること」を指しているのだと思うからです。

たとえば、マラソンシューズの厚底・薄底論争です。ソールが薄くて軽いシューズがよいとされていたマラソンや長距離ランのシューズが、ナイキのヴェイパーフライ 4%が大人気を博して以降、厚底志向に一変しています。売り上げに直結するシューズの基本設計はメーカーの生命線でしょうから、各社は少なからずの費用を投じて「科学的」な研究開発を行っているはずです。それでも、ソールの常識がこの数年で一変しました。また、ランニングではなく水泳の話になりますが、クロールの水中での手のかきはひと世代前まで「S字型」がよいとされていたのが今では「まっすぐ」がよいと変わっているそうです。これも、どこかの時点で急に科学的な分析が始まったわけではないでしょうから、昔も今も科学的でありながら、スポーツにおける体の使い方の常識が変わったひとつの事例かと思います。

もうひとつ別の見方をすれば、ナイキでも他社でもよいのですが、どこかのメーカーが科学的なデータや調査を駆使して世界のトップ選手の心をこぞってつかむほど優れたシューズを作り上げたとしても、普通の市民ランナーがそれを履きこなすのはとても難しいだろうと思います。そのシューズの力をフルに発揮させるために必要な走力や筋力を持ち合わせていないからです。いくら科学的でも、前提が変わると全く当てはまらないというのは普通に起こることだと思います。

こう考えてくると、ランニングのHow to本が自分にとって役立つかどうかは「内容に共感できるか(書いてあることが、科学的なものでも経験ベースのものでも、自分がそれに納得できるか)」、そして「実際に自分がそれを練習に取り入れたときに効果を実感できるか」という二点に集約できるのではないかと感じます。これは、その人の体格や走り方、走力などによって大きく変わってきますので、結局のところ「人それぞれ」という元も子もない結論になってしまいます…。

とはいえ、「ここに書かれていることは多くの人の参考になるのでは」と感じさせる、密度の濃い本が中にはあるのも事実です。ランニングのHow to本に使えるもの・使えないもののレベル差が結構あることを実感した者として、時間があるときに少しずつ、私が「これは読んでよかった。参考になる。」と思った本をご紹介していきたいと思います。私が気に入ったからといって他の方の参考になるかどうかは何とも言えないのですが、しっかり熱意を持って書かれた本だということは自信をもってお伝えできる、そんな本です。

※こんな本のことを書いています。














 
















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