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【読書 走る本】『ヨンケイ!!』天沢夏月

今年発行された、新しいランニング小説です。新聞の書評で珍しくラン関連の本が取り上げられていたのを読み、興味を持ちました。

ヨンケイというのは、4x 100m リレーのことです。日本男子が近年、オリンピックや世界選手権でメダルを取っている種目です。

この本の主人公は、伊豆大島の高校に通う男子4人。慢性的な部員不足に悩む陸上部にとって、力を持った短距離走者が4人揃うのは滅多にないこと。でもこの4人はそれぞれに事情を抱え、なかなか上手くバトンを繋いでいくことができません、、、。

第一走者からアンカーまで、4つの章で一人ずつ視点を変えていくという構成が面白いです。時間を遡ったり、やりとりが逆の立場から語られたりしながら物語が進んでいきます。

私は短距離走には疎いので、それぞれの走者の役割や向き・不向きなどを、この本を読みながら知りました。時間にして40秒あまりの中にギュッとさまざまなドラマが詰め込まれているというスプリンターの世界は、いつも長い距離を走る自分にはとても興味深いものでした。

主な読者としては、登場人物と同じ高校生ぐらいを想定しているのかなと感じます。自分がその年代の頃に出版されていたら、何度も読み直す本になったと思います。でも、若い読者にしか届かないという本ではありません。週末の新聞の書評欄に取り上げられていたのもその証でしょう。あさのあつこさんの『バッテリー』や森絵都さんの『DIVE!!』などのように、大人の読者にも作品の熱量がしっかり伝わってくる一冊です。

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