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ある日の通夜

夫の会社の先輩、Hさんが亡くなった。
先輩と言っても2年前に定年退職されたので、
今は悠々自適にされている、と思っていた。

Hさんとは、私も何度かカープの試合観戦で
ご一緒させてもらったので、
夫婦でお通夜に参列することにした。
夫の仕事の関係で、少し遅れて式場に入ると、
Hさんの在りし日の写真が
コルクボードに沢山飾られていて、
泣きそうになった。
こんなにお元気だったのにな。

久しぶりにお会いしたHさんは、
登山用のシャツを着て
生前とあまり変わらないお姿で眠っていた。
1年半ほど前に、ウチの猫の調子が悪くて
行けなくなったカープのチケットをお譲りした際は
自転車でご自宅から颯爽とやって来たので
本当に信じられない気分だった。
そういえば今年いただいた年賀状に
昨年は体調を崩したと書かれてはいたのだが。

お通夜が終わり、
少しずつ参列者が帰っていく。
夫とも同じ会社で働いているHさんの奥様は、
(病気のことを)何も話してなくてすみませんと言っていた。
これからこの方はひとりで歩いていくんだな。
でも娘さんもいらっしゃるし、
バリバリお仕事もされているので、
少しは気が紛れてお元気になられるだろうか。
もし夫が亡くなった後の、何も無い自分の事を考えて、ひゅっと心が冷えた。

会館前では、参列したHさんの元同僚の方が
名残惜しそうに集まっていた。
皆さん定年になった方が多いので
久しぶりの話に花が咲いている。
もちろん夫も同じ会社だったので
知っている先輩や同期と話している、のだが、
途中でふと気付いた。

私もこの人たち知っとるわ!

皆さん、結婚した頃に住んでいた社宅で
よく遊んだ人たちだった。
ウチに来て酔いつぶれて泊まった人もいた。
集まって宅配ピザを取って飲んだりゲームしたりしたご夫婦も、一緒に社宅の役員をした人もいた。
あまりに会ってなさ過ぎて、
そして皆さん変わり過ぎて、
全然気付かなかったのだ。
向こうもそれは同じだったのか、
話すまでに少し時間がかかった。
私は時の流れに愕然とするばかりだった。

唯一FBで繋がっている方と話していたら
「Hさんはねぇ、山に一緒に行っても、
苦なくスイスイ登ってて、休憩になると
疲れてヒーヒー言ってる僕達をニコニコしながら見ていたんだよー」と教えてくれた。
きっと今も、空の上から
みんなが懐かしく話をしている姿を
ニコニコしながら見ているに違いないな。
なんだかそう思えた雨の夜だった。

御冥福を心よりお祈りいたします。

(了)












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