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コミックマーケットを語ってみると |コミケ神話の真偽


ここからは「コミックマーケット」の解説をしていきます。
長くなりますので数回に分けて掲載していきたいと思います。

「コミケ」の開催は年に二回、夏コミと冬コミの二回に分けられています。
※春コミのような感じの不定期の開催は昔に数回あったようです。

どちらも三日間開催されていますが、我々が同人活動していたときは夏コミが三日間、冬コミが二日間でした。また開催場所も今は「東京国際展示場(東京ビッグサイト)」ですが、我々の頃は「日本コンベンションセンター(幕張メッセ)」から「東京国際見本市会場(晴海)」へと開催場所を移していました。

今の「東京ビッグサイト」になったのも18禁規制が始まり、同人誌のバッシングなどがあり「東京国際見本市会場(晴海)」が使えなくなるなどがあって、今の「東京ビッグサイト」へ落ち着いています。

またもともと「コミケ」には企業参加ブースは存在しておらず、1996年
の冬コミから企業参加が始まります。この企業参加ですが、昔からこの話はずっとあったそうです。こういう話はずっとあって我々の耳にも入ってきていました。

ですが準備会代表者などがコミケはアマチュアの祭典であり、入場者も
一般参加という全員参加者という理念から、そこへ企業参加するという
ことにためらいがあったようです。今ではテレビ取材なども沢山あるようですが、当時はこれらの取材も歓迎していませんでした。

これは直接、運営代表に話をしてどうして企業参加を許可しないのかということを質問したスタッフから話を聞きました。明言を避けていたようですが、アマチュアの祭典という意識がとても強いようでした。
企業も参加させてほしいという依頼はかなり以前からあったようです。

 

運営スタッフのボランティアは三千人を超えるそうですが、だいたいが
ここへ集まるスタッフはもともと地元で即売会などの運営に携わった経験
がある人たちです。
この中に当時の我々の知り合いもおりました。

今は知りませんが「ボランティア」とされていますが当時はアルバイト料も
でましたし専用の夜行バスで全国から集められてくるそうです。そんな「コミケ」も東京オリンピックの影響で会場を分けて開催するために四日間開催と言われています。
それにともない一般参加も有料化という話が持ち上がっています。

我々がなぜ「コミケ」を知ったのかは、学生の頃にSF大会に参加したいと思っていた時があり、後で知ったのですがSF大会の運営とコミケの運営のスタッフがある程度かぶっていた時期があったらしくどこからともなくそういうイベントがある的な話が聞こえてきていました。

この時はまだなにも知らなかったのですが、複数のまったく違うところから
「コミケ」の話を聞くことがあり、さらには参加経験者まで現れるようになりはっきりと意識するようになりました。

この時はまだ実態をなにも知らず、即売会はすべて「コミケ」という程度のとらえ方でした。


ですが同人活動を始めた時から、他のサークルも同人ファンも全てと言って
良いほど「コミケ」のことを話します。小さなことは無数にあるのですが、それはまるで「コミケ」基準で同人誌が動いているかのようでした。

そしてこの「コミケ」幻想が決定的に分かったのはある大型即売会へ参加したときでした。このイベントも運営側の人に勧められて参加しました。

夏だったのでとにかく暑さ対策をしっかりしておくようにと、今でも良くきく夏コミの過酷な暑さ──コミケの話であると断らないで──の物語を我々に話してくれました。

今もネットなどに流れている夏コミ会場に現れるコミケ雲の話もありました。まったく同じ内容で、おそらく30年以上は同じ話がずっと語られ続けているのだと思います。驚くのはその内容が殆ど変わらずに伝わっていることです。まるで神話の物語を口伝されているかのようでした。

我々はこの時、その事実を知りませんでしたので気を利かせて注意してくれているのだと善意にとらえて万全の体制で挑みました。この過酷な夏の暑さは夏コミでの話だとは一言も言われないまま。

緊急ようの保冷剤と手持ちのポケット扇風機まで用意しましたからね。これを用意したと話すとそれくらいの用意はあった方が良いという答えでした。
我々が参加したのは「夏コミ」ではないにも関わらずです。

しかしです──館内に入ってみれば空調が効いており涼しいこと。暑さ対策の必要などどこにもなくていったいどこの話をしているんだと文句を言ったほどです。持って行くのにも荷物になる、持って帰るにも邪魔になるのになんという無駄なことをしたのかと。


もちろん一般参加で真夏の日差しの中で長い行列に並ぶとなるとこれも分かります。ですが我々はサークル参加で並んだりしませんし、そもそも夏の行列が過酷であるのは「コミケ」に限ったことではありません。

この方がこの開催会場での運営が初めてならばこういう間違いも分かるのですが、初めてではなく何回もこの会場で運営していたのですから。現実の出来事と個人の意識の中にある認識に大きな隔たりがあるとしか思えませんでした。この方、優秀な方で我々も信頼していただけにけっこうショックな出来事でした。

そして他の人たちとも、似たようなことを経験してこれらの人たちに共通するのは意識に大きな「解離」があることが分かってきたのです。ほかのイベントでもどこのイベントでも、すべて「コミケ」であるかのように話すのです。

これは事前に聞いていた説明が、一度も事実であったことがないほど徹底していました。

まるで新興宗教の教義をどこへいっても聞かされているようなものです。
つまりは「コミケ」のすごさと美化された物語です。


この件を切っ掛けに、今までずっとおかしいと思っていたことがはっきりと
分かってきて、同人関係の人の言うことはなにも信じないようになりました。

実際に役に立ったことがなくて、真に受けて痛い経験ばかりが続いていたからです。一つくらいただしかったことはないかと思い返したいのですが、見事になに一つありませんでした。

むしろこれは比較的最近のことですが、「セーラームーン」の作者である
「武内直子」さんのことで噂話を聞いていたことが間違っていたことが分かりどこまで話をねつ造しているんだと呆れていたところです。


我々は創作活動が──作りたいものがある──大事であり、即売会参加
そのものは二の次でした。ましてや「コミケ」参加は旅費と宿泊費などを考えると初めから参加する気はまったくなかったのです。

ですが殆どのサークルが「コミケ」参加を計画しており、中には「コミケ」参加するためにサークル活動をしているサークルも多くというか、この考えで活動しているサークルの方が多かった。

それも凄く多い数で、コミケ参加を考えないサークルはいないのではないかと思うほどでした。特に、編集だけして自分たちではなにも作らないサークルはこれに当たります。

初めはこういう人たちの存在が理解できませんでした。
作りたいものがあるから活動しているものとばかり思っていたからです。
だから他のサークルや一般参加者と話していてもどうしても話が食い違って
きてしまいます。

同人サークルも一般参加者もともに「コミケ」幻想を共有する人々であった
のだと思います。ですから「コミケ」参加することを前提で活動していたのです。

これはかなり深刻で別のところで──同人誌の通販のことを語りましたが、
同人誌を紹介してくれる雑誌の編集部からも、「コミケ」の開催の前には参加するブースの場所を教えてほしいと問い合わせが来ます。

また雑誌もコミケの開催日の前に、当日の参加サークルのブースの場所を地図付きで掲載するなどしていました。それほど当時はコミケ基準で同人は動いていたのです。


驚くのはこの三十年近くで「コミケ」を伝える内容が変わっていないことです。ましてや今ではテレビのニュースやバラエティ番組でも取り上げられていますし、ネットでの情報もあります。

ですがコミケにまつわる情報は揺るぎないもので相変わらず「凄い」「素晴らしい」の美談の連続です。

まだ冬コミが終わってから日が浅いのですが、今回の開催では三日間で50万強の動員数があったそうです。確かに数は多いですが、ではこれに近い人数を動員するイベントがないかというといくつもあります。

何度も指摘していますが、「赤ブーブー通信社」が開催する同人イベントでは三日間連続というイベントがないだけで、一日だけのイベントでは「コミケ」よりも参加動員数が多いイベントがあります。


また、大学の学園祭も最近はショーアップされていて、参加者数20万人を超える学園祭も珍しくありません。つい先日、活動中止を発表したアイドルグループの「嵐」に至っては、全国ツアーで開催される開催地のホテルなどがファンの予約で予定していた学会の開催ができないや、他のイベントも中止になるなどしています。

また開催地の駅では「嵐」のポスターなどが至る所に貼られて、街を挙げて「嵐」一色に染まってしまいます。影響力に至っては「コミケ」よりもあると思いますよ。

ですがこういう事実にはまったく触れられずに、ただ「コミケ」は凄いの一点張りです。どこが凄いやなによりも凄いがなくて、昔から言われ続けていることを教義をくり返し唱えるように話すのです。


これは昔からですが、例えそういう事実があっても自分たちの胸にしまっておくだけというのではなくて、聞いてもいないのに他人に吹聴してまわるという側面があります。

これに新しい美談が加わることも内容が訂正されることもなく、ずっと同じ情報がくり返し反復されています。ここまでになると神話の口伝と変わらないのではないかと思うほどです。
最近、あらためてこの神話の構造は強いと感じています。


少し話がズレるのですが、パソコン作業をするときは必ずラジオを聴いています。この時、ゲストにある声優さんが出演されていたのですが、デビュー作品がなにかということで話が盛り上がっていました。

「ウィキペディア」にも間違いが掲載されていて、声優さんがご本人で訂正
しても必ず誰かがまた間違った情報へと修正していると話していました。根強いファンがいてそれらが間違った情報を信じきっていて、こだわっている
のだと思います。

コミケの情報に関しても同じような心理的な力学が働いているのではないかと考えています。「コミケ」の情報に関しては、なぜかこだわっているというか、実際に調べていないのに強い執着を見せる人が多いですね。

簡単にいってしまうと現実のコミケではなく、コミケの話をする人の頭が作り出した想像上のコミケの物語です。

これは新興宗教の勧誘をしてくる人たちにも良く見受けられる行為で、とても似ています。いつも思うのですが、どうして「コミケが好き」なだけではいけないのかと思います。

人がどう思うとかそんなものはどうでも良くて、なのに自分の好きなものが他のものよりも優れていると強く言い張るのかとずっと思っています。この優劣をつけたがる気持ちが同人活動をしていた時はわかりませんでした。


ちょっとここで寄り道して、酷似したファン人気があるアニメ作品について
蛇足ながら解説したいと思います。それは「新世紀エヴァンゲリオン」です。

これは少し昔の話になりますが、「新世紀エヴァンゲリオン」がヒットした時も同じような現象に出会いました。今でこそ「エヴァ」の人気は不動ですが、本放送当時はそれほどヒットしたとはいえない作品でした。

1995年10月4日から1996年3月27日にかけて全26話が放送されていますが、放送後に話題になり多くのアニメファンが追随しました。これはかなり印象的だったので、鮮明に記憶に残っています。

この人気は初めからおかしくて、まるでサブタイトルのように「社会現象」と言う言葉がついてきました。誰が言い出したものかは分からないのですが、ではどのような社会現象を起こしたのかは誰も答えられないアニメでもあります。

良くいく「TSUTAYA」でレンタル状況を見ていたのですが、人気が
あると言われていたのに一本のレンタルもされていませんでした。ですがこの「社会現象」という言葉をつけてニュースなどで取り上げられると途端に全てがレンタルされてしまうという変わりようです。

初めから自発的な人気ではなく「社会現象」という触れ込みによる後追い人気でした。


この人気のあり方が、「コミケ」人気に似ているのです。
この時、まだ同人に半分脚を突っ込んだままの状態だったので色々と情報
が入ってきていたのですが、正直、「エヴァ」人気を裏付ける情報がまった
く入ってきませんでした。

そっちのといいますか映像関係の業界の人にも直接「エヴァ」人気をたずねてみたこともあったのですが、人気はないと話していました。また実際に人気が出てきのは本放送ではなく、再放送からでした。

一般の人たちよりもアニメ関係には関わりを持っていますが、それでも初めから実態の見えない人気でしたね。

とにかくこの人気が、まるでスタジオジブリ作品よりも人気があるアニメの
ような騒ぎ方でした。そんなに大勢のファンがついているのかと首をかしげることばかりでした。日本中のアニメファンが「エヴァンゲリオン」に注目しているかのようにです。


なによりも社会現象はどのような社会現象かといえる人はいませんでした。
一度、映画版「エヴァンゲリオン」が公開された年ですが、この「社会現象」はなんなのかと直接ファンの人に聞いたことがありました。

この時も、映画公開で人気が沸騰していて日本中が注目している──映画館も
満員で階段にまで人が並んでいる──という、まるで「千と千尋の神隠し」に
肉迫しているのではないかと言う感じの騒ぎようでした。

ですが正確にはおぼえていませんが、この時の「エヴァ」の興行成績は20億
円くらいだったと思います。「千と千尋の神隠し」は歴代日本映画の興行成績1位ですし、収益300億円こえしています。

勝負になっていないですし、自分のまわりにも付き合いのある人たちにも
「エヴァ」ファンは一人もいませんでした。どこに「エヴァ」ファンがいるんだと思っていた位です。それくらい「エヴァ」ファンは数少なくて、少ないけれど一人で数十人分の騒ぎ方をしていたものと思われます。


そんななかで数少ない「エヴァ」ファンとであった時があって、この人大学生だったのですが話を聞くと今まで散々聞いた「社会現象」の話をしていました。ではその社会現象はとなると「缶コーヒー」が売られている、映画館が満席であるなどでした。

この程度が社会現象であるならば、殆どのアニメや映画が社会現象になってしまいますが、とにかく正体不明の「エヴァ」人気を同じように熱く語りました。

自分は同人誌を作っていたことを話さず、それらについて一つ一つ突っ込みを入れて聞いてみたのですが、「エヴァ」の缶コーヒーを見たことがないと話し、おまけに公開中の映画に行ったら予定よりよりも早く公開が打ち切りになっており、代わりに「ジャングル大帝」が公開されていたそうです。

つまりこのファンでさえも彼らが唱える社会現象を見たことがなくその真偽を確かめずに話していたのです。とにかく「社会現象」をおこしたアニメ作品であるということが重要でした。


この年はいろいろなことがあった年でもあって、アニメ「ポケットモンスター」が光の点滅具合から見ていた多数の子供たちにてんかん発作を誘発してしまい、救急搬送されてしまうことがあって大問題になった年でもありました。

「ポケモン」は今更説明の必要のないアニメで、その頃は子供たちに大人気でした。

この事件は当時お世話になっていた歯科医の先生から、お孫さんがこの事件でアニメの放送が中止になって嘆き騒いでいるとまったく予想もしなかったところからいくつも情報が入ってきました。

「ポケットモンスター」はこの時期──今現在は知りませんが──週に一回版権会議というものをやっていたそうです。それはお菓子やら飲料水などいろいろな商品との版権について、利用を認めるかどうかなどの会議が毎週行われていたほど人気がありました。

スーパーに行ってもやはりポケモンのキャラクターを使ったお菓子なども見ましたし、とにかくメディアミックスの力は凄かったですね。またカードに関しては子供たちが夢中で、夢中になっている子供たちの親たちからこれらの人気のほどを聞かされました。

ではこの時期に「エヴァ」にメディアミックスがあったかというとこれが全くありませんでした。先のファンの人間が話していた「缶コーヒー」ですが、商品販売されていると思い込んでいましたが、実際は監督である「庵野秀明」監督が好きな缶コーヒーがあるとかで「DVDボックス」の販売にあわせて限定で発売されたものだそうです。

ファンの間では「エヴァ缶」と呼ばれています。
それを全国発売されている信じ込んでいる人の方がはるかに多くて、どうも
情報が都合良くねじ曲げられているようでした。

例えこれが事実であっても、缶コーヒー一つとポケモン商品の多さからすると比べようもないわけです。もちろん「ポケモン」事件もありますから、社会現象という点では間違いなく「ポットモンスター」でしょう。
ですが「エヴァ」ファンは他のアニメよりも人気があると言い張るのです。

映画館の件も、公開当初──どうも公開映画館数が少なかったようです──
ある映画館に公開当初ファンが大勢押しかけたので満員であったと言うことらしいです。

これがどうして他のアニメよりも「エヴァ」人気を裏付けるものかが分かりませんでした。

それは「千と千尋の神隠し」も「タイタニック」も長い期間映画公開されていて、どの映画館でも行列が続いていました。「タイタニック」ですが、この時「ガメラ」を見に行っていてすでに公開が終わっていると思っていましたが、同じビルにある複数館で──吹き替え版と字幕版──まだ映画公開されているだけでなく、行列ができていることに驚いたくらいです。

その行列の横を並ばずすんなりと映画館へと入っていけました。
それらの人気からして「エヴァンゲリオン」はまったく勝負になっていないのです。

これも大変に誇張されて広まっていますが、「エヴァ」のキャラクターを使ったPRポスターが三鷹市の水道局で配られたのですが、これが当初予想していたよりも大勢いたのでなくなったことがありました。

徹夜で並ぼうとするので整理券を配って立ち去るようにしたそうですが、立ち去らなくておまけに市役所ないに張ってあるポスターまで盗まれたそうです。簡単にいってしまうと、配布分がそれほど多くなかったのでそれを取り合いしたそうなんですが、大勢のファンが殺到してというふうに一部を切り取って誇張していたようです。


これらの「エヴァンゲリオン」の社会現象といわれるものと、「コミケ」人気を語る人々の共通点は多い。一部を切り取り誇張して語るのが常にあります。

ここから分かるのは、どちらも他よりも優れているというある種の自意識過剰さが心理的背景にあります。自分たちの好きなものは人々がだれもが注目している、そしてその注目されているものに詳しい自分たちは選ばれたものたちであるかのようでした。

この自意識過剰からくる選民意識が、「コミケ」幻想を支えている源であると思います。



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