中村恭平2

2020年 広島リリーフ陣を占う

前稿では2020年の先発陣について展望しましたが、本稿ではリリーフ陣について展望していこうと思います。

1.2019年のリリーフ陣を振り返る

まず最初に、2019年のリリーフ陣は相対的にどのような立ち位置にあったのかについて、確認していきます。

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先発陣はリーグ4位ながらプラスの数値を記録していましたが、リリーフ陣は同じくリーグ4位ながらマイナスの数値を記録し、どちらかと言うと最下位の方が近い位置となっています。

ですので、どちらかと言うと先発陣は強みとなっていたと言えそうですが、リリーフ陣については弱点となってしまっていたと言えましょう。

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先発陣と同様に、クローザー役の投手とホールド+セーブの数がチーム内上位8名の投手を抜き出して、各球団の特徴をもう少し詳細に比較してみます。それぞれの項目で色が赤に近づくほど良い数値で、緑に近づくほど悪い数値となっています。

ここから分かる広島リリーフ陣の特徴としては、
①枚数は多いが柱となる投手不在
②クローザー不在
となるでしょうか。

①枚数は多いが柱となる投手不在

ホールド+セーブ数では、リーグトップの傑出度を誇った阪神と同数の6名が二桁を記録している通り、勝ち試合でも使える投手の数は決して少なくはなかったと言えます。リーグ3連覇による勤続疲労の影響からか、中崎翔太、一岡竜司、今村猛といったかつてのリリーフエースたちが、年間通した稼働が出来ない中、新戦力の台頭で何とか乗り切った状況です。

しかし、tRAを見るとリーグで唯一2点台の投手が不在の状況で、真に頼れる投手はいなかったことが窺い知れます。そのために、昨年は逆転負けを食らうシーンも多く見られました。

②クローザー不在

2015年からクローザーの座を守り続けてきた中崎が、勤続疲労によって不振に陥る中、昨年は6月からフランスアがクローザーに就任することとなりました。しかし8度のセーブ失敗を数えるなど、そのクローザー適性には疑問符の付く結果となってしまいました。

この表ではホールドとセーブを足した数で評価しているため、分かりづらいですが、実質はクローザーが固まりきらず、不在といっても差し支えのない状況に陥っていたのです。一番後ろが固まらなければ、逆算して継投を考えるのも難しくなるため、数字以上にクローザー不在はマイナス要因になったと考えられのではないでしょうか。

以上より、2020年に向けては、柱となるリリーフエースの確立と、クローザーの確立が課題となってくることが分かります。

2.2020年の陣容

では、2020年のリリーフ陣の陣容はどうなってくるのか、という点についてですが、新外国人や先発からの転向組が加わり、昨年とはまた違う様相を呈しています。ニューフェイスが加わったことにより、上記の課題に対して少なからずアプローチはされていると言えましょう。

そんな変化を見せつつある2020年のリリーフ陣の陣容について、期待値や昨年までの実績を加味すると、下記のようになりそうです。

クローザー:DJ・ジョンソン
セットアッパー(Aチーム):フランスア 中村恭平 一岡竜司 菊池保則
一軍枠争い(Bチーム):
岡田明丈 スコット ケムナ誠 塹江敦哉 島内颯太郎 矢崎拓也 高橋樹也 今村猛 中田廉
キーマン:中崎翔太

2-1.クローザー

昨年の大きな課題であった試合の最後を締めるクローザー役は、現時点では未知数な部分も多いですが、DJ・ジョンソンに期待したいと思います。

真っスラ気味で平均150kmを計測するストレートと、真下に落ちていくような縦割れのパワーカーブが大きな武器の投手です。特にパワーカーブの威力は、MLBでも非常に高い威力を誇っており、このボールで空振りの量産を期待できます。加えてグラウンドボールピッチャーの傾向を強く示していることから、被長打リスクの低さも特徴的です。

以上より、投手としての特徴は十分クローザーとしてやっていくだけのものはあるため、後は実戦でどのような投球を見せるかになってくるでしょう。昨年は固まりきらなかったこのポジションに、DJ・ジョンソンがハマれば、その前を投げる投手起用にバリエーションが生まれるため、大きなカギを握りそうです。

2-2.セットアッパー(Aチーム)

続いてセットアッパーとしてや勝ち試合で登板することになりそうなAチームに該当する投手についてですが、昨年までの実績や現時点での実力を鑑みると、フランスア中村恭平一岡竜司菊池保則の4名が候補となってくるでしょう。

昨年はセットアッパーやクローザーとしてフル回転したフランスアですが、前年からの疲労の影響があってかアームアングルが下がってしまい、ストレートとスライダーの威力が落ちてしまったために、成績は2018年ほどのインパクトを残せないシーズンとなってしまいました。

ただシーズン終盤はアームアングルも上がってきていたため、アームアングルの高さを維持できれば昨年以上の活躍は間違いないでしょう。後は勤続疲労の影響が出ないかという点だけだと思います。豪速球と鋭いスライダー・チェンジアップで打者をねじ伏せる姿を期待したいところです。

昨年大きく飛躍を遂げた中村恭平も、有力なセットアッパー候補です。手塚一志氏に師事し、習得した縦振りのフォームから繰り出されるストレートは、前年から8.6kmアップの平均149.4kmを記録。スライダーのスラッター化にも成功し、奪三振マシーンとして大きく飛躍を遂げた一年となりました。

今季に向けては、新たにフォークの習得に取り組むなど、投球の幅を広げる工夫も見せています。このフォークが機能するようであれば、ボールの再現性が高く大崩れはしないことから、一気に絶対的なセットアッパーもしくはクローザーの位置まで上り詰めても全く不思議ではありません。個人的に最も期待している投手です。

右投手では、一岡竜司菊池保則がセットアッパー候補の最右翼となってくるでしょう。一岡は昨年はコンディション不良により、夏場以降は稼働できず、奪三振能力を示すK%も前年の25.6%から13.5%まで低下するなど、不満の残るシーズンでした。

一方の菊池保は、福井優也とのトレードで楽天から加入し、当初は敗戦処理ながら徐々に序列を上げていき、最終的にはセットアッパーの位置まで上り詰めました。シュートの活用でスライダーが生きるようになったことや、フォークが冴え渡ったことが、成績向上に大きく結びついたと考えられます。

今季に向けては、一岡は二段モーションを復活させることで、下半身への負担を減らすとともに、強いボールの復活を目指しています。過去数年の勤続疲労の影響も間違いなくあるでしょうから、まずはコンディションをきっちり整えて万全の状態でシーズンに臨んでもらいたいものです。

菊池保については、各チーム慣れも出てくる移籍2年目ということで、流石に昨年レベルの活躍は難しいかもしれませんが、どんなシチュエーションでも起用できるため、セットアッパーというより便利屋的な立ち位置でいてくれると、チームとしては非常に助けられそうです。

ここで挙げた4名の内、少なくとも3名が昨年レベルで機能すれば、勝ち試合を落とすようなことも少なくなるでしょうし、チームの優勝に向けては非常に重要となってくるでしょう。

2-3.一軍枠争い(Bチーム)

セットアッパー以下のポジションで、一軍枠争いが激しくなるのが、いわゆるBチームのポジションでしょう。非常に多くの候補投手がいますが、首脳陣の期待が最も高いのは岡田明丈です。

2017年には12勝を挙げ、将来のエースとして期待されましたが、その後は低迷。佐々岡新監督にボールの強さに目を付けられて今季からは本格的にリリーフに挑戦することとなりました。

ここ2年の成績不振や突如乱れる制球は、本人の中で技術的な再現性が無いことが原因だと思われますので、オフの間にその辺りを確立出来ていなければこれまでの二の舞に終わってしまいそうです。もしハマればセットアッパーの地位を確立することも期待できますが果たしてどうなるでしょうか…

その他には外国人枠の影響で出番がどれだけあるかは分かりませんが、新外国人のスコットもBチームもしくはAチーム候補でしょう。スラッターとツーシームが光るゴロPで、登板機会さえあれば一定の活躍は間違いないと思います。

若手投手で有望な候補が多く、昨年一軍で二桁試合に登板を果たした島内颯太郎塹江敦哉に加え、ケムナ誠高橋樹也矢崎拓也が候補となってきます。

被打率.216とストレートの威力は抜群の島内は、変化球の質向上と投球割合の上昇が課題となるでしょう。いくら質が良くとも70%以上ストレートを投げていては流石に捉えられます。

塹江は150km越えのストレートと横変化強めのスラッターが武器のブレイク候補左腕です。あとは入団時からの課題である制球力が改善されれば、フランスア・中村恭に次ぐパワー型左腕リリーバーとして、一軍定着は間違いないでしょう。

強烈なシュート回転するストレートが武器のケムナ、奪三振能力の高さが目を引く技巧派左腕の高橋樹、制球に難があるもののストレートとスプリットの威力は本物の矢崎も一軍枠を虎視眈々と狙う存在です。中でも昨年から成長著しいケムナやオフに菊池雄星とトレーニングを積んだ矢崎は楽しみな存在です。

楽しみな若手のみでなく、経験豊富な今村猛中田廉といった中堅投手も一軍リリーフ枠の座を窺っています。

昨年はそれまでのストレートとスプリットの2ピッチ投球から、縦スラとの2ピッチ投球に切り替え、かつ球速を2.0㎞伸ばしたことで、プチ復活を遂げた今村ですが、今季はこれにスプリットを再びレパートリーに加えられれば、更なる成績向上も期待できそうです。

3年前は厳しい場面で登板し、好火消しを続けた中田は、投球の根幹となるストレートとフォークの威力低下が気になるところです。球速の向上によって、逆にホップ型のストレートのホップ量が減少し、持ち味が生きなくなっているように感じますので、140㎞少々の最もホップ量を確保できる適切なスピード感を取り戻せば、フォークも生きるようになって復活も見えてくるでしょう。

2-4.キーマン

オフの右ひざ手術により、開幕からの稼働は難しくなりましたが、台所事情の苦しくなる夏場以降に、広島リリーフ陣のキーマンとなってきそうなのが中崎翔太ではないでしょうか。

昨年は勤続疲労の影響が濃く、前年の平均球速146.3km→143.9kmと球速が大幅に低下。マネーピッチであったスライダーの軌道も膨らみの大きなものになり、打者に見極められるようになったことで投球が苦しくなり、6月からクローザーの座を剥奪されることとなりました。

そしてオフの右ひざ手術と苦境が続くこと事態となっていますが、まだ28歳と老け込む年齢ではありません。コンディションを整えその実力を取り戻し、3連覇時にクローザーを務めあげ、修羅場をくぐってきた豊富な経験値を、シーズン終盤の勝負所で生かすような展開を期待しています。

今村や中田も、一時の成績不振から脱した過去があるため、中崎もそのようにV字回復を見せられるでしょうか?

3.まとめ

2019年に生じたリリーフエースの確立と、クローザーの確立という課題に対しては、新外国人投手2名の獲得と岡田のリリーフ転向、更には若手投手の成長や実績組の復活に賭ける形となっていることが分かります。

その上でDJ・ジョンソンもしくはスコットの新外国人がクローザーとして収まり、支配力のあるフランスアや中村恭平をセットアッパーとして起用することができれば、上記のような課題はしっかり埋まることでしょう。

昨年は試合終盤に逃げ切れない展開に陥ることが多く、4位に終わった大きな一因ともなってしまいました。昨年逃げ切れなかった試合を逃げ切れるようになるだけでも、状況は大きく変わるでしょうから、2020年はリリーフ陣の奮起に期待したいところです。

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