教員や保育士の性犯罪歴をチェックする”子どもを守る”「日本版DBS」とは?いつから導入?
子どもたちが学校や塾など、教育の現場で性被害にあう事例があとを絶ちません。
日本政府は2024年4月19日、子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか確認する制度「日本版DBS」を導入するための法案を閣議決定し、国会に提出しました。
新たなこの制度を用いて、どのように子どもたちを守ることができるのでしょうか?
ここでは、気になる内容や導入時期、対象者などを一問一答形式で紹介していきます!
Q1.なぜ「日本版DBS」と呼ぶのか?
A.イギリスの英国内務省が管轄する「Disclosure and Barring Service(DBS)」を参考にした制度だからです。
DBSは、イギリスの「Disclosure and Barring Service(ディスクロージャー・アンド・バーリング・サービス)」の略。
DBSは「前歴開示・前歴者就業制限機構」というイギリスの公的機関で、子どもに関わる職業に就く人を対象に性犯罪歴を管理し、事業者側からの照会を受け付け、開示する「DBS制度」を実施しています。
これを参考にしたのが「日本版DBS」です。
Q2.「日本版DBS」とは?
A. 子どもにと接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか、雇用主がこども家庭庁を通じて法務省に照会する制度です。
教員や保育などの従事者による性暴力を防止することを目的に、子どもと接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか、雇用主(事業者)がこども家庭庁を通じて法務省に照会することができる制度です。
子どもを対象にした性暴力が、生涯にわたり回復の難しい多大な影響を与えるとして、
教員や保育などの従事者による性暴力を防止するために作られました。
Q3.いつから導入される?
A.政府は、2026年頃の制度開始を目指しています。
政府は2026年ごろの制度開始を目指していると言います。
また2024年4月19日には、「日本版DBSを納入するための法案」が閣議決定されました。
Q4.どんな事業者が対象となるのか?
A.学校、認可保育園などは義務。その他は認定制度をクリアした場合のみ対象です。
①義務化されている施設は?
学校や認可保育所など、法律上、認可の対象となっている施設は「義務」となります。
児童養護施設や障害児の入所施設、児童発達支援なども義務の対象です。
②民間等は認定制度の利用が可能
そのほか、認可外の保育施設や、放課後児童クラブ(学童クラブ)、学習塾、スイミングスクール、ダンス等芸能スクールなどの民間事業者も一定の条件をクリアすれば前科の確認対象となります。
国が設けた「認定制度」に沿い、研修や相談体制の整備などの条件をクリアすることで、前科の有無を確認する対象になります。
制度を利用するには事業者から国に申請すること。
③情報開示は可能
照会後の事業者は、その旨を利用者に開示することができるほか、広告に記載することも可能です。
Q5.確認される性犯罪の対象は?
A. 刑法犯だけでなく、条例違反も含まれます。
確認する性犯罪は強制わいせつ等の刑法犯だけではなく、痴漢や盗撮などの条例違反も含まれます。
ポイントは「犯罪を犯してからの期間」
確認の対象を考える上で重要なポイントは【犯罪を犯してから何年間を対象期間とするか】です。
具体的には以下の通り。
性犯罪歴の確認の対象となる期間は最長で20年。
こられは過去の性犯罪のデータから、再犯に至るまでの期間を考慮して定めたとされています。
Q6.どのような手続きで確認していくのか?
A.申請後、性犯罪歴がなければ「犯罪事実確認書」を交付。犯罪歴があれば本人の判断による。
手続きは以下の通り。
まず事業者がこども家庭庁に申請しますが、その際に、業務に就く予定の人が戸籍情報などの必要書類を提出するなど、本人も関わる形とします。
①犯罪歴がなければ交付書を受け取り終了
照会した結果性犯罪歴がなければ、「犯罪事実確認書」がそのまま事業者に交付され、手続き終了です。
②犯罪歴があった場合は、先に本人通知
一方、犯罪歴があった場合は、まずこども家庭庁から本人に事前に通知が行きます。
通知から2週間以内であれば、本人より訂正の請求が可能です。
しかし、通知を受けて本人が内定を辞退した場合、事業者には犯罪歴が通知されることなく、申請が却下されます。
③現職者も対象!情報漏洩した事業者には罰則も
この手続きの対象は新規採用者だけではなく、現職者も対象。
現職の従事者に犯罪歴が確認された場合、子どもに接触しない業務に配置転換するなどの対応が求められます。
また事業者には情報を適正に管理する義務が課され、情報を漏えいした場合には罰則が設けられるため、取り扱いに十分な注意が必要です。
Q7.日本で初の制度。導入の経緯は?
A.2020年の男性シッター逮捕が契機に
日本で制度導入を求める声が高まったのは、2020年にベビーシッター仲介サービスを通して派遣された男性シッター2人が、保育中の子どもへの強制わいせつ容疑などで相次いで逮捕されたのがきっかけ。
うち一人は男児20人に性的暴力やわいせつ行為を繰り返していたとして懲役20年の実刑判決が出ています。
省庁ごとの対策では不十分
子どもを性犯罪や性暴力から守るための対策は、これまで教育現場と保育現場、それぞれを所管する省庁ごとに進められてきましたが、省庁ごとの対策では不十分だという指摘が度々あがっていた現状があります。
また、子どもと関わる仕事に就く際に性犯罪歴を確認する仕組みが必要だと訴える声の高まりもあり、2023年4月より新設されたこども家庭庁による「日本版DBS」の策定が進められました。
Q8.「日本版DBS」課題は?
A. 加害者の人権保護、対象職業の範囲、対象性犯罪の範囲、データベースの情報掲載期間の4点が問題とされています。
「日本版DBS」の課題として現在、専門家や各種メディアで報道されている課題・問題点として、次の4つが挙げられています。
①加害者と子ども。人権と権利のバランスを保つには?
日本版DBSの制度設計の課題について、性犯罪で摘発され刑を終えた大人の人権と、子どもが守られる権利とのバランスをどこに置くのかが課題となっています。
更に「犯歴」という非常にセンシティブな個人情報の取り扱いを安全に行うには多大なコストもかかるという問題もあります。
②対象の職業をどこに設定するか?
「子どもと関わる職業」は、国家資格や免許が必要な保育士や教員以外にも、ベビーシッターや塾講師、スポーツクラブ指導者など多岐にわたります。
対象を広げれば規制効果は高まりますが、憲法の職業選択の自由に触れるとの指摘も。
③「有罪」だけで十分か?
子どもへの性犯罪はそもそも発覚しにくい上、子どもの訴えも正しく取り合ってもらえず事件になりにくいと言います。
つまり、明るみに出るのは「氷山の一角」。
大部分は内々の処理や示談で終わるケースもあるそうです。
刑事裁判の有罪事件だけか、起訴されなかったが捜査対象となった前歴や行政処分歴も含むのかなど、データベースにどの範囲まで掲載するのかは重要なポイントとなります。
④データベースへの情報掲載期間は?
データベースへの情報掲載期間も議論となりそうです。
小児性犯罪は再犯率が高く、治療にも長い時間がかかるため、犯罪歴の照会期間については、もっと延ばすべきだという意見があります。
一方で、更生や社会復帰の観点から一定期間の期限に設定することは必要だという指摘も。
Q9.今後の見通しは?
A.これからは、実行性を確保する議論へ。
2年余りの議論を経てまとまった法案ですが、2024年4月19日に閣議決定し、国会に提出されました。
今後は、実効性を確保するための議論が国会で続けられることになります。
成長の過程で長く心身への影響が続く性被害は本当に深刻です。
議論が「ズレる」ことなく、明確な目的意識と「根拠」に基づいた建設的な議論が成されることを願います。
夢の宝箱について
私たちは社会的養護が必要な若者(以下、ユース)を支援するNPO法人です。
①「継続した」支援が必要な若者
ユースたちは児童福祉法のもと原則として18歳になると自立が求められますが、同時に以下の様な問題に直面することが多いです。
これらの問題から施設を退所したあとに孤立するユースも多く、彼らへの継続した支援が必要となっています。
②目下の課題は相談できる人と場所の確保
特に目下の課題は相談員の拡充と相談所の増設です。
相談員を増やすことで一人一人に対する細やかな支援を実現し、自立に向けた大きな改善が見込めます。
そこからさらに首都圏のみならず、地方へも相談所・居場所の設置することで社会に対する大きな呼びかけとより多くの若者を守ることにつながります。
③寄付や寄贈、ボランティアに興味がある方へ
現在、寄付や寄贈、ボランティアを募集中です。
未来ある若者たちへ少しでも思いをお持ちの方がいらっしゃれば、下のリンクよりお問い合わせ、ご協力のほど、どうぞ宜しくお願いいたします!
文:中村愛(https://twitter.com/love_chanchanch)
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