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初恋相手の婚約報告は涙が出るほどに喜べた。

私の人生で一番長い恋は初恋だったに違いない。

何故この事を書こうと思ったかと言うと、
その相手が先日婚約し、結婚式にもご招待下さると連絡が来たからだ。

初めに言っておく。
心からのおめでとうを叫ぶよ。
一生、幸せにして貰ってね。



私の初恋は「恋に落ちてはいけない相手」だった。


あいつと私の出会いは高校3年の冬。
大学入学前オリエンテーションの同じ教室、たまたま同じ班だった。

女子高に通い、男子慣れしていない私の壁を
軽く、本当に軽く飛び越えてくるほどに騒がしい奴だった。

授業内容は全く覚えていないが
「こいつ、彼女居るから調子乗ってんねん」と友人A君が茶化していて

その時に、この人とは恋をしてはいけないと悟った事は明確に覚えている。

そう。
脳内では分かっていた。
恋をしていけない相手を好きになったことを。



入学して一番初めに「お前」と呼んできたのはあいつだった。

寒い時に上着を貸してくれたのもあいつだったし、
二人乗りを初めてしたのも、あいつの運転だった。

ツッコミを入れるタイミングが同じ過ぎたのもあいつだった。

あいつを好いてる女子から嫌がらせを受けた時も、きちんと謝ってきた。

困った時にいつも元気ないやん、と気遣ってきたのもあいつだった。

深夜3時にサッカーをしたのもあいつとだった。

郷ひろみさんの「言えないよ」を校門前で歌ったのもあいつとだった。


ほしの数程ある。思い出なんて。



ただ、周りの友達もあいつも、
私があいつの事を好きなことくらい、当然の事のように知っていた。

見ていたら分かるらしい。
それ程に、目で追っていたのだと思う。


けれど私は言わなかった。
どうしても好きとは言えなかった。




あいつを好きになって1年以上が経った夏の頃、

「男女の友情はあると思うか?」
そう尋ねてきたイケメン男子が居た。

「あると思う」
そう答えた私に、彼は言った。

「俺はないと思う。限りなく無いと思う」


衝撃的な話だったが、そのおかげで目が覚めた。


恋人じゃなくて、一生の友達でいて欲しい。

それがあいつとの関係性の願いだ、と気づいた。



もう一度言う。
私の初恋は長かった。

およそ1年と半年だが、
好きな相手を次の日に「ただの異性の友達」として見る事に慣れるまで半年かかった。

つまり、私の初恋は2年続いた。


こんなにも好きで、気が合って、話しやすくて、楽しくて、最高のあいつを

彼氏では無く、一生の友達にしたい、と思った時は、心が押しつぶされそうになる程に苦しかった。

顔を見れば、いつも好きだと思えた。

あの時は、この決断が吉なのか凶なのかさえも分からなかった。

大学を卒業したら離れてしまうんじゃないかとも思った。


それでも私は言わなかった。
絶対に言わなかった。

違う人を無理やり好きになろうと決め、対して好きでもない相手とデートを繰り返した。



あの初恋の2年は、私にとって決して無駄では無い。

人を好きになる意味を、歓びを、幸せを教えてくれたのは、
紛れもなくあいつだった。


心から感謝をしている。


そして、心から、
高校3年の冬から出会っていて良かったと思えている。



今の私たちの関係は
私からの一方通行の淡く儚い恋心が叶う事も、伝える事もなく、

「友達」のポジションに持っていき、

お互いが切磋琢磨し、尊重し合える、そんな関係がもう8年近く続いている。



何かあれば年に数回会い、馬鹿笑い、
相変わらずタイミングがバッチリ合う、気の合う友達になれた。



あの時は分からなかった。

この運命が吉か凶かなんて。

でも今ならハッキリと分かる。


あの時、彼を恋人では無く一生の友達になる様に仕向けた事は
紛れもなく私の財産になるだろう。



ねえ、数年前のわたし。
あいつとの縁は恋愛沙汰で切れる事なく、
手を重ねる事は無かったけれど、
隣で今も歩いてくれる大切な友達になってるよ。
あなたの選択は間違っていなかったよ。




チョコレートに牛乳



婚約おめでとう。

お相手は会った事ないけど、貴方がそこまで惚れる人なら素敵な方なんだろうね。

本当に涙が出るほどに嬉しいよ。

幸せになって下さい。



「誰よりもキミが近すぎて、好きだなんて言えない」関係を、
見て見ぬふりしてくれた事、感謝してる。

またいつか、校門前で、他の誰かを想いながら歌おうね。



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