醒めたつらして歩く
「ちょっと歩いてくる」
早めの夕飯が終わり、夫にそう告げてウォーキングに出かけた。
今日は全国的に気温が高かったようで、暗くなってもいつもみたいに寒くない。
半袖のTシャツを着て外に出る。
グッズTだ。
タイマースタート!
月はない。
星がひとつ光ってる。
いつものコース
お散歩犬とすれ違う。
柴犬にトイプー、耳の垂れたこの子は何て言う犬だろう?
みなそれぞれに、ピカピカ光る首輪をつけて。
チャッチャッチャッ
ヘスヘスヘス
爪の音と息の音。
夜の散歩、楽しいね。
人生おそらく半分は過ぎただろうに、未だ、いや今頃になって、妬み嫉みの気持ちが湧いてきて、日々、なんだかわからない卑屈なココロと戦っている。
なんだかわからないって言うのは嘘だ。わかってる。
自分にこんな卑屈さがあったなんて。
やだなぁ。
小さいなぁ。
でも切実なんだ実際は。
はぁ、しょうもない。
いいから歩け。
こんな気分乗り越えろ。
大丈夫。
まだまだ未来は明るいはずだ。
きっと道は拓ける。
手立てはまだある。
まずは気持ちだ。
気持ちが変わればきっと拓ける。
チャッチャッチャッ
ヘスヘスヘス
わたしもちょっと走ってみようか。
軽くジョギングに変えてみる。
なんだか部活を思い出す。
きつかったなぁ。
高校は山の上にあったから、部活のマラソンコースは上り下りの坂道だった。坂道3キロコース。
あれ? 5キロだったっけ。
ラストの心臓破りの坂、きつかったなぁ。
生涯で、あんなに走ることもうないよなぁ。
そんなことを思ってるとタイマーが鳴った。
ウォーキングに戻って息を整える。
たった20分。
人って短い時間でいろんなことを考えるんだなぁ。
瞬間瞬間、気持ちって忙しいものだ。
家の明かりが見えてきた。
「ただいまー」
居間をのぞくと、夫は出た時のままの姿勢でボーっとテレビを観ていた。
たぶん1ミリも動いてないだろう。
「今日は暑いねぇ、パパ」
ペプシコーラをコップに入れて、レモンのスライスを浮かべて飲んだ。
「ねぇ、パパ」
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