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声が出なくなって思ったこと

2週間前、唐突に声が出なくなった。
出なくなったことに関しては下の記事に書いているのだけど、今回は出なくなって思ったことを書きたい。

今はある程度、回復して、声が出るようになった。まだ本調子ではないものの、日常生活に支障はなさそうだ。

声が出なかった2週間。いろんなことがあって、とても大変だった。
声が出ないというのはどういうことなのか、読んでくれている人も考えてくれると嬉しい。


声が出ない「だけ」

わたしは声が出なくなって、最初は「声が出ないだけだ」と思い、特に何も気にしていなかった。
買い物はパートナーが行ってくれるし、わたしは家にいるので困ることがなかったのだ。

声がでないだけで、頑張れば筆談アプリや文章を読んでくれるアプリで意思疎通はできる。
それに、すぐに治るだろうと考えていた。深刻なこととは捉えず、「しばらくの間、少し我慢すればいい」と考えて、楽観視する。
今思えば、そういう考え方でないと、しんどかったのかもしれない。

「声を失うというのは、どういうことか」なんて考えもしなかった。

パートナーが倒れる

楽観視している自分に新たな試練がやってきた。それは、パートナーが過労によって倒れたことだ。

何か体調が悪そうな日があり、「大丈夫かな」と思っていたら、夜に気絶してしまったのだ。
「最近、眠れないと言っていたし、このまま寝かせよう」
そう考えたわたしは、しばらくパートナーの様子を見てから眠った。

次の日から、パートナーは調子がおかしくなり、「これはまずい」と思い、知り合いのお医者様に診てもらうことに。

そこで言われたのは、「2週間は絶対安静」だった。

そうして、わたしは2人分の家事をひとりで回しながら、出ない声と過ごすことになる。もちろん、その時でさえ、「なんとかなるやろう」と思っていた。

ひとつめの壁-お買い物-

パートナーが倒れたのだから、買い物もひとりで行く。そして、最初の壁にぶつかった。それはレジでの出来事。

「支払い方法はどうされますか?」

わたしは急なことに、どうすればいいのか分からなくなった。あたふたしているわたしに、何度も「お支払い方法は?」ときいてくる店員。

とりあえずお札を見せることで、現金支払いであることを伝えた。

その他にも、「袋要りますか?」「ポイントカードはお持ちですか?」「アプリはありますか?」と、実はレジではいろいろなことをきかれる。

その度に、首を横に振ってみたり、手を振ってみたりした。しかし、中にはこちらのことを見ずにレジ対応する人もいて、そういう人には何度も首を振ることになる。

とにかく、買い物がしんどくなってしまった。

ふたつめの壁-パートナーとの会話-

わたしはパートナーと二人暮らし。そのため、話す相手はパートナーしかいなかった。
話す時は、アプリを駆使して会話をする。しかし、ここでも高い壁にぶつかった。

パートナーが話してきたことに返事をするだけで、かなりの時間がかかる。スマホで文章を打ち、それを見せるか、アプリで読み上げるかで会話するのだが、とにかく打つ時間が長い。長く感じる。

パッと返事ができないし、話の流れで言えなくなることも、たくさん。すごいたくさん。

更に早く打ちたいが故に要約した文章になりがちで、細かいニュアンスまで伝えることができないということが起こった。

簡単な意思疎通しかできないのだ。
それと、咄嗟に表情などで反応しても、それがどんなことなのか全く伝わらない。
なので、またスマホを持ってきて、アプリを開いて、文字を打って、やっと言える。

そんな感じなので、本当に大変だった。
細かいニュアンスが伝えられなくて、コミュニケーションがとれなくなったときは、辛過ぎて泣いたくらいだ。

健常者中心主義

これらの体験を通して感じたのは、世の中が如何に健常者中心であるかということでした。

レジに指さして何かを伝えられる紙を置いてくれれば、わたしはあたふたせずに、現金支払いであることを伝えられたはずです。

「『声が出ない』ということを伝える何か」を示すことができたとしても、それでは問われていることに答えられません。

声が出ない人がいるということを前提にして、いろんなことを作っていかないと、喋れない人にとってはものすごいストレスになります。

「こういったことを常に自分は押し付けているのだ」と改めて認識しました。

聞こえないと、もっとストレスがあるんじゃないかと思います。
本当にどうやって買い物してるんだろう?って感じました。

自分のことを顧みる時間

この声が出ない2週間は、自分のことを顧みる時間だったと思います。

わたしは障害者ではありますが、生活する上でかなりのストレスや壁は感じません。
感じないから何もしない。しようという思いにさえ、至らない。

これが、わたしの持つ権力だと思いました。

これからは買い物さえも、ハードルのある人がいる可能性を、頭に置いておきたいと思います。
自分のように、話せて、聞こえて、歩ける人ばかりではないと。

わたしは2週間だけでしたが、かなりのストレスを感じ、これがずっと続いたら生きていけないと思いました。それくらい、大変だったのです。

少しでも、この体験を生かせるようにしなければならないなと考えます。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

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