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幻のマヨネーズ

じやがいもをつぶす私とキュウリ切る母が歌つてゐる「夏は来ぬ」/とがしゆみこ #短歌  母にポテトサラダのレシピを教わって、一緒に作りました。祖母も好きだったという歌を二人で口ずさみながら。野菜とポテトをたっぷりのマヨネーズで和えるポテトサラダは我が家の定番です。
#食卓にサラダがあると

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 2023年8月上旬、X(旧Twitter)上のキャンペーンに応募したときの文面です。8月31日(やさいの日)にちなんで、キューピーの公式アカウントがサラダにまつわるエピソードを募集したもので、A賞15名はエピソードをイラスト化され、複製原画がプレゼントされる、B賞100名にはキューピー商品とグッズの詰め合わせが当たるということでした。抽選だからエピソードの内容はあまり関係ないのかもしれませんが、わたしは張り切って短歌つきのエピソードを綴りました。

じやがいもをつぶす私とキュウリ切る母が歌つてゐる「夏は来ぬ」/冨樫由美子 

「NHK短歌」2016年4月号


 出典に記した通り、この短歌はもともとNHK短歌の佐佐木幸綱さん選、題『サラダ』の回で佳作をいただいたものです。

 ポテトサラダくらいひとりで作ったら? とか、「夏は来ぬ」の作詞者である佐佐木信綱さんを祖父にもつ選者にこれを送るあざとさよ、とかツッコミどころ満載の一首ではありますが、気に入っています。
 母にポテトサラダの作り方を教わったのは事実ですし、「夏は来ぬ」が好きなのも事実。祖母までエピソードに登場させたのは、ちょっと盛っています。でも、古き良き素敵な歌ですから、祖母が口ずさんでいたとしても不思議はありません。

卯の花の、匂う垣根に
時鳥ほととぎす、早も来鳴きて
忍音しのびねもらす、夏は来ぬ

佐佐木信綱「夏は来ぬ」

 さて、8月24日、キューピー公式さんからDMが来ました。B賞当選です!商品とグッズの詰め合わせです。
 キューピーといえば、マヨネーズ。そこで私はさっそく家族や友だちやフォロワーさんに自慢しました。
「マヨネーズが当たったの!」

 ところが、プレゼントはなかなか送られて来ませんでした。
「母さん、僕のあのマヨネーズ、どうしたんでせうね?」
という毎日が1か月以上続きました。家では、わたしがマヨネーズマヨネーズうるさいのでマヨネーズの話題は禁止になりました。

 そして、9月27日。まちにまったキューピーからの小包が届きました。
「マヨネーズが来たよ!」
 そう宣言して箱を開け、中をあらためると、入っていたのは、
〇ドレッシング2本
〇タルタルソース
〇ハンドタオル2枚
〇トートバッグ
 でした。そう、マヨネーズはなかったのでした。
 いいのです。マヨネーズじゃなくても、充分うれしいのです。
 さっそくサラダにかけた黒酢たまねぎのドレッシングは、とても美味しかったですし、トートバッグは家の中で積読を持ち運ぶのにうってつけです。

キューピーのトートバッグに詰められた本たち

 ただマヨネーズは、マヨネーズは幻だったのでした。

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