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「めんたい世界旅行 Vol.1@Paris」潜入レポート (パリ節約自炊生活番外編)

ある日突然、Facebookに飛び込んできた謎のイベント、それが「めんたい世界旅行 Vol.1@Paris」でした。

めんたいが…? 世界旅行…? パリで…?

Facebookイベントに「参加」を押せばOK、事前予約は不要、という不思議なイベントでしたが、単純な好奇心と複雑な明太欠乏禁断症状により、指定されたレストランに行ってみることにしました。

◆めんたいの世界旅行ってなに?

会場に着いてからやっと解ったのですが、このイベントは「博多辛子めんたい協同組合」の皆さんが仕掛けたもので、パリで開店3ヶ月目の和牛レストラン「ÔYA Paris」で開催されたものでした。

店名:ÔYA Paris
住所:24 galerie Montmartre, 75002 paris

食事・飲み物・お土産・Tシャツ付きで一人38€(約4,870円)と、パリでは大変良心的な料金設定、しかも奇跡の飲み放題!ということで、大変満足度の高いイベントでした。

戴いたTシャツがこちら。大方の予想に反する水色(笑)
ちなみに書かれているメッセージは、直訳ですが以下の通り。博多辛子めんたい協同組合さんの気合を感じます。

"私達は明太子組合です。
 私たちはすべてのフランス人に贈るために来ました"

組合の方にお話を伺ったところ、今回いらっしゃたのは明太子製造企業の社長さんや副社長さんだそうで、共通しているのは2代目だということ。「親の代は会社同士の仲がとても悪かったけど、自分たちの代は違う。いつか何かやりたいねと言いながら、年に一回ハワイかタイでゴルフをやるだけの組合活動だったけど、今の組合長が旗を掲げてくれて今回初めて大きなイベントを開催することができた」と、組合員であり明太製造会社の社長さんは活き活きと話してくださいました。

◆めくるめくめんたいの世界

九州の生んだ美食であり、日本が世界に誇る宝であるところの明太子ですが、HACCPの規定により実は欧州への輸入は限定的で、今回このイベントを開催するにも様々な苦労があったそうです。救援物資の“めんたい粉”(乾燥明太)で何とか欲望を抑えていた私としては、生の明太子が食べられるなんて口から龍が立ち上る程に至福な異常事態です。

上の写真は明太クリームコロッケ、明太子もクリームコロッケもフランスではお目に掛からないので、揚げたてトロトロの明太クリームとサクサクの衣が大変美味でした。

他にも沢山の明太子的美食が提供されましたが、その中でもほっぺた落ちる逸品がこちら!和牛レストラン「ÔYA Paris」さんのスペシャリテ、和牛の炙り寿司に明太子乗っけちゃった、いわゆる、 “ようこそ此処へ、くっくくっく、私がプリン体♪” なメニューです。しかし、半年ぶりに戴いたサシの入った和牛は悪魔の美味しさ…噛めば噛むほど旨味がジュワッと口の仲に広がり、脳天直撃セガサターンでした。

◆日本料理・和食が世界に出ていくための課題

前述の通り、明太子はHACCPの規定により欧州へ輸出するのは限定的担ってしまいます。水産品を欧州に輸出するには、水産庁から交付される「危険度分析による衛生管理(HACCP)」の認証を取得する必要がありますが、明太子や鰹節など和食に不可欠な食品の一部は、原材料や製法ゆえに認証を受けにくく、これまで欧州への輸出は限定的だったようです。逆に、醤油などの調味料が欧州で簡単に安価で手に入るのは、このHACCPの基準を満たした工場が欧州近郊にあり、そこで製造しているという事です。

今回の会場は和牛レストラン「ÔYA Paris」ですが、実は和牛の欧州への輸出が始まったのは2014年の事で、たったの4年前です。こちらはHACCPとは異なり欧州内の農業保護による規制のようですが、和牛ですらつい最近解禁になったという事実に、日本料理・和食が世界に出ていくための課題を実感します。

以前ご紹介したように、“欧州寿司店”はパリにも沢山あり、その存在は日本料理・和食への高い需要を反映しています。

しかしこれらの“欧州寿司店”が必ずしも日本の食材を使っているかというとそんな事はなく、より安い他国産の原材料を使用して日本料理・和食を提供しているわけです。

需要があるのに供給できない。この状況は大変なジレンマを日本の食品製造企業に生んでいる事だと思います。交渉や調整には多大な時間が掛かると思いますが、それでも日本料理・和食の食材が、いつの日か気軽に欧州各国でも楽しめる日が来ればいいなと思います。

◆日本企業・組合が世界に出ていくための課題

今回のイベントは50名以上の方が集まり、熱気は相当なものでした。しかし、私が言える立場ではないのですが、9割が在仏の日本人、残り1割は日本に居た事があるか配偶者であるフランス人でした。

トップ画像を振り返ると、イベント告知事態が日本語です。会場も日本料理店、行ってみれば9割が日本人、乾杯の挨拶も明太子協会の説明も、そのすべてが日本語でした。もし興味を持って来てくれたフランス人がいたとして、大変な疎外感を覚えていた事と推察します。

これもあまり知られていないと思いますが、パリ市在住の日本人は登録されているだけで1.5万人、1年未満の短期滞在を含めれば3万人の在パリ日本人がいると言われています。その状況で、フランスで日本食材のイベント告知を日本語で行う事は、すなわち在仏日本人向けのイベントになるという事です。

以前伺った欧州最大級の国際総合食品見本市“SIAL”の日本ブースや、日仏政府共同開催で行われているJaponisme2018関連の各種イベントは、主催団体の意向と(フランス人に日本の文化を知ってもらうという)明確な目的意識、そして仕事のできる広告代理店により、フランス人をターゲットにしたフランス語によるフランスメディアを活用した告知活動が行われていました。

しかし今回のイベント、繰り返しますが、日本語で告知され、日本語で応募し、日本料理店で開催され、日本語で挨拶や説明が行われたわけです。在仏の日本人が集まるのが必然です。

誤解されない様に言っておくと、この様な海外告知イベントは、やらないよりはやったほうが300倍ましだと思います。同じ組合費用を使うなら、ハワイかタイでゴルフするより、日本料理・和食未開の地で認知拡大のイベントをする事は、比べ物にならないほどの価値があると思います。そういう意味で、二代目で組織された多辛子めんたい協同組合さんの今回の勇気・決断・行動・そして経験は、仲が悪かった先代達とは比べ物にならないほど有益なものとなるはずです。

しかし、思い出していただきたいのは、彼らがTシャツにその想いを託した、「私達は明太子組合です。私たちはすべてのフランス人に贈るために来ました」というメッセージです。本来彼らは「めんたい世界旅行 Vol.1@Paris」としてフランス人に明太子を知って欲しかったのではないでしょうか。

やる事が目的であり、実績を作る事に目的があるのであれば、そしてその為のお金の使い方をしていると組合員が納得しているのであれば、それは内部の話なので他者が関与するところではありません。しかし、もし彼らの目的が現地の人に日本の食材を知ってもらうという事であったのならば、マーケティングの仕方は変わってきた事でしょう。この様な告知の為の費用は(個人的な経験上)有限なので、同じ投資をするのであれば、めんたい世界旅行Vol.2の時には、「現地の日本人ゼロ人」を目標に頑張っていただきたいと、切に願うのでした。

最後になりましたが、明太子が食べられる日本という国は、いろいろあるけどとても良い国だなぁと心から実感しました。明太子最高です。なにあの魚卵、超美味しい!

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