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自分のまま、大人になることー「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」

自分の部屋で、SNSの世界に浸る主人公・ケイラ。その姿は自分の中学生時代の姿と重なります。mixiでクラスメイトのブログを読んだり、隣の学校にいる気になる人のプロフィールを見つけては喜んだり。SNSはまさに、青春の一部でした。

そんな日々を赤裸々に描く「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」は、誰もが過ごした青春時代の1ページを切り取った、宝物のような作品です。

エイスヴィジュアル新

メール、SNS、またLINEなどのアプリの登場は、コミュニケーション方法から人間関係の築き方までを、劇的に変えたと言えます。

主人公のケイラのように、リアルではあまり友達がいないけれど、SNSではクラスメイトと繋がっていて、いいねと思ってなくても「♡」を押してみたりする。そんな時代を生きる彼らにとって、実生活で強い繋がりを築くことは難しいことなのだと感じました。
引っ込み思案なケイラはそんな中でも、果敢に友達を作ろうと行動します。

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本作は「SNS世代の映画」ではありますが、どの時代にも通ずる思春期真っ盛りの「8th Grade (中学3年生)」の心境が恥ずかしくなるほどリアルに描かれているので、どの世代の方もあの頃に戻って楽しめる映画だと思います。


ありのままの自分でいれば、
自分が必要とする人に出会える

印象的だった登場人物のひとりが、ケイラのクラスメイトのいとこ、ゲイブでした。
登場した時からとてもユニークな彼は、一風変わってはいるものの、ケイラと似た視点で物事を捉えていることがわかります。「クラスにこんな男の子いたな」と懐かしい気持ちにさせてくれる人物でした。

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誰しも人気者と仲良くなりたいものですが、自分の性格や感性を「面白い」と言ってくれる人こそが、自分にとって必要な人。「自分らしくいること」は、まさに彼女に大切な出会いをもたらすことになります。


また、心配性で不器用ながらケイラのことを想うお父さんの存在も、この作品にとって大きかったです。

「おまえのことを心配するのはもうとっくに辞めた」
「自信をなくしても、お前を見ているだけで勇気が湧いてくるんだ」

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人間関係がうまくいかないことに傷つき、自信を失ってしまったケイラに、お父さんはこんな言葉を投げかけます。静かに見守り、助けを求められたら真っ先に飛んで行ってあげること。それが信頼関係を気づく秘訣なのだと、ケイラのお父さんが気づかせてくれました。


自分でありながら、
大人への一歩を踏み出す

終盤に登場する「未来の自分へメッセージ」に映る彼女は、作品序盤の彼女とほとんど変わっていませんでした。それを見て、大人になることと、自分自身を変えることはきっと違うことなのだと気づきました。

ケイラは、率直に人に意見したり、自から人間関係を築けるようになったことで、大人に一歩近づきました。しかし、彼女の持ち味や個性はそのまま残っています。

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大人へと成長し、自分をアップデートすることはもちろん必要ですが、その過程で個性を失うのはもったいないことです。
自分らしさを保ちながら生きていくのは難しいことですが、思春期という一波を乗り越えたケイラなら、きっと素敵な大人になっていけるのだと思います。

何年先も、合言葉の「グッチー」は健在であってほしいですね。


監督・脚本:ボー・バーナム『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(出演)
出演:エルシー・フィッシャー / ジョシュ・ハミルトン / エミリー・ロビンソン / ジェイク・ライアン
配給:トランスフォーマー
© 2018 A24 DISTRIBUTION, LLC

 ヒューマントラストシネマ有楽町、シネクイントほか全国の映画館で公開されています。

この記事は、映画メディア「OLIVE」にも掲載しています。
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