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ひとり暮らし、キライ。

アラームはかけない。大体同じくらいの時間に目が覚めるから。

何に起こされるわけでもなく目を覚まし、片目でカーテンを見つめる。

まだ暗かったらもう一度目を瞑り、ぼんやりと明るかったらスマホで時間を確認する。

明るかった場合は大体、7時から8時の間。

どこに行くにしても、その時間に起きれば間に合う。

眠い目をこすりながら、SNSをさらっと徘徊する。

「おはよう」と言う相手はいないので、もう既に日が傾き始めている日本にいる恋人に、起床を報告する。

ブルーライトで脳が覚醒されたら、ようやく布団から起き上がり、リビングのカーテンを開ける。

カーテンなんて開いてりゃいいけど、一応ちゃんとタッセルを留めて、窓を開ける。爽やかな風が、部屋に吹き込む。

ケトルのスイッチを入れ、その間にトイレや洗顔を済ませる。

お湯が沸けたら、Eximo Blueのジャズを流し、小さいスプーンに山盛り3杯のコーヒー豆に、お湯を注ぐ。

飲みたいから淹れているのか、ルーティンワークとして淹れているのか、もはやわからないが、コーヒーは好きだ。

本当は、「お砂糖とミルク要る?」と聞きたい。

コーヒーを飲む、正しい速度がわからない。

ひとりの朝は何も食べないから、熱さを我慢しながらグイグイ飲むときもあれば、少し飲んで家事をし、終わってから常温の残りを一気飲みすることもある。

「今日は天気が良いから洗濯物が乾きそうだね」などと言いながら飲むのなら、速度なんて気にすることはないのに。

手作りの布のコーヒーフィルターを洗い、身支度をする。

どんな日でも、自分のために、口紅だけは塗る。

朝から出ずっぱりの日もあれば、数時間だけ約束がある日もある。

予定があるのに雨で潰れる日もあれば、一日家で過ごす日もある。

どんなときも、家は私だけの空間なので、毎日敷地内にいてくれる警備員に、「行ってらっしゃい」と「お帰り」を覚えてもらった。

最低限、ちゃんと良質なご飯を食べるために、インスタグラムでご飯アカウントをやっている。

自分の料理力を自慢する目的も少なからずあるが、本来の目的は食生活を律するためと、大切な人たちに健康であることを報告するためである。

「いいね!」はつくが、食べるときはひとり。

一応、「いただきます」と手を合わせ、「美味しいなあ」と心の中でつぶやきながら、黙々と食べる。

「美味しいね!」「これ何が入ってるの?」「今日も飲んじゃう?」なんて会話が恋しい。

食べてる最中に電気が消えて真っ暗闇になることもあれば、洗い物をしようとしたら水が止まることもある。

もうそんなことじゃ動揺することもなく、ランタンを灯し、静かに復旧を待つ。

夕飯を終えたらお香を焚いて、日記を書いたり、読書をしたり、YouTubeや映画を見たりする。

ルワンダの夜は長く静かなので、大抵22時くらいには布団に入り、朝5時を迎える恋人に「おやすみ」を言うことはなく、電気を消す。

誰かの声を聴いていたくて、何かしらのPodcastを流しながら、人知れず眠りにつく。

そして朝が来る。そんな毎日。


ひとり暮らしを楽しめる人が、心底うらやましい。

確かに楽な面はあるが、別に楽をしたくて生きているわけではない。

多少息苦しくても、ちゃんとしなきゃいけなくても、おならができなくても、そうしたいと思える相手と一緒に生活をしていくほうが断然楽しい。

脱ぎっぱなしの靴下やトイレットペーパーを替えないことに文句を言ったり、一緒にだらけて出前を頼んじゃったり、アイスの食べかけを冷凍庫に戻して怒られたりしたい。

ていねいな暮らしがなんだ。

にぎなかな暮らしのほうがよっぽど良いよ。



ひとり暮らし、キライ。

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