ゆうりんご

ジャンルに縛られずに自由に日記を書きたくて始めました。

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最近の記事

義理の祖母のお葬式に参列した話

夫の父方のおばあさんが亡くなった。 結婚して9年になるが、私は義理の祖母に数えるほどしか会ったことがなかった。 途中で自分たちの海外駐在があり、帰国後すぐにコロナ禍になり会えなくなって、落ち着いた頃には義理の祖母はいつのまにかサービス付き高齢者向け住宅に入居していた。 ご主人は私が夫と結婚した年に亡くなっており、施設に入居するまでずっと未婚の叔父と暮らしていた。 叔父は愉快な人だ。多趣味で遊び仲間が多く、なんというか独自の世界観を持っていて、会いに行くといつも私の知らない話

    • 私の代わりに星が泣いた

      冬になると思い出す夜がある。  第一志望だった大学に合格したあとに親に「お金がないので入学させられない」と言われ入学を辞退、そのあと少しだけ興味のある学部がある大学にやっとこさ入学したものの、やっぱり本当にやりたいことではなく、このままでは時間もお金ももったいないと考え、たった一年で退学した年のことだ。 私は文章を書く勉強をするため、短大の受験を受けることにした。 もともと読書が好きだったし、購読してる雑誌もあり憧れの業界だった。 それに文章力はライターに限らずなにかと社

      • アマチュアホルン吹きがホルンを新調する話【後編】

        管楽器専門店「DAC」でローンの話を聞いた時点で、すでにホルンを購入しないという選択肢は私の中になかった。でもどうしても気にかかることが2つあったのだ。 1つ目は、夫に話を聞いてほしかった。夫に「やめとけば?」と言われて購入を先延ばしにするつもりはなかったので、相談ともちょっと違う。私は舞い上がりながらも、予算と月々の返済金額プランに無理がないことを冷静に判断していた。でもこんなに高い買い物をするのは人生初めてだったので、夫に話すことで自分のなかで整理をつけて決断したかった

        • アマチュアホルン吹きがホルンを新調する話【中編】

          みなさんは大きな金額の買い物を決断する時、何を決定打とされるだろうか。 私はずばり、タイミングである。衝動的だと言われればそうなのであるが、これまでタイミングの良さで物事を決めて後悔したことは今のところ一度もない。 管楽器専門店「DAC」に入店し、ホルンコーナーを一瞥しただけで思わず笑ってしまった。誰かと巡り合うのを待っている、ピカピカのホルンがずらりと並ぶ圧巻のショウケースの上には、「ホルンフェア」と書かれた大弾幕が掲げられているではないか。 あ、これは私今日ホルン買うな

        義理の祖母のお葬式に参列した話

          アマチュアホルン吹きがホルンを新調する話【前編】

          「楽器、値上がりするらしいですよ!」 所属している楽団のパートリーダーが教えてくれた。 今年中に楽器を買おうかな、などとやんわり考えていた矢先にこれである。ホルンはただでさえ高級な金管楽器の部類に入るのに! 日本国内で高いシェアを誇るドイツの老舗メーカー・アレキサンダーは約40万円ほど値上がりする予定。値上がり前の現在、約百伍十萬円也。すでに新車が買えるお値段。 正直今すぐどうこうするつもりもなく、いつでも購入できる準備を整えておこう、くらいの思い付きで、楽器店を訪れてみる

          アマチュアホルン吹きがホルンを新調する話【前編】

          仕事乞食、効率空回り、企画書カロリー制限中

          ひまだ。 とにかく毎日ひまである。 仕事がないのだ。 会社に勤めている以上、労働の対価としてお賃金をいただかなければならない。 なのに私ときたら、とにかくひまなのである。 ひますぎて、隣のデスクにいる先輩に お手伝いできることはないですかと聞いて 仕事を譲っていただく始末だ。 この所業を「仕事乞食」と呼んでいる。 最近中途で入った会社だ。 前任から引き継いだエクセルデータの数々も、全て魔改造し終わってしまった。 前任の方はあまりエクセルの扱いを心得てなかったようだ。 ほぼ

          仕事乞食、効率空回り、企画書カロリー制限中

          SEOライティングが好きなライターなどこの世に存在するのだろうか

          別にSEOライティングはやめるべきだ、などというつもりは毛頭ない。戦略の一つとして有効だから、多くのWEBメディアが利用しているというだけだ。そのメディアが決めたレギュレーションに従って、外注ライターは原稿を作っていく。ライター業は外注なのだから、基本的にクライアントが定めたルールに従い、求められたクオリティの仕事を納品すればいいだけなのだ。 昼間は一般企業で働いている。でもいつ何時どんな苦境に立たされるかわからない、こんなご時世だ。食い扶持ぐらいは稼げるように、WEBライ

          SEOライティングが好きなライターなどこの世に存在するのだろうか

          かわいいと言った君が愛しい【後篇】

           今思い出しても、心の芯が熱くなる。  夫の買い物に付き合ってショッピングモールに足を運んだ時のことだ。オニツカタイガーの公式ショップで靴を見ていた。彼は以前、私が履いていたオニツカの靴を見て「いいなぁそれ」と言っていたので、機会があれば購入を考えていたのだと思う。私もオニツカは大好きなので、彼に似合う靴があるといいと思った。  壁面にディスプレイされたシューズはどれもカラフルで、使い込まれる前のランドセルみたいにピカピカしていて初々しかった。夫はその中の、スポットライト

          かわいいと言った君が愛しい【後篇】

          かわいいと言った君が愛しい【前篇】

           ただ一言「似合ってるね」「素敵な服だね」とスマートに褒めるか、思わないのなら何も言わなくていいのに、なぜ余計な評価を口走るのだろうか。 とにかくこの世の中は、安易に人のファッションや好みに口を出す人が多すぎると思う。  テレビ番組の大変身企画や、唐突に道行く人々のファッションチェックをする帯番組のコーナーも好きじゃない。そもそも今時、テレビの情報などネットニュースで発信されてから何日も遅れて配信される鮮度皆無のものであるため信憑性にかける。  情報とは、鯵と同じくらい鮮

          かわいいと言った君が愛しい【前篇】

          「BooBoo太郎。」にラーメン食べに行くだけの話 後篇

           「えっうそうそ」「そういうこと!?」など意味不明なことを口走り、みっともなくうろたえながら私はぽつんと空いたカウンター席に着いた。夫はなにか口をパクパクさせていたが、マスクをしているので読唇すらできない。いつも冷静な彼が柄にもなく少し慌てていたようで、後に思い出して笑ってしまった。  先述したように、店のシステムを乱すことだけはご法度である。言われた通りに席に座ってみると右隣の客はもうすぐ食べ終わるようだった。つまりなにか、このめくるめくような繁忙の中で、店員は最終的には

          「BooBoo太郎。」にラーメン食べに行くだけの話 後篇

          「BooBoo太郎。」にラーメン食べにいくだけの話 前篇

           7月某日。 「いつ麺の量を伝えるのかを見定めるのがポイントだな」  腹ぺこのお腹をさすりながら夫がぽつりと言った。マスクでくぐもった小さな声だったが、約一時間後には自分の前に提供されるであろう極上の一杯への静かな期待が籠っていた。  今やあまりにも有名な話だが、ラーメン二郎での注文方法には暗黙のルールがある。客は注文をする際、麺の量、野菜の量、にんにくの有無の、最低でもこの三点を指定しなければならない。特に女性が注意しなければならないのは麺の量。さすがは男子大学生に支

          「BooBoo太郎。」にラーメン食べにいくだけの話 前篇

          「BooBoo太郎。」にラーメン食べに行くだけの話 プロローグ

           半世紀も前に開業してから、これまでの常識を超越したその脂の多さ、野菜の量、啜るのも一苦労な大量の太麺、食後に口を開けばテロともとれる強烈なニンニクの匂いで数多の男たちを中毒に陥れ、その後本店で修業をした猛者たちが次々と独立、関東各地で神の一杯を受け継いだ店の誕生にファンは歓喜の涙を流したという。  現在では、リスペクトが強すぎるあまりその味を独学で再現せんと一念発起した元中毒者現信者たちによって、これまでのラーメンに独自の解釈を取り入れて発明した「インスパイア系」というジャ

          「BooBoo太郎。」にラーメン食べに行くだけの話 プロローグ

          快曇日

          くもりの日はいい。大好きだ。 天気とは裏腹に、心はとても軽くて晴れやかだ。 ああ、こんな素晴らしい天気の日を、快曇日と名付けよう。 外を歩いても、アラサーの天敵である直射日光でジリジリ焼かれた挙句、ベッタリと顔に滲み出た脂汗が製作時間約30分を費やしたメイクを無に帰すこともない。 湯気立ち込めるせいろの真上にでもいるのかと思うほど蒸し暑い日もあるが、ホットヨガだと思って健康的なライフスタイルを心掛ける自分を褒め称えよう。新陳代謝も自己肯定感も上がって一石二鳥である。 なんな