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旅先での徒然 ~押し寄せる緑~

母方の祖父は山際に住んでいて、土地を借りて畑を持っていた。
家からそう遠くない事もあって、子供の頃はよく遊びに行ったものだ。

祖父の家に、とはいっても。
もちろん子供は家の中でジッとなんて、していない。

庭から繋がる畑をウロウロしたり、山の畑の周りで探検するのが日常だった。

春にはフキノトウやツクシを集め、ナズナの太鼓を楽しんだ。
初夏には祖母の為にスギナを摘み、ツユクサの青を愛でて。
夏にはカラスノエンドウで豆笛を作り、セミの抜け殻集めに勤しんだ。
秋にはオシロイバナの種を取り、ススキを得意顔で持ち帰った。

虫も植物も自然も、すぐ側にある身近なもので。
草の生い茂った小道を歩き回るだけでも、十分な探検で。


久高島は、そんな子供時代を思い起こさせるような場所だった。

瀬戸内と南国で、植生は異なっていても。
この緑の勢いは、知っている。

あんなにすぐ側にあったのに、今の生活ではもう触れられないもの。
記憶の中の気配が、形を変えてそこにある。

どこか懐かしいこの気配が幸福な気持ちを運んでくる。

コンビニもスーパーもなく、ひどく不便な場所ではあったし。
写真を撮る以外、特に何かをしたという訳でもない。

それでも、楽しい時間だったと思うのは。
このとても濃い、緑の気配のおかげかもしれない。



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