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あなたのゆくさきを

地上波で美女と野獣が放映された週末。
ファインディングネバーランドを観てきました。
上演時間は20分休憩込みで、3時間くらい。
イギリスの劇作家でピーターパンの作者、ジェームズ・マシュー・バリーを主人公に、ピーターパンの物語が生まれるまでをモデルにしたお話です。


*以下、ネタバレを避けたい方はそっと画面を閉じてください。



劇作家のバリは、まわりからの大きな期待や新作を迫られる中で、思うように新しい話を創作できず、息が詰まるような日々を送っていた。
ある日、ケンジントン公園で、夫を亡くしたシルヴィアとその子どもたちと出会い、幼い頃は当たり前だった見える景色すべてが冒険の扉になるようなわくわくするイマジネーションの中での遊びを思い出していく。


濱田めぐみさんのお声は、ずっと憧れ…と言うのも恐れ多いのですが、だいすきで。
歌声だけでなく、台詞のときのお声も。
上品であたたかく、なんだか可愛らしさもあるけど、どこか有無を言わせない圧倒的オーラがある。
理想…(*´人`*)
子どもたちに愛おしく接する深いあたたかさ、夢みる少女のような軽やかな愛らしさ。
本当に、シルヴィアの胸を圧する切なる歌声がすばらしかった…胸骨が共鳴してふるえるよう…泣く…

そして、山崎育三郎さんのお声は、生でお聞きしたのはたぶん初めてかもしれません。
無邪気でイマジネーション豊かで、幼い子どもたちと同じ目線でのふるまいが、育三郎さんの雰囲気によく似合っていました。
加えて、伝統的なお芝居の世界で新しいチャレンジに挑む熱意と、でも確かに多くの哀しみも苦しみも経てきた男性としての深みと色香をもった甘みのある歌声が広がります。

シルヴィアの子どもたちも、みんな可愛らしくて。
末っ子マイケルの愛らしさったら。
でも、お芝居も上手だし、歌もきっちりすてきだし、どんな作品でも思うのですが、子役さんの末恐ろしいことよ…
4人のうち、特に三男ピーターの心の葛藤とバリとこころを通わせてくところに焦点をあてたお話でしたね。
でも、ジョージやジャックも、あ、やっぱりお兄ちゃんなんだなと思わせられたり、ピーターと同じように寂しかったり哀しかったりしたんだよなぁと垣間見えたり。

杜けあきさん演じるシルヴィアの母、デュ・モーリエ夫人は、周囲の好奇の目を気にもとめず娘や孫たちに親しく接するバリをそれこそ厳しく、強く非難しますが、その根底にある娘に対する「どうかしあわせでいてほしい」という気持ちが、ジリジリと伝わってきました。
また、バリの妻、メアリー役の夢咲ねねさんも、一見、自由で想像力豊かなバリのことを理解しきれない見栄張りな女性に見えるんですけど、夫に自分のことをしっかり見て欲しかったという気持ちがどこか見え隠れしてて。
いや、お二人の気持ちもすごいわかるんだよね…
本人らの気持ちはさておき、既婚男性が未亡人とその子どもたち含めて公然と仲良く遊んでたら…そらそうやよ…メアリーはものすごい疎外感だし、モーリエ夫人は娘たちの人生を正面から引き受ける立場に立てない危なっかしい男を母親として退けようとするでしょうし。
それは大人の世界の都合、ということなんでしょうけど。
いや、でも、子どもたちだって、気持ち追いついてなかったよね、実の父親はやっぱり1人だし、大好きなのに亡くなってしまったわけだし。
基本的にバリはずっと子どもたちにとって友人であって、懐いてるとはいえ、そんなにすぐに父親に代わるひとじゃなかったはずだから。
そこをちゃんと描いてくださっててよかった。

バリやシルヴィアも含めて、各々が、自分の価値観や思いの中で、家族や自分を守りたかった、それがどうにも伝わらず、見えず、すれ違ってしまっていた、というようにも見えました。

あと、もう武田真治さんのフック船長よ…好きすぎる笑
支配人と二役でしたね。
公開したてのリトルマーメイドを観たとこだったので、kiss the girlを思い出してしまった( ̄∀ ̄)

ちなみに、個人的なMVPは、もふもふ白い犬(本物)のポルトスです。
うずもれたいーもふもふしたいー




終盤、キラキラと、少女のように輝きながらシルヴィアが旅立つシーンが印象的でした。
古くから、体が限界を迎えた先にある世界を創り出すことで、恐れや哀しみをなぐさめてきました(戒めてもきましたけど)
バリは、亡くなった兄のため、ピーターたちのため、シルヴィアのため、そして、バリ自身のため、そのゆく先を創り出し、まるでピクニックシートを広げるように、ネバーランドの地図を舞台に繰り広げたのだなぁと思いました。

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