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父と子の物語

先日、友人が急遽、どうしても行けなくなってしまったのでミュージカル「ファントム」のチケットを救ってくれないか、ということで、引き受けました。
あまりソワレは行かないのですけど、その日は予定が大丈夫だったので久しぶりに夜の観劇。

私が観たのは、
エリック:加藤和樹さん
クリスティーヌ:真彩希帆さん
フィリップ(シャンドン伯爵):大野拓朗さん
です。

*以下、ネタバレを避けたい方はそっと画面を閉じてください。



はじめに、実は、今回感想を書くこと、誰も訪れないようなネットの辺境であってもそれを表に出すことに、ちょっと躊躇してしまいました。
本当にちょっとした違和感…が私の中で重なってしまったのかなと思います。
口に出してみると、そんなたいしたことでもないんですけどねぇ。
でも、それをうまく表現できる語彙力も記述能力も、ましてや知識もなくて、モヤモヤ〜どうしよう〜って感じで。
もともとちょっと何言ってるかわかんない、説明ド下手タイプの私なので、余計ですね。
エリックの幼さが強調されてる解釈は好きですし、曲も歌声もすてきだし、他にもたくさんの好きポイントがあるのですが。
もともと、ご都合主義も割と平気なくらいですし。
だけど、感想を…と思うと、何だかよくわからないのだけど書きにくい。
観ている私が想像力を掻き立てられるというよりは、ちょっと持て余してしまう感じがところどころにあって、それが違和感になって、冷静に引き戻されてしまうポイントだったのかもしれません。
ただこれは、たまたま観たときの私の気分がそうさせてるだけかもしれない。
題材の大きさと、すでにアンドリュー・ロイド=ウェバー版が浸透している中で、どうしてもその印象が根深くあるからなのかもしれません。

自分でもよくわからないので、とにもかくにも、ほろほろと、拙い言葉をつぎはぎしてみることにしました。
なので、いつも以上にあまり的を得ない、何じゃこりゃ??な感想かと思いますが、ご容赦ください。


エリック(ファントム)は、人とほとんど関わることなく生きてきて、とにかく幼い少年のまま体だけ大きくなったという感じの、よく言えば純粋だけど未熟さが有り余る男性。
加えて、妊娠中に追い詰められた母親が怪しい薬草を摂取してたせいか、醜い顔で生まれ出てしまい、自身の外見に対する強い劣等感と恐怖心から、ひどく怯えていて。
亡くなった母親からしっかり(若干病みを感じるけど)愛されていたので、母性への飢え方が失ったものが恋しくて探し求める感じでした。
自分には与えられたことのない、経験したことのないものを欲して焦がれ求めるのではなく。
エリック役の加藤さん、お声は大人っぽいけど、挙動はしっかり子ども。
歌声の不安定さが、そのままエリックの不安定さを表現しているような。
最初も、見られた!わーっ!ってパニックになって人を殺してしまう彼を思うと、いくらクリスティーヌに恋焦がれた状態とはいえ、カルロッタと対峙するシーンは、もっとカルロッタ様を活用して煽ってやってほしい、それくらい甘さ優しさが出てるし気弱いエリック。
(ただ単に私が、カルロッタがエリックを煽りまくるのが見たいだけかもしれないが)
そして、子役エリックの井伊巧さんの声、すごく美しいと思いました。
あの年頃の声は、本当に胸をうつ色を持っていますね、それをきちんと大切にされてるのがわかりました。

クリスティーヌ役の真彩さんの歌声、本当に最高でした(*´∇`*)
どんどん花開いていく歌声は、聞きごたえ抜群。
真彩さんの持っておられる内側からのオーラというかがすごい強くて、私が勝手に芯と包容力を感じてしまいまして。
エリックの素顔を見たときも、恐れおののきながらも、自分で自分の頬を引っ叩いて震えながら「ほんとごめん‼︎」って言ってくれそうというか笑
仮に逃げ出したとしても、パニックから目が覚めるのも早そうだし、少なくともシャンドン伯爵に素直に手を引かれて逃げるイメージがなく、むしろ手を振り切って「このままの私じゃいけないと思うの!」とヒーロー並みに我が道行こうとするくらいの、そういう演出も観てみたい衝動に駆られました。
マリーキュリーを観たばかりなので、前回の愛希れいかさんのクリスティーヌだと、設定のとおりパニックでどうしていいかわからない、どうしようどうしよう…‼︎わーっっ‼︎な感じがすごく伝わってきそうだなぁと推測したり。
今回は急遽、真彩さんのシングルキャストとなってしまいましたが、saraさんではどんな感じだったのかなぁ、観てみたかったなぁ。
いつかまた是非ですね。

シャンドン伯爵役は、なかなか難しい役だなと思いました。
まずあの短い中で、クリスティーヌに本気にならないといけないの、手練れプレイボーイには難儀じゃなかろうか。
ラウル同様、シャンドン伯爵が魅力的であればあるほど、エリックが引き立つので、プレイボーイが短い見せ場の中でそれを出していくのは大変だなと。
あとは、いっそ清々しいくらい爽やかに軽薄に振り切って、「なんでお前みたいな奴にクリスティーヌとられないかんねん…!」って別方向でエリックを傷めつけるとか(エグい)
なお私は「お前、うちの娘を本気で愛してるんだろうな?(圧)」と父のような気持ちで観てました笑
キスシーンも「今どうしていけると思ったんやお前は(圧)」ってなってました笑笑
座席が遠くて大野さんの細かい表情などがわからなくて、クリスティーヌへの想いが深まる過程が読み取りづらかったのですが、女性の噂の的、浮名を流す今をときめく貴族青年というのがぴったりでした。
真彩クリスティーヌからは、なんとなく上手にかわされてた気はするが…

ちなみに、私は観ていてカルロッタが一番好きだった( ´ ▽ ` )
石田ニコルさん、すごく楽しそうに演じておられました。
他の役はどうしても縛りを感じるんですが、ショレ役の加治さんとも息ぴったりで、一番、好き勝手に思いっきり弾け飛べそうで良い役ですよね。
ファントムのカルロッタは、お金で支配人の座をキャリエールから奪い取ったショレの妻。
ディーヴァの脚光に憧れ、お金の力でついにオペラ座を手に入れた彼女ですが、ただの道楽というより結構本気で望んでたように見えました。
意地悪な立ち位置なんですけど、憎めない。
意地悪だけど、別に悪人じゃないですもんね。
惨殺されようとも、命乞いより「それでもこのオペラ座は私のものよ、死んでも渡さないんだから!」って絶叫してそう。

そして、キャリエール。
岡田さん、好きなのですよね、私(´∀`)
今回、知ってたはずなのについうっかり、あ、岡田さんだったって途中で思い直しました。
いやもうすべてはキャリエールのせいなんですけどね…ほんましっかりせぃ!ですけど…
岡田さんだから感じる弱さとあたたかみがある。
そしてそれは、エリックもしっかり受け継いでますね。
私の違和感のひとつ、キャリエールが既婚であることをあの段階までよく隠せたな、というところ。
何というか…もっと前段階でどこかしらからベラドーヴァの耳に入りそうだから。
既婚者がお針子に手を出すみたいなよくある話だし、当初はまわりもあえて花が咲く噂話の価値はそれほどなかったのではと思います。
ただ、彼女の才能に光が当たってからは違う。
劇場での足の引っ張り合い。
おいしいスキャンダルは、すぐに紙面を飾り、人々は好きなように囀る。
急速に脚光を浴びれば浴びるほど。
まあ耳にしてたけど、本人からはっきり言われて決定打、ということなのかもしれません。
ただそうであれば、その苦悩のかけらか、あるいは盲目的なひとつの狂気を感じさせるものが一瞬でも見たかった。
本当に全く知らなかったなら、よほどいろんな偶然が重なった哀しい奇跡だったのでしょう、そういう悲劇も現実あるし、たぶんそっちなのかな?と理解することにしました。
このキャリエールの回想は、どうしたって彼目線の回想(言い訳)でしかないので、実際どうだったのかはわかりませんが。
ベラドーヴァの表現がダンスメインだったのは、流れの中ですごくアクセントになってて、好きです。

また、アンサンブルの方々も、開演前や客席での演出など、楽しめる場面がつくられていて、それがみなさん肩の力を抜いたような自然な演技で良いなぁと思いました。

あと、ジャン・クロード役の中村翼さんのハリのあるお声が、耳によく残っています。


書きながらいろいろ考えたのですが、私にとっての一番大きな違和感は、この作品がどこを一番伝えたいかが伝わっているようで、実は思うように伝わりづらいのかもしれないというところな気がします。
限られた時間の中で、たくさんやりたいことがあるんだろうなぁというのは、すごく伝わってきました。
いろいろ詰め合わせおもちゃ箱!という作品、私は大好きなんです、けど、やる側もきっとこの作品でそれをすごくやりたいというわけじゃないのではないかなという気配がする。
エリックを形成する中に、クリスティーヌも含め、いろいろな要素が複雑に絡み合っているとは思うのですが、その中で特に何を骨子として肉付けしていくか。
まだその骨子をいろいろと試されている途中なのかなぁという気がしました。
だからこそ、どの方向にも振り切れきれてない、というか。

ひとまずこの作品は、「エリック」という一人の人間の人生をどう描くか、というときに、ラブストーリー風味というより、父と子の物語(あるいは親と子の物語)として観た方が今のところは観やすいのかな?と私は感じました。

うーん…毎度のことながらまとまらないですが、より好き放題かつ散漫な感想になってしまいました、失礼しました( ;∀;)
思ってたより、自分がオペラ座の怪人の物語に思い入れがあるのかもしれないなとは、改めて。

そして、ファントムやクリスティーヌ、きっと歌を歌われる方々は一度は演ってみたいのではと思うのですが、アンドリュー・ロイド=ウェバー版は四季の方々以外でとなると、やはり難しいし、それは仕方ない。
ファントムも、キャストさんに選ばれるのはそれはまあとっても難しいのは想像に難くないのですけど、わずかにでもその役を演る門戸を開いてくれたというか。
曲もすてきですしね。
今後、いろんな方で観れたらいいなぁと、いち観客は思うのでした。


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