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天井桟敷でみた夢

先月末、昼から仕事がお休みだったので、ダ・ポンテの大千穐楽を観に行きました。
私、ライブとかミュージカルで3階席って好きで、ちょこちょこ選ぶんですが、今回、割と前方の真ん中らへんで、新歌舞伎座のサイズ感もあいまってなのかとても観やすく、それだけでも満足でした( ´ ▽ ` )
上演時間は、だいたい3時間いかないくらいでしたかね。

*以下、ネタバレを避けたい方はそっと画面を閉じてください。



モーツァルトの代表的なオペラの台本作家、ロレンツォ・ダ・ポンテを主人公にしたお話。

日本オリジナルミュージカルということをお聞きして、アンジェラアキがミュージカルを手がけたいっていう記事を見かけ、すてきだなぁと心から思ったことをふと思い出したり。
コロナによって突然の暗闇に押し込まれ、ようやく夜明けの明るさを実感し始めた今、いろんな国の舞台がキラキラ輝き始めたような気がしていて、日本オリジナルの新しい作品というのもたくさん生まれたら楽しいなぁ、とか、漠然と。

話がちょっとそれましたが、舌触りの良い言葉を紡いで人の心を巧みに掴みながら、花から花へ飛び移るように世の中を渡っていくロレンツォと、子どものように自らの音楽を生みだすことが何より楽しい天才モーツァルト。
2人の出会いは、それぞれが心に抱えていた鬱屈としたぶ厚い雲を晴らすようなものでした。

海宝さんのジェントルおじいさまが何よりステキすぎて、冒頭から感謝しかなかった、思わず心の中で拝むくらい笑
毎度ながら、本当に良き歌声ですよね。
遠くまで、きちんと観客の心にロレンツォの想いを届けるように歌ってくださっていたなぁと。
お金にも女性にもだらしない、でも心の中に葛藤と痛みを抱えている様が、最近、演っておられたラングドッグの薔薇のペイレをやはり思い出しました。
ペイレのときも思ったのですが、なんででしょう、ものすごいダメ男のはずなのに、どこか上品さとできる男感が…もっとクズさ強めも観てみたいです笑
ただ、あんだけの過去の痛みを抱えていて、フェラレーゼに一目惚れってなかなか唐突で、ちょっとびっくらしてしまいましたが。
そして、もっかい言いますが、やはりおじいさまロレンツォが好きです、なんか可愛い。

人たらしですがどこかつくりもの感のあるロレンツォに比べ、無邪気で天然人たらしなモーツァルト、という感じがあふれ出ていた平間さん。
歌声もぴったりで、にこにこーって、すごく楽しいことしてるときのモーツァルトが可愛くて好き。
泉のように湧く自分の感情を音楽にしちゃうって感じで、本当に天賦の才能ってきっとこういうのだろうなぁと。
あと、途中、パパゲーノとパパゲーナだ!ってなりました(°▽°)
市民も、大人も子どももみんなが楽しめる、ワクワクする新しいオペラ。
自らの心が浮き立つような音楽を、どこまでも求めたのだろうなぁと思わせられる平間さんのモーツァルトでした。

今回観ていて個人的に一番印象深かったのが、サリエリ役の相葉裕樹さん。
確か以前、アナスタシアのディミトリで拝見したのですが、そのときよりさらに歌声がしっかり深まっておられていて、聞いていてなんだかウキウキしてしまいました(´∀`)
改めて、先が見えなくて思わず目指す先を見失ないそうな中でも、舞台に立つ方々は前を向いてひとつひとつ積み重ねて来られてたんだよなぁと。八十田勇一さんの陛下も大好き。
コメディタッチのヨーゼフ2世、本当に最期の最期、瞬間的にピリっと空気が引き締まるのがすごい。
なので、サリエリとヨーゼフ2世の心のうちも、もう少し丁寧に描いていただきたかったなぁと、我儘にも思ったり。

ロレンツォの心を締めつける思い出のナンシーと、数々の痛みをやんわり解きほぐしたオルソラの2役を担う田村芽実さんが、すごく好きです。
おばあちゃまオルソラ、めっちゃ可愛い。
ナンシーの歌声も、すっと心の隙間に入ってくるような。

青野紗穂さんの力強さのある歌声、ふわふわモーツァルトを宥めたり透かしたり、あやすように手綱を握るコンスタンツェ、好きです。
悪妻のイメージが強いコンスタンツェさんですが、この作品でもところどころそのような話は出てはきますけど、夫であるモーツァルトを我が子を愛しむように愛する妻という感じでした。

井上小百合さんのフェラレーゼは、どこか少し線の細い、繊細な雰囲気を感じました。
もっと遠慮なく、強かさの方も存分に振りまいちゃっても良いくらい。
フェラレーゼという役柄、何かグレイテスト・ショーマンのジェニーを思い出しました。
体調不良で急遽、一時休演されていたし、歌声もちょっと不安定感があって、カーテンコールを見ていてご本人もいろいろと悔しかったのだろうなあ…と思いました。

アンサンブルの方々もみなさん楽しそうで、お衣裳もキラキラすてきでした。
カーテンコールを拝見しながら、改めてアンサンブルの方々の熱意をひしひしと感じたり。
ついに掴んだオーディションの合格、という方もおられたり。
ロレンツォやモーツァルトはじめ、それぞれがそれぞれの夢を追いかけて、ときに一瞬のうちに逃げられて、諦めきれずまた追い求める。
私などは、客席からちいさく応援するしかできませんが。

個人的に、少し掴みきれないところもあったりしました、ちょこちょこ何か引っかかるというか。
これからまだ、きっと再演などを重ねて、時間をかけながら深みを増していく作品なのかなぁと思ったりしました。

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