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日本代表 観戦記|代表を生きる渇望|国際親善試合 日本 vs 韓国

 灰色の空の下、巨大な宇宙船が横たわる。新横浜駅から日産スタジアムへと向かう。広い歩道。開けた視界。それらは僕の心と身体を伸ばしてくれる。トリコロールから青へと変わる日。久しぶりの代表戦だ。

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 世界は刻々と色を変える。灰から黒へ。最後の力を振り絞るように、太陽が鮮やかな朱色を残す。韓国を応援する人々に割り振られた区画に僕はいる。些細な希望はあるが、僕にとっては試合を拝むことができれば取るに足らない。しかし、周囲の人々がまとう赤い衣。視線と聴覚を突くハングル。ここは横浜だ。しかし、紛れもない別世界がここにある。

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 日韓戦を包む刺激と高揚感に魅了されてきた。時に喜び、時に落胆する。その歴史は間違いなく、日本代表の歩みに重要な足跡を残してきた。横浜での日韓戦は二〇〇三年以来。十八年もの時が過ぎたとしても。そして、静かな世界の中でも、この重みと刺激を肌で感じることができる。

 「慣れ」を日本から感じた。狭く、窮屈な空間において、日本はボールを前へと運んでいく。生きる日常の違いが明確に浮かび上がる。素早く、激しい韓国の寄せを跳ね返し、間隙を縫う。そして、彼らが過ごすヨーロッパの舞台へと思いを巡らせる。それがどれほどまでに過酷な世界なのだろうかと。

 その筆頭は中盤を制圧した遠藤航であり、守田英正である。中盤を険しい山々に例えれば、彼らはそこに道を作る。道なき道、そこに道を通す。雨にも、風にも耐える。それは高度な技術であり、芸術でもある。そして、韓国の前に強固な門番として道を塞ぎ続けた。特に前半。日本陣内に侵入できず、ハンドボールのように安全地帯を往来し続けた。

 山根が駆け上がり、道幅を広げる。その道筋を堅牢な渡り板のごとく中継する守田。それは等々力で見てきた光景と寸分も違わない。ポジションチェンジからの攻略。カウンター。その流れを個性という名の絵筆で彩る選手たち。大迫勇也はピッチ上において最も苛烈な場所で時間を生み出し続けた。冨安健洋は地中深くに根を張った巨岩のようだった。間違いなく、それはハーモニーだ。

 後半に入っても大勢は変わらない。韓国は間へと入り込み、ゴールへと迫る回数が増える。しかし、得点の匂いが存在するとすれば、それは大きな日の丸が掲げられたピッチの向こう側から立ち込める。

 太鼓によって乾いた空気が震える。近年の日本からは理想へと邁進する気高さのようなものを感じていた。しかし、それは相手を意識した最適解であるのか。疑いの眼を向ける時もあった。代表が姿を消した空白期間。そこを経て、日本の選手たちは代表を生きる渇望のようなものを全身で表現した。この日、新たな軌跡が日本代表の歴史に刻まれた。

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日本 3-0 韓国

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