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日本の医療制度の「転落」

世界がうらやんだ日本の医療制度

日本は世界がうらやむ理想的な医療制度を達成した国でした。これはそう昔のことではありません。

10年ほど前まで、日本は医療費が他国と比べて低く、かつ世界一寿命が長いという、理想的な医療がある国だと他の国から思われていました。諸外国は「日本がなぜこのようなすばらしい医療制度を設計し、維持することができるのか」に関心を持っていました。
 
戦後の経済成長により、日本の名目国内総生産(GDP)は1968年にアメリカに次ぐ、世界第2位になりました。1979年には、ハーバード大学の社会学者エズラ・ボーゲル先生が、戦後の日本の高度経済成長の要因を分析し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を出版しました。

ちなみに、日本はその後バブルが崩壊し「失われた30年」を経験することになります。GDPにおいて「ナンバーワン」になることはできず、2010年には世界第2位の座を中国に明け渡し世界第3位になり、2023年にはドイツに抜かれて世界第4位になると予想されています。
 
その一方で、日本の出生時平均余命(以下、寿命)は1980年代半ばから世界第一位であり、日本は「世界一の長寿国」です。偶然ならば30年間もナンバーワンの地位を維持できませんし、日本がこれほど長期間にわたって世界一だったものは他には思いつきません。世界に出て「ジャパン・アズ・ナンバーワン」のブランド力があるのは健康に関連した産業なのかもしれません。

(出典:Our World in Data

しかし、2040年にはスペインが日本を抜いて、世界一長寿な国になると予測されています。日本が寿命においてナンバーワンなのはあと16年間、それ以降は健康のブランド力はスペインの方が上になっていまうかもしれません。

 問題は、なぜ日本が世界一長寿なのかも、なぜ日本の医療費が今まであまり高くなかったのかも、実はよくわかっていないということです。よくわかっていないからこそ、政策にもビジネスにもつなげにくいというのが現状です。

次回以降は、日本人が長寿である理由に関するエビデンスや、日本の医療費に関して説明していきたいと思います。

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