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島に息づくお互いさま 〜老い方と支え方〜

8月、宝島は少し活気づく。お盆に帰省する出身者の中には、いつかは帰ってきたいという思いを持っている方もいる。また夏休み中の学生や社会人、家族連れが、秘境と言われる土地で、未知の体験を求めて訪れてくる。100人の島に、10数人の人が来島するだけで雰囲気ががらりと変わる。

実はこの夏から、宝島の中では大きな変化があった。昨年まで旧暦で行われたお盆行事が、今年から新暦で行われることになった。

数十年前から話し合われて来たことだったそうで、今年度の自治会の総会で決定した。ただ、初めての試みということもあり、これまでのしきたりや風習を重く受け止め、大切にしてきた最後の世代とも言える高齢者の気持ちは気になっていた。

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島では、簡略化されたとは言え、盆正月以外でも何かと神様を祭る機会があり、各家庭で預かってきた神様を、地域の神社に納める人も多い。先祖代々受け継いできた事を、自分の代でやめることに対する精神的な負担感は大きいのではないかと感じていた。

一方で、足腰が弱ってきたり、認知機能が低下したりして、政の準備すらままならなくなっている高齢者世帯が増えてきている現実を目の当たりにしてきた。

身体的要因や疾患的要因で、欠けてしまった〝歯車〟を地域の方の力や知恵を借りながら少しずつ集め、継続できるように支援してきた経緯がある。できる限りの政を終えた後の高齢者の表情には、安堵感があると同時に「来年はできるのだろうか」と不安な声が聞こえてきていたことも事実。これからも、政は暮らす人々に大事だと思われている限り、未来の宝島でも形を変えて残っていくのであろう。

少しづつ変わりゆく宝島ではあるが、変わらないこともある。盆正月に合わせて、普段の暮らしの中でお世話になっている方のお宅に線香を灯して挨拶をかわす風景だ。

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移住者が増える中で、「新しいお互い様」の関係が生まれている。できない畑仕事に加勢をもらう高齢者と、できる範囲で協力する移住者。私自身、そんな高齢者の畑の手伝いをして、お礼に夕飯を頂くこともあった。貢献の方法は、労働力の提供だけではなく、高齢者に新しい特産品の材料の仕入れ先を担ってもらう役割の提供という社会的にも意義のあることも多い。

また、これまで大事にしてきた畑の維持が難しくなり、「荒らしてしまうよりは」と、U・Iターンで移住してきた人に畑を譲り渡したり、貸したりすることも増えてきた。

そんな関係性が可視化されることの一つが、盆や正月の行事だと思う。新暦に合わせたことで、遠方に住む家族は帰省しやすくなった側面もある。移住者を含めた島民と、島を想い続ける帰省者が顔をあわせる時間は、変わりゆく島の「今」を共有し、これからの宝島を考える大切な時間になっている。

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