素直さとは、「自分の判断を保留できる」力であり鍛えることのできるスキル
前回は、人は無能レベルまで昇進するという考え方についてご紹介しました。
いかに人の成長を永続的に止めないか。学習し、変わり続ける体質を持ち続けることは個人としても、組織としても重要なテーマではないでしょうか。
私はそれは、気づきを得て、これまでの考えを捨てることができる素直さを持つということだと思います。
人間は素直であると伸びるとよく言われてきました。
新卒採用で企業が学生に求める資質としてたびたび挙げられる項目でもあります。私は素直さとは、「自分の判断を保留できる」ということであり、鍛えることのできる「技術」なのだと考えています。
「素直」の反対の言葉として「頑固」が当てはまるかと思いますが、実を言うと、私自身これまでわりと頑固だと言われてきた経験がありました。
人から何か言われた時に、そのまま受け入れられない状態を振り返ってみると、「でも私はこう思う」ということで頭がいっぱいになっています。その時の私は、別に言うことを聞きたくないということではなく、納得できる説明が欲しいという気持ちです。
つまり、頑固さや素直でなくなっている自覚がなく、ただ納得させて欲しいと思っているだけなのです。しかし、それが相手からは、自分の考えにこだわる頑固さに映ります。
その際に私自身が試して効果的だったのは、
「自分の靴をいったん脱いで、相手の靴を履いてみる」
という考え方です。相手がなぜそういう指摘をするのか、相手が見ている世界と自分の見ている世界にどんな違いが広がっているのか。それを好奇心で一時的に見にいってみないかと考えてみるのです。
人の意見が聞き入れられない時の私は、相手の靴を履かず、自分の視点から正しいか正しくないかジャッジしています。
そのままでは新しい視点を受け入れる余地はありません。
人が無能レベルから抜け出して、新たな世界を獲得するためにはまず、一時的に「今の自分を捨てる」ところから始めなければなりません。
研修やワークショップを企画する際にも、同様に考えていきます。
つまり、研修後に受講者の「態度、行動が変わる」ためには、いったん自分の考えを保留していただき、新たな考えを一度ためしてみるように意図的に設計しなければなりません。
そのためには、何が、あるいはどちらが正しいかを決めるのではないということが大事なポイントで、相手になりきってみるくらいの気持ちに切り替えることができるかだと考えています。
それが異なる世界を受け入れる可能性をひらき、学びを促進します。
思考や判断は大敵です。「あの人は、こういう経験があるからこうだろう」とか、「この意見はこの点が考慮されていない」など、人の話をついつい自分の視点から判断や評価をしながら聞いていると、過去の自分の考えを強めるか、単に知識が増えるかという非常に得るものが少ない時間となってしまいます。
評価判断しそうになったら、いったんそれを保留してみる。
世界中の物事も、自分とは異なる意見も、自分がオープンになると非常に鮮やかで刺激をくれるものになると感じます。
また来月もよろしくお願いいたします!
VOL47 2014/4/30 saakguchi yuto
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