東洋思想家がすすめる小説三選

 こんにちは。猶起会会長の東岳です。今回は私がおすすめの小説を三つ紹介したいと思います。
 「東洋思想家が~」というタイトルではありますけれども、そういった堅苦しいものではなく、これまで読んで純粋に面白いと思ったものを紹介します。

 
1.赤と黒 スタンダール

これは読まれた方も多いかと思います。スタンダールの作品で、フランス文学を代表する傑作のひとつです。

これは是非若いひとに読んでほしい作品です。 私は18歳の時にこれを初めて読み、本当に面白く感じました。
それはこの野心家で夢見がちな、人間味溢れる主人公ジュリアンが当時の私とほとんど同じ歳であり、共感をよんだからだと思います。

ジュリアンはナポレオン崇拝者で、軍人に憧れる青年ですが、当時の私も自衛隊に入ろうと考えておりましたから、本当に嬉しく思ったものです。

身分の低いものが、野心から立身出世を図る…これはなんとなく嫌なものにも聞こえますが、本作では美しくさえ思えます。
実際農民の子供であるジュリアンは貴族になるため、作為的で謀略なども用いますけれど、途中に遭遇する恋愛などに心を奪われてしまう、熱情と人間らしさも同時にある。
野心や謀略と恋、これらによって矛盾し悩みながら邁進する心情をスタンダールは非常にうまく描写しています。

作家、織田作之助がジュリアンソレル論を書いたのも、非常な共感と関心を私同様この作品に持ったからだと思います。

2.豊饒の海 三島由紀夫

この作品は三島由紀夫の遺作なので、非常に有名ですね。
大きな物語が四巻によって構成されており、その最後「天人五衰」の書き上げと時を同じくして三島由紀夫は切腹された。
故に文学としてだけでなく三島由紀夫の行動を研究するひとにも読まれていますね。

四巻はそれぞれ時代が飛んでいるという特徴があり、前作に伏線があったりします。
また、それぞれの内容が文体にも現され、一部は貴族らしく優雅なもの、二部は質実剛健、三巻は宗教と官能、四巻は空虚な雰囲気を文章からもひしひしと感じることができ、そこは流石と思いますね。

近代日本文学のなかで物語というものにここまで全力で取り組んだ作品は、なかなか少ないかもしれない。そう思えるほど力のこもった作品でした。


3.歯車 芥川龍之介

確か芥川晩年の作品だったと思います。
自殺直前の陰鬱な精神が文章に満ちており、それでいてその狂気は幻想的でもある。

初期の歴史小説の作風が芥川は有名ですが、後期のこうした私小説も私はかなり好きです。
特にこの歯車を代表として狂気とそれに対する自己の恐怖を全面に出した作風は、本当に読みごたえがあります。


こうして3つ挙げてみましたか、気づいたらかなり有名どころになってしまいました。けれども読んだことがない方もいるとは思うので、是非とも読んでみてください。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?