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穂音(ほのん)
2024年5月5日 17:28
春時雨 菓子屋の店先、右手に置かれた鉢に金兵衛は顔を寄せた。やさしい香りであることよ。 左手の鉢に、同じように鼻を近づけた銀兵衛は怪訝な表情を浮かべる。いや、私にはとんとわかりませぬ。 はは、銀兵衛。お主のは牡丹で、儂のは芍薬ぞ。ほれ、見てみい、葉の形も違うであろう。どちらも安兵衛が手塩にかけただけのことはある。 折角父が届けてくれましたのに、先だっての時雨にあたってしまい、蕾がど