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5月の読書 | 誰にも頼まれていない

今月は漫画を読んだり、雑誌を読んだりもした。本以外にも触れたいコンテンツはある。ページを捲るたび、舞い込んでくる。ひとつひとつ咀嚼して、自分の血肉にする作業。わたしが読書が好きな理由だ。知らないことを知るたびに、触れるたびに、見るたびに、自分の命が長らえていく。わたしは今日も、本を読む。

自然のレッスン/北山耕平

4月に読んだ曾我部恵一さんの本の中で、おすすめしていた1冊。自然とともに生きるには田舎に暮らして、自分の畑をつくって、無添加のものを食べ、リネン生地の服をきて…と想像をしてしまうけれど、本当はどんな場所にいたって自然に生きることはできる。自然と共に、自然のままに、自分の心も身体も守りながら生きていくことが出来る。そういうことを学べる1冊。パッと開いて、今日のレッスンをする。


「普通がいい」という病

人と人とがコミュニケーションする時に、西洋の個人主義の場合はどうなっているかというと、一人称の自分が、三人称の人に話をしている。一方、相手側に回ってこの関係を見てみれば、相手側も相手自身の一人称をしっかり持っていて、その対象である私は相手からみれば、三人称になっています。…通常の文法では、相手を二人称と言うはずなのに、なぜ三人称と言うのか。それは、相手がこちらとの関係によって変化しないという意味合いを込めているためです。…日本人の対人関係がどうなっているかというと、0人称の人が、二人称の人に話しかけている。分かりやすい例で言うと、日本人は、自分の意見を人に言うと時に、相手が自分より目上であるかなど、自分と相手との関係性によって、まず語尾が変わる。

第2講 言葉の手垢を落とす(「普通がいい」という病)

わたしは英語をペラペラしゃべれるわけではないけれど、留学をしていたこともあり外国人の友だちが割といる。彼女たちとはいまでも時々メッセージでやりとりをする。彼女たちとのコミュニケーションが何故とりやすいのか、心地が良いのか、言いたいことが言えるのか、その理由が分かった気がする。”0人称”という表現の見事さに笑ってしまった。日本人独特の、表現のしづらさ、言葉の使い方、敬語など、わたしたちはもうやめてもいいのかもしれない。

0人称という言い方は実に皮肉な言い方ですが、つまり、「自分がない」ということです。

第2講 言葉の手垢を落とす(「普通がいい」という病)

死が隣にあるからこそ、生が自動的に輝いてしまう。

第9講 小径を行く(「普通がいい」という病)

もうひとつ。心に残る箇所を抜粋。世の中から戦争が無くならない理由として、上記の一文を述べていた。戦争には、メメント・モリがちりばめられた側面がある。第9講より「メメント・モリ」についてである。メメント・モリ、ラテン語で「死を想え」、「死を忘れるな」。わたしは時々、この言葉を頭の中で繰り返す。わたしたちはいつか死ぬ。必ず死ぬ。それだけがわたしがこの世の結末で分かっているたったひとつのこと。死にたくは1ミリもないのに、死を実感できないと不安にもなる。命懸けでなにかをしてしまうわたしたちの心理にはいつもメメント・モリがある気がする。死を忘れるな。

チ。/魚豊

夫に勧められて普段あまり読まない漫画を。1巻~8巻まで一気読みした。圧倒的な終盤。ドキリ、ドキリと鳴る自分の心臓音を無視できない。命を懸けて貫きたいことがわたしにはあるだろうか。最後に全てが結びつく瞬間、鳥肌が立った。自由とは、信仰とは、真実とは。突きつけられる真理に、きっと誰もがはっとなする。

バナタイム/よしもとばなな

何かができないということは、他の何かがそこにあるっていうことなんだと思う。

意外な幸せ(バナタイム)

ばななさんのエッセイ集のなかで上位で好きな1冊な気がする。じわりと感じる壮大な幸福感。引用した「意外な幸せ」にはわたしたちがどんなことにも幸せを見つける力があるはずっていうことが書いてある。(そう解釈した)言葉面だけだと、なんとも不幸そうに見える中にも幸せはいくらでも広がっている。この本には生きるということに対する強さがある。強さとやさしさとそしてちょっとの切なさがつまっている。手元に置いておきたい。原マスミさんの絵も素敵。

前進する日もしない日も/益田ミリ

じーんとする心がわたしを守っている

前進する日もしない日も

今月もミリさんを。ミリさんのエッセイは共感ができるから好きなのだ。ミリさんの人生経験にはわたしはまだまだ足りないのだけれど。ミリさんの本を読んでいると大人になっても、何歳になっても、ときに思いきり泣いたり、悔しがったり、笑ったり、怒ったりしていいのだと思える。きらりと光る日々はいつまでも。

POPEYE5月号『いい仕事ってなんだろう?』

世界には本当にたくさんの仕事がある。誰に頼まれるわけでもなく、ニューヨークタイムズの一面に色をつける彼。美しかった。仕事って、自分でするもの。自分でつくるものだな、と思った。わたしだって、頼まれて働いているわけではないけれど、その中身はどうだろうか。やってくる仕事をこなしているだけになっていないだろうか。やりたいことをやれている、と思う夜は多いけれど、満足はしていない。自分で仕事を作っていく。これはひとつ課題かもしれないなと思う。

汝、星のごとく/凪良ゆう

どんな言葉もネタバレになりそうなので引用なし。これだけ物語に引き込まれた小説は久しぶりだった。息が苦しかった。ずっと水の中にいて、その中で物語を見ていた。苦しかったけれど、光が差してきて、だんだん水面が見えて、手が届いた。ぐっと誰かが引き上げてくれて、思いっきり息を吸い込んだ。そして吐く。それだけで苦しかった気持ちが全部なかったことになった。そういう時間をこの本と共に過ごした。愛とはいつも切ない。儚い。そこに強さを見いだせた者だけが、愛を貫くことができるのだと。個人的には北原先生の強さに一番惹かれた。


本を読むことも、働くことも、ごはんを作ることも、結婚することも、誰にも頼まれていない。自分で選んで、自分で生きている。自分で幸せになる覚悟を持つ。来月も好きな本をたくさん読もう。

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