全部、腐る前に
自転車を漕いでいた。雨の中だ。
100円均一で買った薄っぺらいレインコートのフードは、被っても被っても風で飛ばされて、髪はプール上がりみたいにびっしょりだった。
額にあたった雨粒が顔を伝ってマスクの中に垂れてくるのがうざったかった。
それでも私は自転車を漕いでいた。
気持ちの良い坂でスピードが上がる。思いっきり風を切った。
生きている、私は生きていた。
もっと生きてみたかった。こんな気分になったのは久しぶりだった。
今日”日本がヤバいのでなく、世界がオモシロイから僕らは動く。”という本を読んだ。
転職するならどんな会社で何する?
私は4回の転職を経験している。
転職しようかなと思った時に私が使用するのは、ハローワーク・転職エージェント・友人の紹介・Wontedly…のようなツール。
だから、転職する会社・自分が働く会社はその中から選ぶことになる。
それに対して特に疑問を持ったことはなかったし、そういうものだと思っていた。
業界大手企業、有名企業、東京の会社、伸び始めているベンチャー企業…
候補になるのはそんなところだろう。
きっと多くの人は、これと大差ないと思う。
だからこの本の序盤筆者がアジア新興国のカフェで盗み聞きしたという若者の会話に驚いた。
若者A「近い将来どんな会社で働きたい?」
若者B「俺は数年以内にイギリスに行きたいね」
若者C「僕は香港かシンガポールだな。中国も面白そう」
若者D「僕はやっぽりアメリカだな」
そういう発想もあるのか!?
私は考えたこともなかったからだ。海外で働くことなんて。
考えてみた、海外で働くこと。
何をするだろうか、自分の経験からできることを考えてみる…
どれもどれくらいできるかと言えば、初心者よりも少しできるくらいだがやってみれば何とかなるかもしれなかった。
しかし、そういう想像にワクワクした。
仕事のことでワクワクしたのなんてとても久しぶりだった。
会社員と言えば、安定。
私はすっかり安定のぬるま湯に浸かっていたのだ。代り映えのない仕事、可もなく不可もなくやりがいの無い仕事…
ああそうか、やりがいって大事なのか。その時私は思ったのだ。
・日本の日本ならではのものを広めること
・日本人の活躍できる国を増やすこと
・世界と闘える日本にすること
なんのために働くか。
よく聞かれるこの問…まさしく私がしばらく忘れていたのはこれだったのだろう。
死ねない理由を探して
こういう本(人生めっちゃ楽しいです、今!みたいな人が書いた本)を読むと、眩しいなという気持ちになることが私は多い。
こういうバリバリ仕事をしてくれる人がいるから、私がのほほんとしても日本は何とかなっているのだと、ありがたい気持ちの眩しさである。
生きていることが楽しい、とか人生100年とか時間無いよとか、そういうことを言う人は人間の2割くらいでそれ以外はなんとなく…
生きてるから生きてるのだろうと、私はそう思っている。
(2割は少ないかもしれない、ちょっと盛りすぎたかも)
だから私は、常に自分が死ねない理由を探している。
正直やりたいことがなかった。生まれてから27歳まで平凡すぎる人生のレールに乗っていた。大学を出たら会社に勤めて、転職しつつも60歳まで会社員をする、そういうレールだ。
大抵似た者同士で集まるのだから当然変わったたものに出会うこともない、
そうやって漠然と生きていたらやりたいことは見つからない。
偶然見つけられてもそれに挑戦できるタイミングは過ぎているかもしれない。
この本を読んで改めて世界一周に行きたいと思った。
日本人として生まれた私が、この後の時代のために何ができるか考えたいし、自分の行きたい理由を決める選択肢がもっと欲しかった。
だってこのままでは腐ってしまうから
この本の最後、心に残ったところがある。
僕は、必ずしも「全員海外に行け」とまでは思っていません。理由はいくつかありますが、最も大きな理由は単純で、日本は世界の一部だからです。「世界」という舞台の中に、日本もあります。もし、あなたのやりたいことが世界の他のどんな場所でもなく、日本にあると確信しているのであれば、それで良いのだと思います。
日本は世界の一部。
ふと感慨深い気分になって、パソコンから顔を上げて窓の外を見ると雨と夕方の薄暗さが相まって、フィリピンのホテルで見た外の景色と重なった。
世界一周のために何か始めよう。
「英語かな」と英語が全く話せないので独り言を漏らしたところ、
「英語勉強するの?」
とゲストハウスに共に住む仲間に声をかけられ、一緒にオンライン英会話を1か月受けることになった。
小さなことから少しずつ少しずつ積み重ねていこう。
今回読んだ本
題名:日本がヤバいのではなく、世界がオモシロイから僕らは動く
著:太田 英基
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