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海中浪泳

雑木林が激しく枝を揺らしていた。
影は薄く、曇り空は湿った風を送る。

背の高い男が科挙開始の号令を出した。
炭素が紙を焦がしていく音に、陽炎がぐらり立ち上がりそうである。
凝った姿勢をほぐそうと体制を少し変えるだけで、冷えた床が軋み、その響きで冬を忘れそうだった。

桜を横目にバスを待つ。
変わらない灰色の町では、娯楽は動物へ近付く。
無難なスニーカーをアスファルトから離し、ルーティンのように残高が表示される。昨日と同じ座席に着き、肘を置く。平和なぐらいに平日の空は乾いていて、笑ってるような快晴が鼻についた。この町が未開拓の雑草になれば幾らか指揮を執れ充実した日々を送れそうだったと想像が濁る。リーダーなんて煌びやかなものなんて無く、明日に待っているのは途中乗車した行先の分からない'自習'があるだけだ。後ろに急かされてゆらり乗ってはみたものの、バスが前に前に、時間を進むにつれどこへ向かっているのかが不安になり退屈な移動時間も眠ることができなかった。


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