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【今でしょ!note#183】請負型ビジネスの弱さと企画型ビジネスの可能性

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

これからの時代、ますます強くなっていくと考えるビジネスモデルの転換について話をします。
企業の大小問わず、また個人のキャリア形成においても、重要な考え方です。

先日、地方公務員の仕事に関する対談を拝聴しました。
そこで話題の中心になっていたのは、「成果を出しても個人の評価に反映されにくい制度」、「遅刻せず、欠勤せず、仕事せずの人が登用される仕組み(=マイナスが付かないことが重視される)」、「優秀な人が公務員を独立しても、自治体からの請負ビジネスに徹してしまい、請負ビジネスから抜けられない実態」でした。

「成果を出しても評価されない」とか「仕事していなくてもマイナスが付かなければ一定評価されてしまう」みたいな話は、さすがに私が知っている範囲の民間企業においてはないなと思いつつ、「請負ビジネスに徹してしまう」というのは、民間でも大小問わず発生しています。

特に、戦後の高度経済成長の延長で、物不足で人口増加傾向にあった局面においては、とにかく大量生産で他よりも安く作れるということに価値の主眼が置かれていました。「社会に提供すべきプロダクトが決まっていて、それをいかに正しく、たくさん作るか」が生き残りの秘訣だったのでしょう。
物作りの担い手は、「言われたことを正しくやる」の思考が基本にあり、「欲しいものは顧客が決める(=顧客側は、他の「お手本」に追随すれば良かったため、自分たちで決める難易度も低かった)」というモデルでもやれていました。

しかし現代は、モノは溢れ、人口減少局面に入り、個人のニーズの多様化が進んでいます。大量に安く作れば売れる、という時代は終わり、ユニークなもの・付加価値が高いものが選ばれる時代になったため、顧客側も何を業者に発注すべきか?が分からなっています。

そうなると、これまで成立していた請負型ビジネスのやり方がかなり怪しくなり、仕事を受ける型が「どんなプロダクトやサービスを提供すべきか」というのを自分たちで定義して、言語化し、社会に発信していく必要があります。

このような「請負型ビジネス」の限界と、「企画型ビジネス」が秘めた可能性について、深掘りしていきたいと思います。


請負型ビジネスの弱さ

一部の顧客に自社の売上が左右される

請負ビジネスの最も弱い部分は、一部の顧客への依存度が高くなるということです。
顧客自身もどのようなサービスを社会に提供していくべきか分からない現代において、顧客と一枚岩になった共創型事業が増えています。
一社では解決できない社会課題ばかりの現代において、業界を超えた共創案件が複数生まれていること自体は非常にいい流れだと感じています。一方で「共創」と言いながらレベニューシェアの形を取らず、契約の実態が「請負契約」のままだと、どうしても顧客側が主導権を握り、顧客への依存度を高めることになります。

一部の顧客への依存度が高いということは、自社の売上が一部の顧客の発注意思や状況に応じて、大きく左右されてしまうということです。結果として、自社(自分)があまり得意でなく、十分なパフォーマンスが出せない仕事まで受けてしまうことになり、ますます本来の得意技ややりたい仕事に割く時間が失われ、負のスパイラルに入っていきます。

また、民間でも自治体でも、一顧客を相手にして、個別最適されたサービスは、なかなか汎用的なものにできません。社会全体の基本的なインフラ整備は完了している現代において、1事業あたりの案件規模は小さくなりつつあります。そのため、労力をかけて一顧客にとって最適にしても、それほど大きなビジネス規模にはならず、請負側も次の投資や成長に繋げる稼ぎを生み出すことが難しくなります。

汎用的なサービスを作れない

「まずは一社に対して最適化されたサービスを作り出し、その実績をもとに横展開する」という話は、聞こえはいいのですが、これを実現するとなるとかなり難しい面があります。
なぜならば、はじめの1つを作り出す過程において、かなりの部分が個別最適化されているため、基本的にそれをそのまま他の人にも売る、ということができないからです。

私も自ら携わった事業において、ある顧客向けに提供したサービスをカスタマイズして、他の顧客向けにも展開する、というミッションを担ったことがありますが、カスタマイズ範囲が大きすぎて、それならゼロから作ったものを提供した方が早い、という話になりがちなのです。

汎用的なサービスを作るならば、はじめから汎用的なサービスにするためのデザインや機能を設計しておく必要があります。そして、最初から汎用性(=複数の顧客にサービスを届けたい)を考えるのであれば、はじめからグローバルスタンダードを意識することが肝要です。

企画型ビジネスの可能性

自分の得意技で勝負ができる

特に大規模プロジェクトではまだまだ請負型の方が適している部分も多いので、一定の請負ビジネスは残り続ける一方で、社会全体としては「企画型ビジネスの割合が増えていくだろう」と私は考えています。

企画型ビジネスの強さはなんと言っても、「一定顧客への依存度を下げる」点です。顧客ニーズには敏感になりつつも、それをサービスに取り入れるかどうかは自分が最終決定できます。複数顧客を相手にすることが前提で、一顧客への受注が自社の売上の大部分を占めているということもないので、自分たちがいいと思うものに拘って、自分たちの得意技で勝負しやすくなります。

一方で、これからの時代を企画型ビジネスで生き抜いていくためには、組織や個人の能力を「広く」高めておかないと苦しいです。

「儲かる」と「正しい」の軸で4象限で考えると、「儲かるし正しいこと」はみんなやるので、ユニークなサービスは生み出しにくいです。
「儲からないし正しくないこと」は誰もやりません。「儲かるけど正しくないこと」はやってはいけません。となると、「儲かるか分からないけど、正しいこと」に取り組む必要がある
これを選定する目利きのためには、自分(たち)は、これが「正しい」と信じている!と言える価値基準を持ち、言語化できる能力が必要になります

攻め所はグローバルニッチ

多様化が進む現代において、「みんなが欲しがりそうなもの」を大量に作っても、誰からも必要とされません。
そうではなく「ある一部の人が物凄く欲しがるもの」だけが、一部の人に確実に売れる時代になりつつあります。

このように考えると、市場規模が小さすぎてビジネスにできない、と考えてしまいがちですが、重要な視点は「グローバルニッチを狙う」ということです。

以前、山口周さんの対談を聞いていた時に「IKEAの障がい者向け家具」の話が紹介されていました。障がいがある方も使えるアタッチメントを作り、データを公開して3Dプリンタで誰でも作れるようにしたところ、127カ国からダウンロードされ、売上が年間で3割増となった事例です。

何らかの障がいを持った人は、国内1億2000万人に目を向けると1割に満たないので1200万人以下となります。しかし、世界中どこにでも障がいを持った方はいて、先進国だけでも12万人いるので、その1割と考えると1億2000万人で十分成立するマーケットになるのです。

そのため、はじめから海外の人も使えるように他言語対応にしたり、直感的に分かりやすいシンプルなユーザーインタフェースを設計したり、という工夫が必要です。それには、プロダクトやサービスを企画する段階で、グローバル視点を持ったメンバーを企画メンバーに入れておくことが、非常に重要です。
寛容性が低い、同質性の高い組織で、それがいかに難しいことか、想像するのは容易いはずです。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
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