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始めなきゃ、終わってしまうから

憧れの先輩が寿退社する。

入社当時の私はずっと先輩の後にくっついていた。1から10まで教えてもらった。

そんな先輩がもうすぐ寿退社。

ずっとずっと、抱いていた気持ち。淡い恋心。

どうしよう。頭の中が真っ白すぎる。


====


送別飲み会の日。

その日の日中、誰にも悟られないタイミングで先輩にお願いをする。

『先輩、最後にちょっと2人で話せませんか?』

あぁ、心臓が口から飛び出そう。

『なになに?なんなのよ?』

いつものノリで返してくれたけど、いつもと様子の違う私を見て、送別会の解散後に2人で再開しようと言ってくれた。


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送別会のあと、人気のない駐車場。

アルコールは飲むフリして少し抑えめにしておいた、それでも気持ちは高揚していた。

俺は何がしたかったんだろう?

『ずっと大好きでした。ありがとうございました』

あぁ、意味不明。どこまでも自分勝手。

でも、伝えないと、一生後悔すると思った。

先輩は優しい。

『私も、みんなのこと大好きだったよ。忘れないよ』

先輩・・・さすがっす。

100点満点の返しです。

試合終了。

分かってた。

はじめっから終わってた。


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私のカバンの中には、この時のために用意してきた贈り物が入っていた。

中身は写真立て。

渡せなかった。

きっと、新しい家族との写真が飾られてしまうから。

代わりに、こんな言葉が口をついて出てしまった

『もし、また働きたくなったら、戻ってきてくださいよ!俺、偉くなってますから。待遇良くしますよ。だから、またいつか・・・戻って来て下さい。』

いつも大人びている先輩が少女のような歓声を上げた

『そーだよね!そーだよね!また戻って来たっていいよね』

くりっとして大きな目をさらに大きく見開いて、キラキラさせながらこう言った。

『君が偉くなったら、私また戻ってくるね。』

はじめっから、終わっていた、は訂正。

始めなかったから、終わってしまった。

もう2度と、こんな事は繰り返さない。

固く誓った、20代の夏のこと。

===

それから、時が経ち、先輩は戻って来た。

パートとして。

俺は、複雑な気持ちでいっぱい。

まずは、うれしい。

そして、やっぱ美人。相変わらず。

しかも、磨きがかかっている・・・(ゴクリ)

笑顔が眩しいです。

だけど、だけど・・・







戻ってくるの、ちょっと早くないっすか?笑

先輩。俺、まだ、主任です・・・







でも、それでも嬉しいもんです。


====


人は、10年あれば変わってしまう。

『俺、ここで偉くなるから、戻って来て下さい!』

そんなことを無邪気に、だけど本気で言っていた、あの時の自分はもういない。

違う世界を見たくなってしまった。

きっと、そのうち、また会えなくなります。

それでも、次を始めたいんです。

始めなきゃ、終わってしまう。

それを教えてくれたのは先輩ですから。




見たい景色が見えたなら、その時には写真を撮ろう。

あの写真立てに飾りたいから。




スタート♪


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yuya工房

好きなものを、好きなときに、好きなだけ 電子工作、IoT、AI、読書、レザークラフト、株式投資、一人旅、写真、ブログ、毎日note更新・・・ 32歳しがない田舎の会社員、遅まきながら色々チャレンジしています! https://www.yuyakobo.net/

yuya工房の【SSSF】

なんぞ?SSSFって?【すごく/ショートで/少し/フィクション】の頭文字をとりました。小話を書いてみます。【前前前世】をイメージしながら【エスエスエスエフ】と呼んでやって下さい。ヘッダはSSSFで検索したらHITした電材スライドスイッチ。私らしい。幸先がいい
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コメント2件

Yuyaさん、可愛い😊←失礼ですね
先輩は嬉しいと思いますょ〜✨
ちぃ坊さん
んなこたぁないですよ😅
そうだと良いです😚
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