【短歌九首】ようやくの秋
卯の刻に金木犀を敷き詰めて小鬼は踊る、街よ目覚めよ
川岸の岩で孤高の白鷺は川底睨み忍び足する
秋晴れに光る川面や置き去りのフェンスに掛かる貴婦人の傘
淀みなく流るる川よ、決められた一方向に流るる川よ
川沿いをひたすら歩く 来た道をいつか帰ると知りつつ、今は
この耳が川音だけを聞くならば我が身よ溶けて秋空を飛べ
セキレイのつがいが並び田を見てた あれが愛かなサン=テグジュペリ
どんぐりの爆ぜて小さな秋の音を木霊は奏で自然公園
ランチ時マダムの組に挟まれて鮭のタルタル独りも楽し
九首のうち五首が川の歌となっていることからもお察しの通り、川が好きです。厳密に言うと、川の音が好きなのです。車椅子でも歩きやすいような、川沿いの遊歩道をたまに散歩します。
一方、鳥の歌を二首詠みましたが、実は鳥は好きではなく、苦手です……。鳥が好きではないのに、以前もカラスやスズメの歌を詠んだことがありますね。なぜなんでしょう。鳥って短歌にしやすいんでしょうか。
第七首は、サン=テグジュペリの名言「愛し合うとは、互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることだ」に着想を得ました。
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