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なぜ、未亡人は美しく見えるのか? Chapter 2 「会社・お店・施設」の驚きの「色」仕掛けを解明する(9)

オトコ色とオンナ色

ランドセルに見るオトコ色とオンナ色

毎年、新しい年度が始まる頃、決まってランドセルの色について、ひとしきり話題になります。
「女の子が赤、男の子が黒なんていったい誰が決めたの? 逆だっていいし、もちろん他の好きな色だっていいはずなのに。安全のことを考えたら目立つ黄色などは最高だと思います。事実、学校で黄色い交通安全のシートを配ってランドセルの上にかぶせているじゃないですか」(36歳・主婦)
多くの意見はこんな論調です。これに対して、
「確かに色は自由です。ならば、親の意見を子どもに押し付けるのではなく、子どもの意思に任せるべきでは? それに子どもというのは、友達と一緒であること、つまりこの場合は変わった色よりもむしろ友達と同じ黒や赤を望むものでは。だいたい、そんなことが理由でいじめられてはかわいそう!」(50歳・団体職員)
という、子どもの自由だけど心配派。
「ウチでは子どもに、青い横型のランドセルを買ってあげました。でも、いじめられたということはありません」(32歳・主婦)
という色の自由化推進派。あるいは、
「今から50年程前。真っ黒に輝くランドセルを買ってもらったときの嬉しさといったら。黒いランドセルは素晴らしい。こんな気持ちを私の孫にもぜひ味わわせてあげたい」(67歳・無職)
といった、遠い日の思い出派まで、毎年結構盛り上がった論争を新聞の投稿欄等でも見かけます。
それぞれの意見はともかくとして、どうもこの論争のテーマの根本には、男の色は黒、女の色は赤、そんな誰しもが感じている「色の性差」と、それをどのように受け止めるか、という一面があるようです。

オトコ色とオンナ色って?

男性的な色、女性的な色。
たぶん「豪」「強」「重」というイメージがあると何となく男性っぽく、
「華」「明」「軽」そんなイメージを受ける色は女性的と感じるがゆえのことでしょう。
「最近は全然逆!」と怒られそうですが、長い歴史の中で、こうしたイメージが定着した結果です。
ただ、実際、この女性的、男性的という色の縛り。女性の方は非常に緩やに、男性の方はかなりはっきりとあるように感じます。
というのも、女性を対象としたファッションや、デザインでは男性的な色をうまく取り入れ、かえって多彩な表現が行われているような例がいくらでもあるのですが、逆に男性を対象としたファッションやデザインの世界で、女性的な色をうまく取り入れた例は、女性の場合と比較して本当にわずかしかありません。
依然として、男の色の世界、特にビジネスマンの皆さんの間では、相変わらず「黒」「グレー」「紺色」、せいぜいいっても「ダークグリーン」程度の色が使い続けられています。
冬であれば、全男性が着用しているコートが良い例です。
世間が明るくなろうと、暗くなろうと、新しい世代が育とうと、やはり男性のファッションは暗い色ばかりが目につきます。
「汚れが目立たないように・・・」などといいながら、実は暗い色が好きなのではとも感じてしまいます。
ですから男性向けの商品も「派手な色で目立たせたい」「もっと違う色も使いたい」と考えながらも、どうしても黒、紺、グレーのカラーリングが中心となってしまうのです。
特に男性が日常持ち歩くもの、身に付けるものにこの傾向が強いようです。
カバンもしかり。やはり黒、茶(皮)を筆頭に、暗色ばかりです。手帳、サイフ、ハンカチ、靴下、帽子、あるいはパソコンなども暗色傾向が目立ちます。
店頭で並ぶ商品にはもっとさまざまな色が出ているように思えますが、実はどの製品でも結局のところ、黒やグレー(メタル)などのオーソドックスな色が一番売れているとのこと。特に男性に対しては圧倒的な結果となっているようです。

オトコ色空間とオンナ色空間

こうした、性差による色の好みは、もちろんランドセルの場合だけに限らないのはご存知の通りです。製品やお店も男性向けなのか女性向けなのかによって、色使いが大きく異なってきます。

一般に女性が「好み」に感じる色は暖色系といわれています。
赤、ピンク、ピーチ、黄色。こんな暖かい感じのする色です。また清潔な白も同様です。たとえばお店の内装がこうした暖かく、明るい感じのする色でまとめられていたとしたら、女性はそこに居心地の良さを感じます。これはテリトリー色といわれ、女性が直感的に「自分の場所である」と感じる色なのです。
そういえば、女性専用のエステティックサロンや、女性に大人気のレストランなどの色使いを見てみますと、暖かい感じの色をベースに、赤や紫の絵や花などで華やかさを演出しているケースが多いように思えます。こんなところに、間違えて男性が足を踏み入れようものなら、お店の人に注意されるまでもなく、お店全体の女性テリトリー色によって
「場違いなところに入り込んでしまった」
と思い知らされることになります。
これに対して男性が自分の場所と感じるのは、冷たい感じ、あるいは力強い感じの色です。青や黒、あるいはグレーなどからも、自分の場所であるテリトリー感覚を感じるようです。人それぞれに、色の好みの差はありますが、それとは別に、場所から受けるこうしたイメージは、共通のもののようです。
ただ、先ほども申し上げました通り、男性的な色、女性的な色と感じる度合いは、どうも男性の方がより強く感じるらしく、少々男性の趣味にふられたお店に女性が立ち入ってもあまり抵抗がないのに比べ、女性的な雰囲気を感じる場所に男性が踏み込むと、女性の場合以上に落ち着かない気持ちに襲われるようです。

オトコテリトリーとオンナテリトリー

ところで、街の様子を観察していますと、昭和の時代に建てられ老朽化したビルや店が相変わらずどんどん壊されて新しい建物に変わってきています。
これはいつの時代でも見られた光景ではあるのですが、特に最近の建物は、以前と少し違う特長を持ってるようにも見えます。それは出来上がった建物や店の多くが暖かく、明るい色で統一されており、クールで力強い演出が以前ほど登場しなくなってきた点です。これは男性のテリトリー、女性的のテリトリーという考え方でいえば、女性のテリトリーが確実に増大していることを示しています。
いろいろな男性誌などでも、昔ながらの男の(オジサンの)居場所がなくなっていく事実を取り上げて「昔懐かしい場所がどんどんなくなっていく」
「街に影がなくなっていく」などと嘆く記事を最近よく見ますが、色の面から見ても男の居場所がどんどん減ってきているようです。
ますます増大する女性の居場所と確実に少なくなる男性の居場所。その合間を縫うように最近、男性が身を寄せ合って、ダークダックスのようなポーズで飲む「立ち飲み居酒屋」が増えたのも、実はこんな現象に関係があるのかもしれません。

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