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感情は自分事だけど、技術はそうとは限らない話

この前任天堂の本を読んだとき、『枯れた技術の水平思考』という言葉が書かれてあった。

"枯れた技術"は、最先端の技術ではなく、すでに広く使われ、安定して使える技術のことを指し、"水平思考"は、その技術を今まで無かった用途で活用することを指している。

最新技術にとらわれることなく既存のもの同士の組み合わせでも、アイディア次第で人を驚かすことができ、任天堂はその体験をとても大切にしている。


つまり、任天堂が売っているのは『ゲーム機』ではなく、『ゲーム機を通した体験』である。


そして任天堂社員に脈々と受け継がれ浸透しているその思想は、Wiiの開発エピソードの中で、一世代前の描画性能が選ばれている理由にも繋がってくる。

当時発売されたライバル機のPS3やXbox360は、ハイビジョン放送なみの『HD』画質であるのに対し、Wiiの映像は前世代のキューブやPS2と同じ『SD』画質。

あえて描画性能を落とすことでコストを浮かし、その浮いた分をWiiリモコンなどの斬新なアイディアを実現させるための研究・開発費に充てた。

その結果、完成したWiiは発売開始から現在まででPS3やXbox360を上回る1億160万台以上の販売台数を記録し、この数字からもWiiの『ゲーム機を通した体験』がどういうものだったかは想像できるだろう。


そして、この考え方はゲームだけに限った話ではない。

普段の生活に置き換えてみても、自分が信じているものや好きなものは、それ以外のものに比べ、とにかく1番いいと妄信しがちだが、その価値観は自分の中で生まれ、完結しているだけであって、他の誰にでも当てはまるとは限らない。


だからこそ自分が見せたいものばかりに比重を置きすぎることなく、求められていることとのバランスをしっかり保ちたい。


ちなみに、この任天堂の書籍を手にしたのは武雄市図書館で、当初借りる予定はありませんでした。

しかし、ゲームボーイカラーやキューブ。去年まで住んでいたシェアハウスにはスイッチがあってめちゃくちゃ遊んでいたので、思わず気になって手に取ってみたらおもしろかった次第です。

このように偶然が重なった先にある「運命の出会い」に似た体験ができるのは、本に囲まれた空間ならでは、ですね。


その他にもこの書籍の中には、感覚の鋭い3代目社長の山内さんや4代目社長の岩田さん、ドンキーコングやマリオの生みの親の宮本さん、そして『枯れた技術の水平思考』の考えを大切にされた横井さんの話もまだまだありますので興味がある方はぜひ。

サポート費は、本、フィルム代として使わせていだだきます。