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東京のホテル宿泊記録(⑧HOTEL CLASKA)

昨年12月20日に1軒のホテルが閉館を迎えました。そのホテルの名前はHOTEL CLASKA。

閉館の10日ほど前にこのホテルに宿泊してきました。特にこのホテルに思い入れがあった訳ではないのですが、昨今流行りのデザインホテル・ライフスタイルホテルの走りとされるホテルであり、このチャンスを逃すと二度とこのホテルに泊まれないのだ、と考えると、少し無理をしてでも泊まっておこうという気持ちになったのです。

このホテルの閉館までの物語については、調べものをしている最中ですので、次回B面で語るとして、今回は純粋にホテルのデザインについてみていきます。

場所は学芸大学駅から徒歩15分程度、目黒駅からは徒歩30分。学芸大学前は商店街となっており賑わいを見せていますが、HOTEL CLASKAは敷地の南側が目黒郵便局、バスの車庫、北側は閑静な住宅街という感じで、街の中心から外れた場所に立地します。

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そんな場所にいきなりこのカラフルな外壁パネルが印象的なホテルが姿を現すのだから、存在感は抜群です。

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リノベーション前の写真を調べてみると、外壁パネルと窓ガラスが嵌っているのですが、ビジネスホテルらしく整然とした印象ですので、そこからこのカラーリングに変わった時の衝撃は大きかったと思います。

向かって左側のアプローチから、ホテルに入ると1階がフロントロビーとレストランとなっています。

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木調のカウンターやロビー空間の本棚、間接照明や円柱の置照明などがきれいにデザインされています。本棚で緩やかに仕切られた奥がバー・レストランとなっていますが、前面ガラスから自然光の入る天井高の高い空間、置かれている椅子・ソファの雰囲気など、色も密度感も「ちょうど良い」気持ちの良い空間となっています。(2階にはショップが入っていたのですが、そちらについては次回に紹介したいと思います)

仕事終わりに行ったので、ホテルに着いたのは19時頃でしたが、閉館間近ということとコロナの関係もあってか、夜はレストランの営業をしていませんでした。さらに素泊まりプランであったため、当日にフロントで朝食利用ができるか確認したところ、満席ということで泣く泣く諦めてしまいました。もう少し早めに予約・確認していればと、本当に悔やまれます。

そうは言ってもと、気を取り直してチェックイン。かわいいキーホルダーのついた鍵を手渡されて、部屋に向かいます。

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エレベータホールも客室同様に階によって異なるコンセプトの空間となっているようですが、宿泊した6階フロアは青いカーペットと部屋の扉の前にデザインチェアが置かれた薄暗いギャラリ―のような空間です。

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宿泊したのは607号室の"ITANOMA"という、客室面積38㎡のかなり広めの部屋でした。予約時点でこの部屋しか空いておらず、値段も高かったので、宿泊するかかなり悩んだのですが、案の定1人で泊まるには寂しい広さでした。。。

インテリアデザインはCLASKAのショールームのデザインも手掛けた岡嶌要氏。名前の通り、床が「板の間」となっており、ミニマルな和の空間です。以下の文章は、こちらからの引用です。

茶色のチーク材の床と真っ白な漆喰の壁。障子越しのやわらかな光と間接照明の温かな灯り。四角と丸。白と青のモザイクタイル。さまざまな要素が対で構成さ れたツートーンルーム。
昼と夜とで違った表情を見せ、スローなリズムを生み出します。浴室に設置したフルスペックのエアインシャワーバーと共に、清々しく も安息感のある滞在を目指した客室です。

いつも通り図面を描いていますのでそちらも掲載します。(いつまでたってもスケッチが上手くならないのはセンスの問題か、写真の問題か、もう少し映えた感じにしたいのですが、、、)

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扉を開けると客室は2段あがっており、玄関スペースで靴を脱いで部屋に入ります。奥へ進むと左手にようやく部屋の全貌が見えてくるのですが、中央左手に2人で並んでも広すぎるくらいの幅2400mmという超ビッグサイズのベッドが鎮座しており、その手前にφ900の掘りごたつ式のテーブルセットが置かれていて、ほとんどこれで居室空間は終わりです。あまりにあっさりしています。

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壁側には違い棚が設けられており、ともすると間延びしそうな空間にアクセントを加えています。オーディオコンポやケトル、ごみ箱の配置など、バランスがよくこの場所から動かすのが勿体ないような緊張感すら感じました。また、ベッドの両サイドにある和紙を用いたペンダント照明も不思議な形をしており、部屋を印象付けるの一役買っています

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上記の紹介文にあった通り、折戸の障子の効果により、朝と夜で部屋の雰囲気がかなり変わります。(上が夜、下2枚が朝の様子です)

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夜は独りで過ごすのには少し殺風景で寂し気な雰囲気の部屋でしたが、朝は日の光が差し込み非常に気持ちの良い空間に感じました

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ちなみに元のビジネスホテルの部屋割りに合わせた外壁パネルと窓ガラスの位置を無視した部屋の構成となっているため、外壁側のディテールは結構無理くりな感じです。まあ普通の人はそこまでチェックしないでしょうから、いいといえばいいのでしょうが、、、

水回りも非常にゆったりした構成洗面スペースは居室と同じチーク材の板の間が繋がっており、置き型のシンプルなシンクも居室空間の雰囲気ともマッチしていて、引き戸を開けっぱなしにしていても違和感がありません。そして、枠のない鏡がミニマルな印象をさらに強めます。

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対照的にバスルームは青いタイルで洗い場も広く、蛇口やヘッドシャワーなどサイズ感も大きく、桶の感じも相まって少し異質な空間です。

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全体として、板の間の持つ緊張感と障子や間接照明による柔らかさが両立されており、アメニティや備品の配置の仕方など細部にも拘ったデザインホテルというに相応しい客室という印象でした。

ただ、「この部屋でのくつろぎかた」は最後までわかりませんでした。居室の中央にあるテーブルの部分は堀炬燵になっていますが、深さが170mmと階段1段分しかないため足を延ばしづらかったり、折戸の障子の建てつけがよくなかったり、使う時のケトルの置き場所に困ったり、、、

いうなれば泊まる人を選ぶホテルという感じでしょうか。(もう閉館してしまったので、悲しいかなそもそも泊まれないのですが)ただ安らぎを求めている人には、このホテルはお勧めできません。

でも、日常から離れて、こういったデザインの空間に身を置き、半日過ごすというのは面白い経験でしたし、こういったデザインホテルのファンが多い理由もそこに隠されているような気がしました。

次回は惜しまれつつ閉館となったこのホテルの歴史とCLASKAの今後の展開を通して、「時代の流れとホテルの関係性」みたいなことを考えたいな、と思います。

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ホテルの宿泊記録を書いています。過去ログはこちらから。


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