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動植物園へ

梅雨の晴れ間は大気に含まれる粉塵の類を
湿気にまとめて陽光が乾かしたのか鮮やかな
青空となり乾燥した分日差しがきつい 息子は
やはり晴れ男なのか いつもの如くサイゼリヤ
で昼食を済ませ 方向によって三軒のゼリヤを
使い分けている 動植物園まで 駐車場から
百メートル足らずの間にすでに私は大汗まみれ
で 多分この汗は病的だと思いつつ不便もな
いので医者にもいかない 息子が月に一度の
使わなければならない有給のたびにどこか気晴
らしに出かけるのだが ネットを手繰るうちに
動植物の植物の方の 人工里山の風景に思い
が広がり それから ここから遠くないぎょうざ
の名店で名物餃子を買って帰る目的もあって
フクロウと目を合わせたりしている早い午後と

隣町の市営 規模のさほど大きくもない動物園
だが さほど小さいという訳でもなく それなりの
ウケのよさそうな動物がそれなりの広さに暮ら
して 先取りの夏日にやる気のないたたずまい
でゆらゆらしている 牛は数合わせなのかホル
スタインなのか白黒の 巨大な顔面のなかの
黒目がちな深い虚無の目がどうにもテイストレス
などこも見ていない投げやりな黒で まつげばか
りが侘びのように瞼に美しく貼りついている と
きに見える白目は赤く濁って屠殺は免れたもの
の人のストレスにさらされて生きる苛立ちに血走
っているなどと擬人化しつつ そんなわけあるま
い ただ ストレスは感じるだろうがそこに様々
な想念を渦巻かせているわけではなく生理的
反応の充血に過ぎないのだろう 

息子は今職場のある一人に悩まされていてよく
ある人間関係の綾なのだが息子に落ち度が
全くなく あるとすれば通常範囲内の知能の
持ち主と同様の立ち回りが出来ないというこか
もしれないけれど しかしこれは本人の努力の
埒外の事であり努力とか意識でとうにかなると
言った類のものでもない そのような図式での
綾であるので解くためには相手を排除すること
になるのだろう おそらく相手が意識を変える
のは不可能と思われるためひとつひとつ被害
事実を積み重ねているところだが息子は晴れた
すがすがしい休日に日ごろの嫌なことが晴れて
いくと言っていた よくあることだから我慢しろ
という時代ではもうなくなってきている 事情
はどうあれ他人に対する広範囲での故意の加害は精神
的なものだろうが肉体だろうが厳しく禁じられ
なければならない よくあることで済ませない

山を下りていく形で小さな町中華の店に名物
餃子を買いに行く ここの所ときおりテレビで
取り上げられて 行列することも普通らしいが
昼下がりの時間帯 そのまま待たずに一包み
買えた ここ一年で70%程度値上がりし 六個
入りで950円になっていた 売れているから
強気なのだろうが材料のあらかたを占める野菜
が値上がりしているので仕方ない むしろ積極
的に価格転嫁できるのが健全な商活動という
ものだろう それから向かいのブックオフで 柴
崎友香の小説が安くまとまって出ていたので
買い 高架になった道路からスカイツリーと多分
秩父連山と思われる山影がくっきりと見えた

汗にまみれたシャツを脱ぐ意外と肌はさらさらし
ていて 病的な汗には水の他の余分はさほど
含まれないのかとも思った こぶし大の名物
餃子はある素材によって文字の通りに甘い
にんにくのたっぷり入った甘くて他になさそうな
野菜餃子なのだった 

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