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心平先生は二杯酢がお好き

草野心平は現在も続く詩誌 歴程 の創刊者
で 中原中也と親しみ 宮沢賢治を早くから認
めた詩人で 自らは蛙をモチーフに オノマトぺ
を多用した詩を書く詩人として知られる 私は
撰詩集くらいしか読んでいないが難解な詩人
というより蛙の出てくる るりりるるり といった
文字の並ぶ詩形に捉われないおおらかな詩人
と言った印象が強い 当時からすれば慶応か
ら中国の嶺南大学というおそらく秀才のコースを
進みながら焼き鳥屋とか飲み屋で暮らしていた
というインテリらしからぬ詩人で それだけで
勝手に親しみも湧いて来ようというもので

何故か近頃読むものが大正から二次大戦後
辺りまでに書かれた またはその時代を書いた
物ばかり読んでいる どういう訳かその頃の
文人が今の気分にあっていて しかし 今 そ
れらの書き物を読む人はあまり多くないようで
入手にはやや高価だったり難があるがその場合
は図書館で借りればいい 近年出された話題作
の320人待ちなんてことはひっくり返ってもない
どころか 何年も借りられていないような茶色
い本文が乾いてカサカサと音を立てるような塩梅

ここのとこ中公文庫で戦中戦後に活躍した作家
の軽めの本が刊行されている 高い 心平先生
の本はどうだったか しばらく寝かせて今読み
順が回ってきた 食に関する随筆集 読み進め
ているところだけれど格調高く器などにも言及
しながらうんちくを含めて文化的に食を語る
という事では全くなくて 簡単な言葉で綴られた
本当に気軽な書き物で 心平先生の晩年の
写真はちょっと何かの動物に似た親しみやすい
笑顔で見ることが多いがその見た目通りの気取
らない ごく普通の 普通でない雑もの食いみたい
なものも含む食べることからほとんどぶれない
読み物になっている

心平先生は屋台を引いたり居酒屋を営みなが
ら詩作をしていた はなっから詩で喰うなどと
考えてはいなかったようだが詩集が売れて当
分喰えるくらいの金銭を手にしたことを他の随筆集
で読んで少し驚いた それを元手に屋台を買った
のか それともかき集めた借金で手に入れたのか
忘れたが とにかく地のやくざ何かともうまく話を
つけて焼き鳥屋を始めた といって焼き鳥とい
うのは鳥屋から無償どころか金銭を支払われ
ひきとった鳥の臓物や豚の頭などを焼いていた
とのことだ 心平先生はどうも臓物がお好きな
ようで 岩魚のワタ 胃袋の中のさまざまな川虫
トンボの目玉 その他をきれいに洗って串にす
るのがたまらんと書いている

それから 二杯酢 という言葉がよく出てくる
心平先生はモツとともに 二杯酢がお好きなの
だった 三杯酢というのは確か甘みがある合わ
せ酢だったかと思ったので二杯酢は砂糖味醂
ほか甘みを抜いたものかと想像し調べたら正解
だった 酢と醤油を一対一で混ぜた物とあった
となると三杯酢は酢と醤油と甘味を一杯ずつで
混ぜたものなのかと思った となると冷やし中華
のつゆは三杯酢プラスごま油か何かで成立す
るものかなどと考えた 私 酢ってあまり好きじ
ゃないのね 匂いがね 

あと 先生 味の素全然平気でよくお使いにな
られている 塩のとんがりを抑えるのに重宝す
るので私も味の素肯定派なんですね

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