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『ブレスレス』

原題「芬KOIRAT EIVAT KAYTA HOUSUJA/英DOGS DON'T WEAR PANTS」

◆あらすじ◆
家族とともに湖畔の別荘で楽しい休暇を過ごしていた外科医のユハだったが、最愛の妻が不慮の事故で水死してしまう。以来、自責の念に駆られ、死んだように無気力となり、幼い娘エリにも心配される毎日を送っていた。月日は流れ、年頃になったエリが店でピアスの穴をあけるのに付き添ったユハは、ひょんなことから隣のSMクラブに迷い込み、SM嬢のモナに客と間違えられてしまう。そしていきなり首を絞められたユハは窒息寸前に、水中に漂う妻の姿を見る。この時の衝撃的な体験が忘れられず、モナのもとに通い始めるユハだったが…。


これは面白かった。
大好き❤︎大好き❤︎大好きだぁぁ❤︎

久しぶりに息を詰まらせて観てしまった。
ブレスレスなだけに・・・なんちって!(≧◇≦)

主演はゲイアートで有名なトム・オブ・フィンランドを描いた映画『TOM OF FINLAND』で主演だったペッカ・ストラング。
それ聞いて納得!やけにボンデージとか様になってるww(なんちってpart2)


心臓外科医として順風満帆に生きてきた男が妻を失い、精神を崩壊させ、立ち直れないまま娘の事にさえ虚ろだ。

離れてしまった精神と肉体。

しかし術前の準備中、ヤスリで指先を傷つけ血が滲む。そのキズに僅かな【恍惚】を感じるのだ。

その後、アクシデントで遭遇したSMプレイ中、窒息寸前に遠のく意識の中で妻の姿を見てしまう。

・・・なんてロマンチックなの~₍₍ (̨̡ ‾᷄♡‾᷅ )̧̢ ₎₎

じゃなくて、そこで性的快感を得る方がまし。
だって生きて無きゃ快感は得られないからね。
でもユハは妻に逢える事に悦びを感じてしまったから妻と逢える時間だけを求めるなら【死】は寧ろ欲求の一部だったのかもしれない。

そんな事とは知らないSM嬢モナは一応一通りの手順を踏むわけだがユハにとってはそんな段階はどうでも良くて即刻窒息プレイに持ち込みたいわけだしこちらも「そのプレイ、ユハには要らんのよね」と思っちゃったよね。

でもモナとのプレイでユハは段々妻に逢える事とは別の悦びが芽生え始めた事に気付く。

プレイを求めているのか?モナを求めているのか?

この作品の上手さはその心の変化の境目が本当に見えないと言うか滅茶苦茶精巧なグラデーションになってて、常に心臓がドクドクしちゃう内容だが着地点が見えないサスペンス性がある。

だいぶ変態チックな題材だが至って真面目だしアート的な映像で人間の心の純粋さと同時に矛盾さを抱える複雑で繊細な部分を描いてて興味深い。

スクリーン上の色彩を濃密なユハとモナの二人の世界は黒を基調にしたダーク系で描き、ユハの日常=対外を白を基調としたペイルトーンで描く事で人間の二面性を解り易く表現してるんだが、それが途中から黒が浸食し段々グレーになり彼の日常がいつの間にか背徳や悦楽によって少しずつ崩壊していた事に気付かされる。

このどっちつかずの曖昧さが気持ち悪くないのがこの作品の凄さかな?!

とにかく演技と効果が見事だからね。
その点は2020年 ユッシ賞(フィンランド・アカデミー賞) 6部門受賞も納得だよね。
・主演男優賞 
・撮影賞 
・編集賞 
・音楽賞 
・音響デザイン賞 
・メイクアップデザイン賞


それでいてドロドロ感やヘビーさは無くてむしろちょっとコミカルなのは北欧映画っぽさかな?
ユハの娘エリがちゃっかり白馬の王子様とっ捕まえちゃう辺りの描きは伏線として軽い面白さがある。

ただ、SMが絡んでるから痛いシーンは半端無い!
でもその痛みが彼等の結びつきだし、ユハにとっては【生の世界】への扉だったんじゃないかな?
妻を亡くした痛みを癒してくれたのが別の痛みだった・・・非日常にしか見いだせなかった再生。

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この何段階か活用がなんとも言えないのよ!

だから、ラストにはこちらの気持ちも胸を開き切った解放感に溢れて救われる。


変態万歳!と叫びたくなる一作。

SM嬢モナ役のクリスタ・コソネン超好み❤


2021/02/12


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