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怒り感情をぶつけて後悔していませんか?

 怒りが爆発してしまう

今まではずっと怒らないように上機嫌で同僚に接していたけれど、ここ1ヶ月ほどどうしても我慢できず怒りをぶつけてしまう。課内の雰囲気も悪いしこのままだとどんどん悪い方向へ行ってしまう。もうどうしたらいいのかわからない…

 そう言って、彼は私のところに相談にきました。

 私はまず、怒りが抑えきれなくなるもっと前の様子を聞いてみることにしました。

 彼は日頃から同僚の言動に対してイライラすることが多く、ずっと我慢してきました。そうして我慢をし続けている中で、限界がきた時に怒りをぶつけることもあるようでした。

 この時の状況に対して、彼の口から下のような言葉が出てきました。

「みんなのために言った」
「仕事を遂行するために仕方なかった」
「言わなければ他の人に迷惑がかかった」

 これらのことばの裏から怒り感情が漏れていました。ですが、彼もこうやって自分の行為を正当化するしかなかったのです。

 怒りをぶつける行為

 これだけは決してしたくない。と彼自身が思っていたからです。

 我慢の限界でついぶつけてしまった怒りに対して、なんらかの正当な理由付けをしなければ、自分自身のことを『最低な人間だ』と思ってしまいかねません。

 自己否定に陥らないために、「自分は正しいことをした」と無理やり思おうとしていたのです。

 ただ、そうやって正当化してやり過ごしていた怒り行動も、この1ヶ月頻度が増えてきました。

「みんなのため」「仕事のため」というセリフで、怒りをぶつけている自分自身をおおい隠していましたが、この1ヶ月は頻度が増えたために、もう隠しきれなくなってしまいました。

 今までは誰かのせい、何かのせい、にできていた怒り行動が、いつの間にか『自分が悪い』と自己嫌悪に陥ってしまい、メンタル不調をきたしたのでした。

孤立したくない

 なぜそんなにも、怒りを相手にぶつけるのが嫌なのか聞いてみると、

怒ると嫌われるから

 彼はそう怯えながら言ったのです。

 たしかに、判官贔屓という言葉があるように、人は怒られている方をかばいたくなる性質があります。だから、正しいことを言っていたとしても怒りをぶつけると嫌われてしまうのではないか?という恐怖はとてもよく理解できます。

 ただ、そんな理屈ではなく、彼の恐怖の原因は小学校の頃の体験にありました。

 思春期に差し掛かる小学5年生の頃、仲の良かった友達と喧嘩したことをきっかけにその友達から嫌われ、クラスのみんなからも避けられるようになったのでした。

 何ヶ月かしたら仲直りはできてクラスにも馴染めるようになったものの、そのときクラスで一人孤立した体験が大きな傷となり、言いたいことが言えない副作用として今でも残っていたのです。

 嫌われたら怖い

 そんな思いが背景にあり、「ちょっとおかしいな」とか「理不尽だな」と思ったことでも相手に伝えられず、自分の内にひめていました。

 そうやって心に押し込めた我慢が今になって限界になり、些細なことで簡単に爆発するようになってしまったのです。

怒らずに伝えよう

 でも、よく考えて欲しいのです。

 彼が嫌だと思った相手の言動も、もしかしたら、相手にしたら悪気はなかったかもしれません。

 さらに彼が何も言わないので、傷つけている自覚がないまま同じ行動を繰り返してしまいます。

 彼からしたら、何度も何度も自分に対して嫌なことをしてくるので不快に感じるかもしれませんが、相手には何も伝わっていません。

 それで我慢の限界がきて、怒りと共に相手に言いたいことをぶつけると、「なんでそんなに怒るの!?」と衝撃を受けるかもしれません。

  相手が聖人君子であれば、そんな辛い思いをさせて申し訳なかったと言動を改めてくれるかもしれませんが、そんなできた人はなかなかいません。

 怒りをぶつけると「嫌な人だなぁ」と思われ、怒りをぶつけ返されるか、距離をとられるか、しかねません。

 だからこそ、大切なのは

怒りの感情を抜いて言いたいことを伝える

 これはアンガーマネジメントと言って、なかなか難しいかもしれませんが、練習すればいつかは必ずできるようになるものです。

 できるだけ怒り感情を抜いた状態で、「〇〇されて悲しかった」と伝えたり、純粋な疑問として「なぜ〇〇するんですか?」と話しあってください。

 怒らずに話し合うのは、自分だけの問題ではなく、相手も怒らずに落ち着いていることも重要です。

 簡単なことではありませんが、怒らずに話をしようという姿勢を見せ続けることが、自分も相手も傷つけないための大きな一歩となる、と私は信じています。

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